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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第33話


 ――無意識に、そんなことを言っていた。
 ……恥ずかしいっ!
「ふぇっ!? ひゃ、ひゃい! よ、よろしくおねがいします」
 顔をりんごのように真っ赤に染めて、俯きながらそう言う仲山。よせやい照れるじゃないか。
 ふと気になり、他の面々を見る。とくに冠は殺気でも放ってるかもしれない。
「……なぁに言ってんだお前は」
「……悪いけど、ここには僕たちもいるんだよ?」
「……リア充死ね!」
 三者三様の反応。殺気を放っていたのは司馬だけで、女子二人は呆れているだけでした。
「まあ、戦争に関してだけじゃなく、調略やら政治やらの方も色々と頼むぜ? なんせ、軍師なんだからな」
「……それって仕事多くならない?」
「だろうな。だけど、この学校と劉華ちゃんを守るんだろ? 言ってたじゃねえか」
 にやにやと笑いを浮かべながら、からかうように言う冠。もうやめて! 孔明のライフはもうゼロよ!
「……まあ、やるからにはきちんとやるさ」
 自信があるわけじゃないけど。まあ、なるようになるだろう。
「頑張りなよ、竹中君。僕も手伝うからさ」
「わ、わたしもできる限り協力します」
「ちっ、しかたねえな。アタイも手伝ってやるよ」
「我輩もな」
 うぅ……みんなの温かい言葉に胸打たれるよー。あれ? 目から汗が。
「よっしゃ! 頑張るよ! 俺頑張るよ!」
「はい! 頑張ってくださいね、竹中くん!」
「おう! ……じゃあ、早速で悪いんだけど、仲山にやってもらいたいことがあるんだ」
「? わたしに、ですか?」
「ああ。仲山にしかできないことなんだ」
「わたしにしか……はい! 精一杯頑張らせていただきます」
 胸の前で小さく握りこぶしを作り、やる気を見せる仲山。そんな真摯な姿を見て、昔から変わってないなぁと思った。と言っても、俺の言う昔とは中学時代ではなく、小学生のときの仲山だけど。
「テメェ、まさか劉華ちゃんにいやらしいことをさせようとしてるんじゃねえだろうな?」
「してないから喉元にナイフを突きつけるのはやめてくださいと何度言ったことか」
「美羽ちゃん! 竹中くんが嫌がってるじゃないですか」
「……ちっ、劉華ちゃんに感謝するんだな」
 ナイフを懐にしまう冠。本当、なんでこの人はナイフを持ち歩いているんだよ。
「ともかく、仲山にしてもらいたいことってのは、そんないやらしいことじゃない。全校集会を開いて、そこで演説をしてもらいたい」
「演説……ですか」
 さっきまでのやる気はどこへやら、沈んだ表情になってしまう仲山。
 あれ? なんでそんな顔するの? まるで俺がいじめっ子みたいじゃないか!
「……あー」
 そこで、俺はこの間の全校集会のことを思い出す。
 二百人近く生徒がいるのに、三人を除いてみんな帰っちゃったからな。
 まあ、仮に俺が仲山の立場だったら、もう全校集会なんてやりたくはないだろうけど。
「大丈夫。今回はなんとかなるはずだ。喜多村」
「ん。なんだい?」
「情報の流布は、どんな感じになってる?」
「バッチリだよ。全学年のほとんどの生徒、それに教職員までにも伝わっているね」
「完璧だな。今のとこ、寝返り交渉に行ったやつがいるかってわかるか?」
「ああ。山中高校の知り合いに頼んで、校門と生徒会室を見張ってもらっているからね。現時点では、うちの生徒は一人もいないみたいだよ。その二人は、僕を裏切るわけにはいかないしね。信用できる情報だと思う」
 どうして裏切るわけにはいかないんだろう。
「世の中には、知らない方がいいこともあるよ」
 ……さて、話を続けよう。
「んー、ってことは、やっぱうまい具合に流言飛語が決まったってことか」
「だね。ただ、明日の放課後にはどうなっているかわからないよ?」
「ん。ってことは、やっぱタイミングは明日の放課後しかないか……サンキュ」
 喜多村にお礼を言って、再び仲山の方を向く。すると仲山は、妙にムスッとした顔で、俺のことを睨みつけてきた。睨みつけてきたって言っても、元が元だから、全然怖くないけど。
「……竹中くんって、喜多村さんと仲がいいんですね」
「そうか? 別に普通だと思うけど……」
「……もういいです」
 深く嘆息する仲山。え? どういうこと?
 まあ、気にしてたら話が一向に進まないし、今は放っておいて先に進めよう。
「とにかく仲山、明日の放課後全校集会を開いて、そこで演説をしてもらいたい。明日は大丈夫だと思うから」
「……本当にそうでしょうか? みなさん、わたしが生徒会長である限り、協力してくれないんじゃないでしょうか?」
「あほ。どれだけネガティブになってるんだよ」
「いたっ!?」
 仲山の頭を小突く。と同時に、頭を小突いた俺の右腕がちぎれるような痛みに襲われてうぎゃぁあああああああっ!
「テメェ劉華ちゃんになにしてくれとんじゃコラァッ!」
「やめてっ! 腕を雑巾みたいに絞らないでっ! 血液が出ちゃうっ!」
「美羽ちゃん! 乱暴はダメですよ!」
「ちっ、劉華ちゃんに感謝しろよこのクズ」
 ここまでテンプレ。
「痛ぇ……ともかく、明日は大丈夫だって。生徒の大半が、戦争に協力してもいいって雰囲気になってるから」
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