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神様はアタシの胸に

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: 山科
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第11話

「はぁ」
 こうなってしまった以上、仕方がない。
 あたしは立ち止まると、くるりと方向転換し、涼太の方を見る。
「なんだよ? なんの用だ?」
「いやさ、今日のお前、なんか変だったからさ。心配になった」
「…………」
 なんか、真面目な顔をしてこんなセリフを言う涼太に、少し戸惑う。
 あれだ。不良が捨てられた子犬を、ってやつだ。
「……別に、あたしは普段通りだぞ? 涼太の勘違いじゃないのか?」
 心配してくれている涼太には悪いが、神様うんぬんの話をするわけにはいかない。
 だって、痛い娘だと思われちゃうかもしれないし。
 こいつの口の軽さは水素並みだからね。
「……そっか。ならいいけどよ。朝も言ったが、なんかあったら相談しろよ? 俺たち、幼馴染みなんだからさ」
 ポンっと、あたしの肩を叩く涼太。
 気安く触るな。
『飛鳥』
 涼太の手を払いのけていると、突然シャルが喋った。
「……っ!? 馬鹿」
「……なんだ? 今の声」
『うむ、妾はここじゃ』
 どうやったかはしらないけど、シャルはあたしが胸に巻いていたさらしを外し、ぽよんぽよんと揺れて自分の存在をアピールする。
 言うまでもないが、揺れているのはあたしのおっぱいだ。
「な……なな……なっ!?」
『初めまして、じゃの。妾は、シャルロット・F・K・イヴァネッタ。シャルでよい。一応、神様の端くれをしておる』
「…………」
 どうやら、さすがの涼太でもこの光景に驚きを隠せないようだ。
 まあ、わからないでもない。
 と、涼太の反応は今は置いておいて。
「こらシャル! 喋ったらぶっ殺すって言っただろ!」
『うむ。お主は、『学校では』喋るなと言っておった。故に、こうして外で喋っておるのじゃ。それなら構わんのじゃろ?』
 コイツってやつは……。
『こやつなら話しても大丈夫じゃよ。きっと力になってくれる』
「何を根拠に……」
『言ってなかったが、妾にはちょっとした特殊能力があっての。それのおかげで、こやつが飛鳥にとって味方になりえるのじゃと確信したのじゃよ』
「特殊能力?」
『ま、そのうち話してやろう。今はこやつに現状を説明する方が先じゃ』
「あ、ああ」
 頷いて、涼太の方を見る。
「な、なあ! お前のおっぱい、何で動いてんだよ!? つか、何でお前そんなにおっぱいがでかくなってんだよ!? お前、ぺちゃぱいだったじゃねえか」
「誰がぺちゃぱいか!」
 たしかに、ちょっとちっちゃかったけど……せ、成長途中だ!
 これから、Eカップに成長する予定だったんだよ!
 ごめんなさい。嘘です。
「はぁ」
 こんなやつに話したところで、役に立つかわからないけど……。
『何事も、やってみなければわからんぞ?』
 と、シャルも言うことだし、あたしは涼太に全てを話すことにする。
 神様を名乗るシャルのことや、翔平太が入院していること。
 絶対神うんぬんは、シャルが話した。
 今思ったけど、おっぱいと会話なんて、はたから見れば気持ち悪いよね。
 そんなことを考えながら、あたしのおっぱいと涼太の会話を聞き流していると、急に涼太が前屈みになった。
 こいつ、最低だな。
「…………」
『む? どうしたのじゃ? 前屈みになって』
「いや、男の生理現象ってやつだね」
「……最低だな、お前」
「し、仕方ねえだろ! おっきいおっぱいに反応するのは、男子高校生の宿命なんだよ!」
 そんな力説されても、正直困る。
 とまあ、そんなことがありつつも、シャルは全ての説明を終える。
 それでも、涼太はさほど驚いた様子ではない。
「……驚かないんだな」
「ん? ……ああ。ま、お前のこと信用しているしな。それに――」
 不思議に思ったあたしが尋ねると、涼太は頬をぽりぽりと掻きながら、そう答えた。
「それに?」
「――いや、なんでもないさ」
 にこっと、気持ち悪いスマイルを浮かべる涼太。
 なんだ?
 気持ち悪さは相変わらずだけど、何か、様子がいつもと違ったような……。
「……はぁ」
 そんな風に思っているあたしに、少しむかついた。
 なんだかんだ言っても、さっき涼太が言った通り、あたしたちは幼馴染みなのだ。
 エロマンガ島に越してくる前、それこそ、両親が生きていた頃からの長い付き合いなんだ。相手のことが、よくわかってしまう。
 まあ、気にしないことにしよう。きっと、涼太は発情期なんだ。そうだそうだ。
「飛鳥」
「ん?」
 あたしの思考を遮るかのように、涼太があたしを呼ぶ。
「俺も協力してやるよ。翔平太を助けるの」
「……さんきゅ」
 いくら涼太が馬鹿とはいえ、一人で頑張るよりは、心強いだろう。
 一応、この馬鹿は運動神経は悪くないしね。
「じゃ、今日は帰るわ。またな」
 ポンッと、今度はあたしの頭に手を置く涼太。
「……っ!?」

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