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神様はアタシの胸に

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: 山科
目次

第10話

 1時限目の授業。
 カリキュラムは、数学。
 正直数学は苦手というか、嫌いな科目なので、授業を受けるのは苦痛以外のなにものでもない。退屈だ。
 でも、そんなこと思っても、口に出して言うことなんてできやしな――

『飛鳥、この授業、退屈だぞ』

「…………」
 おい! 何言ってんだよあたしのおっぱい!
 今の、あたしが言ったように聞こえたんじゃないか?
「「「「…………」」」」
 教室内を、静寂が支配した。
「……もう一回言ってくれるか? 椎名」
 プルプルと振るえながら尋ねてくる数学教師。
 絶対怒ってるよこれ。
「いえ……その……と、トイレ行ってきます!」
 教師の怒りに触れないうちに、あたしはそそくさと教室から出てトイレへと逃げこむ。
 一番奥の個室に入ると、制服の上着を脱ぎ、ワイシャツのボタンとさらしをはずす。
 ぽよん、と現れるあたしのおっぱい。
『どうしたのじゃ? 授業を抜け出しこのような場所まで来て』
「あんたのせいでしょっ!」
『む? なにがじゃ?』
「あんたが変なこと言うから、教師が怒ったんでしょうがっ!」
『変なこと? 妾は、素直に感想を述べたまでじゃが?』
「それが変なことなんだよ! 朝言っただろ! 学校では喋るな!」
『う、うむ……じゃが……』
「じゃがもさつまもない! とにかく、もう喋るなよ!」
『うむ……心得た』
「はぁ」
 まったく、勘弁してくれ。
 あたしは、教師に睨まれるような生徒じゃなかったのに……。
 数学の成績、ヤバいなこりゃ。
「最悪だ」
 額を押さえながら、あたしはそう呟いた。
 結局、教室には戻らずに、トイレで時間を潰して、授業終了のチャイムが鳴ってから教室に帰っていった。
 なぜか、教室に戻ると英雄扱いされたけど。
 「よくぞ言ってくれた」って。


 2時限目のカリキュラムはエロマンガ島独自の授業、『妄想開発』。
 簡単に言えば、妄想力向上のための授業だ。エロマンガ島内の学校のカリキュラムでは、約3分の1がこの授業にあたる。
 今回の授業内容は、『エロいビデオを見て、妄想力を上げる』というもの。
 あたしたち女子にはよくわからないけど、なんでも、男子生徒の妄想力向上に、一番効果があるであろう内容らしい。
 教室の前方にある黒板に、映像が流れる仕組みになっている。
 大きな画面と最新の機器により、ド迫力かつ高画質のアダルトビデオを楽しめるというわけだ。
 今更だけど、18禁のビデオを高校生に見せるって、法律的にアウトなんじゃないの?
 そんなこんなで授業開始。
 先生は再生ボタンを押すと、教室から出て行ってしまう。
 生徒とこういったビデオを見るのには、抵抗があるのかな?
『あっ……あんっ! ああっ! だ、ダメっ!』
 教室内に、甘美なあえぎ声が響き渡る。
 男子生徒たちは、若干前かがみだ。
 何故そうなっているのかわかるあたり、あたしも大人になったってことなのか。
 授業は進み、後半戦。
 アダルトビデオの方も、後半戦に。
 前戯が終わり、挿入シーンへと移っていた。
 男子たちはビデオに釘づけ、女子たちは、目を逸らして気まずそうにしていた。
 あたしはというと、そんなクラスメイトたちを見ながら、ニヤニヤしている。
 こういうとき、窓際最後列というポジションは、教室全体を見渡せるので便利だ。
 そうして、何事もなく授業は終了していくかに思えたが、そうは問屋がおろさなかった。

『のう、飛鳥。何故彼奴等は裸で抱き合っておるのじゃ? 自らの一物を、おなごの――』

 また、この馬鹿おっぱいが喋りだしたのだ。
 どうやらビデオの音声もあったので、クラスメイトたちには聞こえてないらしい。
 不幸中の幸いだ。
「…………」
 あたしは無言で席を立ち、物音を立てないように教室を出て行く
 向かう先は、もちろんトイレ。
 制服の上着脱ぎ、ワイシャツのボタンとさらしをはずす。
 そうして露わになるのは、柔らかそうな大きな胸。
「シャル……あんた、日本語わからないの?」
『……すまぬ』
「次外で喋ったら、あんたに協力するのやめるからね!」
『そ、それは困るのじゃっ!』
「なら、もう学校では喋るな」
『……わかったのじゃ』
 しぶしぶ頷く(揺れる?)シャル。
 これで、本当に黙っていてくれると嬉しいけど。
 そんなあたしの心配も杞憂だったようで、それからは放課後になるまでシャルが喋ることもなかった。
 帰りのHRを終え、あたしはどこかへ遊びに行こうと言う智の誘いを断り、まっすぐ家に帰ることにする。
 シャルのせいでかなり疲れたし。
 そんなわけで通学路を一人歩いていると、目の前に見知った人物を見かけた。
「よお、待ってたぜ」
 電柱に寄りかかりながら、腕を組んでカッコつける宮島涼太の姿。
 当然、無視だ。
 あたしは、目の前にいる中二病が抜けきってない馬鹿の横を素通りする。
「って、おい! 無視すんなよ!」
「…………」
 無視。
 コイツと絡むと、めちゃくちゃ疲れるから。
「……ああそうか。俺がカッコよすぎて直視できないんだな?」
「なわけあるかっ!」
 しまった。
 つい、条件反射でツッコんでしまった。
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