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神様はアタシの胸に

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: 山科
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第14話

「おおっと。させませんよ。フンッ!」
 自分の陰毛を何本か抜き取り、それを宙へと放り投げる変態。
 すると、その陰毛は、一瞬で等身大の人の形に変わっていく。
 これが、さっき言ってた能力なのか?
「う……っ!?」
 人の形になった陰毛は、ものすごいスピードであたしに近づくと、身体を取り押さえる。
「っ!? きゃぁあああああっ!」
 背後に回った一体が、あたしのおっぱいを鷲掴みにした。
 なにすんだこの野郎!
「貴女の神様は、胸に宿っているんでしょう? だから、そうして押さえているのですよ。そうすれば具現化できないでしょう?」
「そうなのか、シャル?」
『ぐむ……悔しいが、やつの言う通りじゃ……むぐ』
「きゃっ!?」
 より一層強くあたしのおっぱいを掴む『百の白子』。
 そのせいか、シャルも話すことができなくなっているようだ。
 本当に、肝心なときに頼りにならない神様だな。
「さてと。ここで問題です。妄想力のレベルを上げるためには、どうするのが効果的でしょうか?」
 あたしを押さえつけたからか、余裕たっぷりにそう尋ねてくる変態。
 ええと、妄想力のレベルを上げるのに一番効果的な方法?
 ……なんだっけ?
「答えは、『自分が最も興奮する状況に身を置くこと』ですよ」
「……ああ」
 そういえばそうだった。
 前回行った妄想開発の『AV鑑賞』も、それに則ったもの。個人差はあるが、あれも『興奮する状況』に身を置くためのものだったはずだ。
「わかりましたか? では、第二問。私の興奮する状況とは、どういったものでしょうか?」
「…………」
「そう! 正解は『裸を見られること』です。よくわかりましたね」
「あたしなにも答えてないけどっ!?」
「世界を救うためには、犠牲がつきもの。私の妄想力のレベルを上げるためにも、犠牲がつきもの。というわけで、あなたが犠牲第一号です」
「どういうわけだよっ!」
「昨日の美人なお姉さんには逃げられてしまいましたからね。喜んでください。貴女が、私の初めてを奪うのですよ」
「奪うかっ! って、綺麗なお姉さんって……」
 そういえば、と。あたしは今朝徳元先生が言っていた言葉を思い出す。

『いや、昨夜非常識なものを見てしまってな。若干混乱しているんだ』

「…………」
 それって、この変態のことじゃないの?
 その後先生が言ってた『ぜん――』って、『全裸の変態』のことじゃないの?
「さて、覚悟はできましたか?」
 あたしの思考を中断させるように、変態はそう言ってじりじりとあたしに近づいてくる。
 ちょっ! 勘弁してよ!
「っ! せいっ!」
 あたしは、せめてもの抵抗に、自由に動かすことのできる足で近くのゴミ箱を変態めがけて蹴飛ばす。
「無駄です」
 変態は、素早く陰茎に手を伸ばし、毛を抜くと、それを宙に投げる。
 さきほどと同じように、それは一瞬で人型に変わった。
 『百の白子』。それが、ゴミを全て防ぐ。
 あたしの最期の抵抗も、潰えてしまった。
 もう、どうしようもない。
「というわけで、私のナニを見てください。一晩中……ね? 貴女も興奮してくるでしょう?」
 腰をくねくねと振りながら、あたしに近づいてくる変態。
「心配しなくても、貴女に宿る神様は、たっぷり楽しんだ後に始末しますよ。だから、今は楽しみましょう。でゅふふっ!」
「よ、寄るな! キモい!」
「おうふっ! き、気持ちいいぃ――――――」
「へ、変態だっ!?」
「お察しの通り、変態です。そう呼んだ方がいいでしょう」
 最悪だ。露出狂の上に、マゾだなんて。
 もうダメだ。
「し、死ね!」
「夢を叶えるまでは死にません」
「キモい! ブサイク! 童貞野郎!」
「ええ、キモいですブサイクです童貞です。で? それがどうかしましたか?」
「う、うぅ……」
「もう諦めて、貴女もこの状況に興奮すればいいじゃないですか。狭い路地で変態に迫られる……人によっては、かなり好まれるシチュエーションだと思うのですけどね」
 一応言っておくが、あたしはこの状況を好む変態ではない。
 と、罵声を言うことによって、いくらかあたしの頭は冷静さを取り戻していた。
 こんなことで冷静になるってあたしも変態だな、なんて考えは今はどうでもいい。
 目の前にいる変態の言葉を聞いている限り、この変態は、『興奮する状況』に身を置きたいらしい。
 なら、相手が興奮しない状況を作りだせばいいってことだ。
 でも、どうやって? 
 相手の気にしていることを言うとか?
 ……男が気にする言葉って、『童貞野郎』以外に、一つしか思いつかないんだよなぁ。
 もうこうなったらやけくそだ!
 あたしは、男が気にするであろう一言を、
 女が絶対に言ってはいけない一言を、
 変態に向かって、言い放った。

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