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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第46話

「……あったりまえだ。アタイは、劉華ちゃんだから従ってるんだ」
「美羽ちゃん……」
「だからさ、その……上手くは言えないけど、もっと人に頼ってもいいと思うぞ。俺だって、微力ながら力を貸すしな」
「……孔明……くん……」
「勿論、アタイもな」
「僕も、だよ」
「我輩もだ。頼ってくれたまえ。朝から夜まで」
「……みなさん……はい! 頼ります!」
「おう! 頼ってくれ!」
「っ! 竹中君! 校門前に展開する敵兵のほとんどが、校舎に向けて進軍中! その数およそ……四百ってところだ!」
「孟徳さんは?」
「早倉孟徳は、本陣に待機しているみたいだ。護衛におよそ百五十人ほどいるみたいだね」
「やっぱり多いな……普通に突撃しても勝てないか」
「どうすんだ? 竹中孔明」
「ん。多分、大丈夫なはずだ。もし負けたら……そんときは土下座でも放尿でもなんでもしてやるさ!」
「放尿はせんでいい! ……んで、策は?」
「冠は体育館に移動してくれ。普通に行くと倒されるかもだから、体育館への渡り廊下の屋根を通って行ってくれ」
「わかった」
「喜多村、今朝言った通り」
「放送室だね。鍵は用意してあるし、いつでもいけるよ」
「よし。じゃすぐに頼む。……行ってくるぞ、仲山」
「はい。頑張ってくださいね!」
「任せてくれ! 司馬も頼むぞ!」
「フハハハ! 任してくれ!」
「頼みますね、司馬君!」
「みゃ、みゃかしてくれ!」
 本当に大丈夫なんだろうか?
「……うし! 臨時生徒会! 出るぞ!」
「「「「 おぉっ! 」」」」

◇ ◇ ◇ ◇

『約束を果たす時だ。体育館で待ってるよ、もう姉ちゃん』

「……くはは! 孔明め、考えたな」
「どうかしたの? 孟徳さま」
「鳶姫、ついてこい」
「へ? どこ行くの?」
「……いやなに。可愛い弟分が、どれだけ男らしくなったか確認しに、な」
「ほへぇ……護衛の兵は?」
「いらん。ここにいる兵は後詰として弦姫のところに送れ」
「ほいほい。じゃ、文ちゃんに指揮を任せちゃうよ?」
「構わんぞ」
「じゃ、ちょっと行ってきます!」
「ああ」
「たっだいまぁっ!」
「……早いな」
「機動力があたしのウリだからね! へへん!」
「ん。よし、行くぞ!」
「らじゃ~」


「ふぅ……これで、孟徳さんが一人で体育館に来てくれればいいんだけど」
「……色々と聞きたいことはあるけど、早倉孟徳は本当に来るのかい?」
 放送機材をいじりながら、喜多村が訊ねてくる。
「ああ。多分、孟徳さんの性格がこの数年で変わってなかったら」
「ふぅん……ま、あまり深くは聞かないことにするよ。少なくとも、今は、ね」
「助かる。……じゃ、俺は行くぞ」
「ああ。僕は生徒会長の所に戻るよ。一応、話し相手が必要だろうからね」
「おう。じゃあな」
「ああ、頑張ってくれ」
 喜多村と別れ、体育館に向かう。
「……もう姉ちゃん、ねえ……」
 そんな声が聞こえてきたけど、気にしないことにしよう。メンタルが傷つく。

◇ ◇ ◇ ◇

「来てやったぞ、孔明」
 体育館の扉を開けてやって来たのは、孟徳さんともう一人。幼い印象の、烏羽色の髪をツインテールにした少女だった。手には、薙刀を持っている。
「……一人じゃないんだね」
「ああ。一人で行動すると、弦姫がうるさいからな。……一応紹介しておこうか。鳶姫、挨拶を」
「はぁいっ! 夏口鳶姫(なつぐちとびひめ)だよ! 夏口弦姫とは『にらんせいそーせーじ』です。ちなみにあたしが妹ね」
「知ってる」
 夏口さんと双子だってのは知らなかったけど。
「およ? 会ったことあったっけ?」
「ああ。適性テストのとき」
 俺に勝った、薙刀使いの少女。忘れもしない、あの鮮やかな動き。
「んー……あー! あたしが最後に戦った人!」
「はっはっは! そうかそうか、孔明が負けたのは鳶姫だったのか。なら仕方がない。鳶姫は強いからな」
 ええ。知ってますよ。ぼっこぼこにされましたから。
「さて、早速本題に入ろうか、孔明」
「ええ。ここに来てくれたってことは、約束、覚えてくれてたんですね」
「当然だ。忘れたときなど一度もない」
「……そうですか」
「む。その顔、信じていないな?」
「……まあ」
「……ま、そういうのは戦争が終わってからにするか。さ、死合おうじゃないか、孔明」
 拳を構える孟徳さん。並々ならぬ闘気が、素人の俺にも伝わってくる。
「武器、使わないんですか?」
「ああ。私は素手の方が強いんだ」
「……そですか」
 言いながら、俺も剣を構える。
「鳶姫、邪魔するなよ?」
「ほーい! 待機してマース」
「よろしい。……行くぞ孔明!」
 言って、一気に距離を詰める孟徳さん。
 早い!
「……だけど!」
 孟徳さんに背を向けて、ステージの方へと走り出す。
「逃げるか! 孔明!」
 当然、孟徳さんは追ってくるわけで。
 その速さは、誇張なしに俺の二倍。すぐに追いつかれそうになる。
 振り向けば、すぐそこに孟徳さんの姿。
「はぁっ!」
 渾身の右ストレート。俺はそれを、
「今だ! 伏兵部隊! 出ろ!」
 避けずに、合図を出した。
「むっ!?」
「……っぅ……流石は強豪、蒼龍館学院の生徒会長だな。しっかりガードしてもこの威力か」
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