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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第15話

「うん、それも知っている。……あー、大体察したけど、一応聞いておこうか」
「はい、喜多村さんと、それから司馬さん、こ――竹中くんに、生徒会のお仕事を手伝ってもらいたいんです。一応、臨時ということになりますが」
「……ふむ」
 喜多村は、腕を組んでじっくりと考え始める。まあ、そう即答できることでもないだろう。俺自信、協力するのはいいけど生徒会に入るのはちょっとなー。めんどくさそうだし。
 一応気になって、隣にいる司馬を見る。
「ぶつぶつぶつぶつ……落ち着くのだ……いつも話している美少女が、2Dから3Dに変わっただけだろう……」
 なんか一人で呟いていた。はたから見れば完璧に怪しい奴だ。通報レベルだな。
「気持ち悪いですわね。だから殿方は嫌いなのです」
 そんな司馬の様子を見て、冠が悪態をつく。まあ、仕方のないことだろう。だって気持ち悪いもん。
「……僕としては、入るのはやぶさかでもない……けど、戦争に勝てるのかな?」
 と、今まで黙々と思案に耽っていた喜多村が口を開いた。
「戦争に負けた生徒会役員は、会長ほどではないにしろ戦犯として扱われる。勝てば官軍負ければ賊軍ってね。だから、戦争に勝てるのならば、僕は喜んで力を貸そう。勝てる自信がないと言うのなら、悪いけど僕は降伏の道を選ぶよ。活躍する場は、なにもこの学校だけではない。降伏して無事に他の高校に移れるのならば、僕はそれでもかまわないんだ」
「うぅ……そ、そんなぁ」
 喜多村の言葉に涙目になる仲山。
「……そんな顔されてもね」
 と、喜多村もばつの悪そうな顔をする。
「……劉華ちゃんを泣かせるとは……っ! ふ、ふふふ……」
 懐からなにやら銀色に光る鋭く尖った何かを取り出しているけど気にしない。気にしたらダメだ殺されるっ!
「……竹中君に司馬君。君たちはどうするんだい?」
「おう?」
 喜多村に急に話を振られて、ちょっと驚く。司馬? まだぶつぶつ言ってるよ。
「君たちが生徒会役員になるというのなら、僕もそうしよう。あまり好きな考えではないけど、『皆がやるならあたしもやるー!』というやつだね」
「おおう。俺の決断にこの学校の命運がかかっているというやつだな」
「ふふっ……そんな重く考える必要はない。酷な言い方だけど、潰れるべき学校が潰れた、ということさ」
「う、うぅ……」
 ああ、ほら。仲山が泣きそうじゃないか。
「殺すころすコロス殺す……っ! 劉華ちゃんがこの場にいなかったらすでに十回はめった刺しだぞ……っ!」
 ああ、ほら。冠がご立腹じゃないか。
 ってか、なんで仲山は冠の声が聞こえてないんだよ。ほら、顔見てみなよ。ああいうのを鬼っていうんだろうね。
 せっかくの美少女なのに。もったいない。
「……ううむ」
 冠への恐怖心やら喜多村の髪がふわりと揺れるたびに香るシャンプーのいい匂いのことやら雑念やらを振り払い、考える。
 仲山のことは助けたいけど……孟徳さんを倒す、という最終目標のことを考えれば、この織館高校にこだわる理由はないわけで。
 むしろ、戦力の整った他の学校に行ける可能性を秘めた『降伏』という選択肢を選んだ方が、最終目標を達成できる確率は高くなる。
 むむむ……ここは悩みどころだぞ。
「うぅ……」
 じっと、俺に視線を注ぐ仲山。やめろよ。そんな目で見るなよ……興奮しちゃうじゃないか……!
 こほん。冗談はこのあたりにしておこう。
「俺は協力するよ。最初からそのつもりだし」
 だって、こんなところで負ける人間が、あの孟徳さんに勝てるわけがない。
 これは一つの試練だと思おう。孟徳さんを乗り越えるための。
「っ!? ほ、ほんとですかっ!?」
 俺の言葉が信じられないのか、驚嘆の声を上げる仲山。そんなに意外だった? ショック。俺に2点のダメージ。
「まあ、然程役には立てないかもだけど」
「い、いえ、協力してくれるだけで感謝ですっ!」
 役に立たないこと前提らしい。そこは嘘でも役に立つと言ってほしかった。
「よし。ならば僕も協力しよう。約束だしね」
 と喜多村。
「……ぶつぶつ……リアルなんて怖くない……あ、我輩も協力しますですはい」
 と司馬。
「み、みなさん……っ! あ、ありがとうございますっ!」
 はたから見れば前屈運動をしているようにも見えるほどに深々と頭を下げる仲山。
「……まあ、来るもの拒まずと言いますし、ここは素直に協力を喜びますか」
 髪の毛を指先でくるくると遊ばせながら、冠がそう呟いた。目は相変わらず笑っていない。怖い。
 とにもかくにも、そんな感じで臨時生徒会は始動した。
 目標は、戦争勝利!

◇ ◇ ◇ ◇

 協力すると言った以上、俺たちは臨時生徒会役員として行動しなければいけない。
 そんなわけでやってきた生徒会室。
 豪華な設備があるわけでもなく、普通の生徒会室だったことに少し落胆しつつも、仲山と冠によって俺、司馬、喜多村はそれぞれ役職を割り振られる。
 ちなみに俺が書記、会計が喜多村、雑用――じゃない、庶務が司馬だ。
 不安だらけだが、やるからには負けるわけにはいかない。
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