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神様はアタシの胸に

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: 山科
目次

第5話

「ねえ」
 とりあえず、冷静になってから、あたしはおっぱい(シャルロット)に話しかける。
『なんじゃ?』
 ぷるんぷるんと揺れる、大きくなったおっぱいから声が聞こえる。
 目測でDカップってところか。
 元々がAカップだから、やっぱり、かなり大きくなっている。
 って、今はおっぱいのことなんかどうでも――いや、よくないけどさ!
 それよりも先に、なんとかしないといけないことがある。
「頼むから、他の人のところに行ってくれない?」
『それは無理じゃ』
「なんでさ? あたしよりも妄想力が高い人間はごまんといるし、その人と協力したほうが、あんたにとってもいいんじゃないの?」
『うむ。確かにお主の言う通り、妄想力が高い人間と組んだ方が良いとも思える。じゃが、前述したように、妾と人間が合体することによって、その者に能力を授けることができるのじゃ』
「……それで?」
『能力の強力さは、その人間と神様との相性に依存するのじゃ。相性が良ければ、能力は強力になり、逆に相性が悪ければ、能力は弱くなる』
「じゃあ、あたしとあんたは……」
『然様。相性が良いのじゃよ。お主のおっぱいの形や大きさがな』
「っておっぱいがかよっ!」
『うむ!』
 自信満々にそう答えるおっぱい……もといシャルロット。
 おっぱいにコンプレックスを抱いていたあたしにとって、そのおっぱいを褒められるのは、少し嬉しい気がしなくもないわけがないだろう!
 危ない。誤魔化されるところだった。
「と・に・か・く! あたしは協力しない。だから他の人のところに行けって!」
『飛鳥が、この島を狙う神様全てを撃退したら、妾は消えるぞ』
「…………」
 それって、結局協力しなきゃいけないってことじゃないか。
「……はぁ」
 あたしは、諦めて一つ嘆息すると、普段着に着替えて下の階へと向かった。大きくなったおっぱいを翔平太に気付かれるのは少しマズいので、さらしを巻いて押さえつけておく。
『むぐ……く、苦しいのじゃ、飛鳥!』
 喋るおっぱいは無視。
 少し辛いけど、おっぱいがきつくて苦しいなんて感覚、一生のうちに味わえることなんてないと思っていたので、ちょっと嬉しい。
 この神様とやらがどこへも行かないと言うのなら、あたしにできることは一つしか思いつかない。

 協力しなければいい。

 そうすれば、痺れを切らして他の人のところに行くだろう。
 喋るおっぱいと共同生活というのは、いささか不便ではあるが……まあ、仕方がない。
「あ! おはよう、お姉ちゃん」
 そんなことを考えながら一階のリビングに向かうと、中学校の制服に着替えた翔平太が迎えてくれた。
 翔平太の通う中学校は、土日にも授業がある。なんでも、優秀な生徒だけを対象とした講習みたいなものらしい。選考基準は、レベル4以上の妄想力の持ち主、だったかな?
 優秀な弟を持って、姉は幸せだ。
「お姉ちゃん、朝ご飯はテーブルの上に、お昼ご飯は冷蔵庫に入ってるから、適当に食べてね」
「うん、わかった」
「それから、洗濯物があったら、洗濯かごに入れておいて。帰ってきてから洗濯するから」
「うん」
「それからそれから、怪しい人が来ても家に上げちゃだめだよ?」
「う、うん……」
「あとあと、お昼寝はダメだよ? 昨日はそのまま朝まで寝ちゃったみたいだからいいけど、夜眠れなくなっちゃうからね?」
「…………」
「ああ、心配だよお姉ちゃん! ご飯一人で食べれる?」
「…………。…………」
「ああもう! ぼく今日学校休むよ! お姉ちゃんが心配だもん!」
「早く学校に行きなさい!」
 ……シスコン+心配性っていうのが、たまに傷だけど。
 そんな普段通りの日常の1ページを送り、おっぱいのことがバレることなく翔平太を無事学校へと送り出した後、あたしは休日を謳歌していた。
 テレビをつけながら、漫画を読みながら、音楽を聞きながら、お菓子を食べる。
 なんて贅沢な暮らしなんだろう。
『むぐ~……っ! むぐぐっ!』
 ……この暴れてるおっぱいさえ黙ってくれれば。
「……はぁ。はいはい」
 あたしは仕方なく服を脱いで、巻いていたさらしをほどく。
『ぷはぁ! はぁ……はぁ……し、死ぬかと思ったのじゃ』
「おっぱいなのに、苦しいんだ」
『当たり前じゃ! お主はおっぱいをなんだと思うておるのじゃ!』
 怒られたよ。
「……なら、人間の姿になればいいじゃないか。昨日みたいに」
『妾も、叶う事なら人の姿になりたいのじゃが……』
「なりたいのじゃが?」
『絶対神によって、妾たち神様が人の姿になれる時間は、一日69分と決められておるのじゃ』
「69分って……」
 昨日の10万3000人といい、何か絶対神とやらの個人的感情が影響しているように思えるんだよな……。
『いざというとき変身できないと困るからの。それ故に、あまり変身すべきではないのじゃよ』
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