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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第34話

 実際のところはわからないけど、そう言っておけば仲山も安心するだろう。
「……はい、それなら、頑張ってみます」
 自信なさげな仲山だったけど、まあ今はそれでもいいだろう。
 問題は、明日の演説で全生徒にどうやって『みんなが協力したがる生徒会長』と思わせるかだけど……。
「なあ、仲山」
「はい?」
「なんで生徒会長になろうと思ったんだ?」
 それは最初から思っていた疑問。
 仲山は、昔から目立つことが苦手だったはずだし、『誰もやらないなら私が学級委員長をやります!』っていタイプでもなかったはずだ。どちらかと言えば、『じゃあ仲山さんでいいんじゃね? 学級委員』ってみんなに推薦されて引き受けてしまうタイプだし。
 それなのに、どうして生徒会長なんて大役を、自ら進んでやろうと思ったのか。
「……そうですよね。やっぱり、わたしみたいな人間が生徒会長になるなんて、おかしいですよね」
「いや、誰もそんなこと言ってないんだけど」
 どうしてこうまでネガティブに考えるんだろう。
「……わたしが生徒会長になろうと思ったのには、二つ理由があるんです」
 ようやくネガティブゾーンから抜け出したのか、仲山はゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「二つ?」
「はい。一つ目の理由ですけど、実はわたしのおねえ――姉がこの学校の卒業生なんです」
 初耳だ。お姉さんが織館高校の卒業生だったことも、仲山にお姉さんがいたことも。
「そのお姉さん、もしかして生徒会長を務めていたのかい?」
「いえ、違います。姉は、普通の生徒でした」
「ふむ。……ああ、すまない、中断させてしまった。続けてくれ」
「はい。その姉なんですが、実は生まれつき身体が弱くて、去年、その……っ」
 仲山の瞳に、水滴が見えた。
 それを見て、この場にいた人間は大体の事情を察してしまう。仲山のお姉さんは、亡くなってしまったのだろうと。
 冠はそれを知っていたのか、目を閉じ、腕を組んで落ち着き払っていた。
「……姉はいつも言っていたんです。わたしにも、織館高校で学校生活を送ってほしいって。だから、わたしはこの学校で、楽しく三年間を過ごしたいんです」
 だから、この学校を守りたい。そう続ける仲山に、俺や他のみんなも、言葉を失ってしまった。
「……二つ目の理由、聞いてもいいかな?」
 この空気が続くのが嫌だったのか、喜多村が沈黙を破る。
「はい。その、わたし、小学生の時、いじめられていたんです」
「……っ!」
 またしてもヘビーな話。だけど、今回の話には、俺も心当たりと言うか、これから仲山が何を言おうとしているのか、なんとなくわかってしまった。
「小学三年生の時、いじめられていたわたしを助けてくれた人がいるんです。何人もの男子たちに、一人で立ち向かってくれた人が」
「へぇ……それは素敵な人だね」
「はい! とってもカッコいいんです!」
 屈託のない笑顔。そんな笑顔を見て、
「…………」
 俺は、額を押さえて苦い顔をしてしまう。
「どうしたのだ孔明、そんな顔をして」
「……いや」
 そのカッコいい人に、心当たりがあるんですよ、とっても。
「それで? それが何故仲山さんが生徒会長になろうと思った理由になるんだい?」
「ええ。……わたし、小学五年生のとき、転校することになってしまったんですけど、そのとき、その人と約束したんです。いつか再会するときまでに、明るく素敵で、みんなの中心にいるような女の子になるって」
「ふぅん……幼い時の約束のを叶えるために頑張る女の子、か。それまた素敵な話だね」
「そう言ってくれるとうれしいです」
「~~っ!」
「どうしたのだ孔明、そんなに顔を赤くして」
「……ほっとけ」
 その約束に、心当たりがあるんですよ。とっても。
「だから、わたしは生徒会長に立候補したんです。この学校を守る為に、わたし自信が、変わる為に」
「そっか……なら、僕たちも微力ながら協力させてもらうよ。ね、竹中君」
「…………」
「? 竹中君?」
「へ? あ、ああ……すまん、ちょっと考え事してた。なんだ?」
「いや、これからも仲山さんに協力していこうって言ったんだけど……」
「あ、ああ。そうだな! 協力していこう。うん、それがいい」
「……どうしたんだい? ちょっと変だよ」
「変って言われたっ!? ショック!!」
「どうやら大丈夫そうだね」
「まあな。大丈夫だよ、一応」
 一応、な。
「ともかく、だ。明日の全校集会では、なんで仲山がこの織館高校を守りたいのかを、全校生徒に言ってもらいたいんだけど……構わないか?」
「え、そ、それは……」
「ま、そういう反応をすると思ったけどね。じゃあ……そうだな、なんで仲山のお姉さんは、仲山にこの織館高校で学校生活を送ってほしいって思ったんだろう?」
「……それが、おねえ――姉は、教えてくれなかったんです。行けばわかるって」
「そっか。んー……喜多村、織館高校って、他の学校より優れているとこってあるのか?」
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