ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
目次

第27話

「実は、頼みがあるんだ」
「頼み? ほほう、孔明が我輩に頼みとな? ふふふ、聞いてやらんこともないぞ」
「実は――(説明中)」
「ふむ。なるほど。よし、わかったぞ孔明」
「頼めるか?」
「フハハ! 任せておけ。たまにはライバルに塩を送るのも一興よ」
 誰がライバルだ。
「ふうむ、入学式の後、全員で交換し合ったメールアドレス……ようやくこれを使うことになったか……」
「まだ使ってなかったのね……」
 携帯片手に感激の声を上げる司馬。呆れながらの俺の声も、すでに届いていないらしく、司馬は熱心に携帯電話に文字を打ち始める。
 相手は同じ教室にいるんだから、口で聞けばいいのに。
「ようし、送信っと」
「お、送ったのか?」
「うむ。後は結果を待つだけだな。フハハ!」
 二時限目の授業終了。
「……返信、こない……」
「……どんまい」
 結局、俺がメール送ってみんなに聞きましたとさ。


「…………」
 現在四時限目の授業中。
 次々と返ってくるメールを確認しながら、俺は作戦を細かく練っていた。
 冠には、すでにOK……というか、「好きにやれ」と言われている。
 まあ、やる価値はあると判断したんだろう。そうでなきゃ、「余計なことはするんじゃねえクズ!」と怒られているはずだ。
 軍師。そう喜多村に言われた時、不思議と嫌な感じはなく、むしろ気分が高揚した。
 多分、内心気に入ってたんだろう。軍師と呼ばれることが。
 だからこそ、みんなに、それこそ全校生徒に軍師と認めてもらえるようになりたい。
 そう思った。だから、頑張る。だって男の子だもん。
 そして昼休み。メールの着信を知らせるために、俺の携帯が小刻みに震えだした。
 携帯を開いて、メールをチェック。
 差出人は喜多村。内容は、
【件名】今朝の件
【本文】全校生徒全員とまではいかなかったけど、八割程度は聞けた。
    詳しく話すから、今から会えるかな? 僕は中庭にいるから。
 とのこと。美少女と一緒にランチだなんて、嬉しい限りだね。
「了解っと……おい司馬」
 メールを返信し、前の席で机にうつ伏せになっている司馬に声をかける。
「なんだ?」
 ものすごい速さで体を起こし、俺の方へ顔を向ける司馬。余程人に話しかけられたのが嬉しいんだろうな。さっきみんなに送ったメールのせいか、人が近寄ってこないもんな。
「一緒に飯でもどうだ? 喜多村も一緒だけど」
「飯……だと……っ!?」
「ああ。できれば来てもらった方が助かるんだけど……」
「仕方がない! 我輩は魔力回復に忙しいのだが、孔明、貴様がそこまで言うのならば付いて行ってやろうではないか! フハハ! 感謝せい!」
「……あー、あざーっす」
 今は我慢だ。こいつには役に立ってもらわないといけないからな。
 さて、中庭に向かう前に――
「萩原~、アレ、借りてくぞー」
「うぃー。壊すなよ? 俺のサイクロンマグナムを」
「あいあい。漁師がマグロを扱うときのように、丁重に扱うよー」
「それって結構乱暴じゃね!?」
 交渉成立。キーアイテム、『サイクロンマグナム』をゲットした!
「ところで司馬って自転車通学だったよな?」
「うむ。それがどうかしたか?」
「いや、借りる手間が省けたってだけだ。自転車に鍵が付いてるなら、その鍵も一緒に持ってきてくれよな」
「? いいだろう」
 そんな感じで、司馬仲達を仲間に加えた竹中パーティーは中庭目指して進軍を開始した。
 進路を妨害するリア充たちを司馬の威圧感で消し去りながら、カップル達の巣窟、昼休みの中庭へ。いちゃつくならよそでやれ! リア充爆発しろ!
「そういえば孔明。我輩、昼食を持ってきてないのだが」
「ああ、大丈夫。俺も持ってきてないから。必要ないし」
「必要ない……そして喜多村実里の存在……これは……もしや手作り弁当っ!?」
「だったらいいな」
「うひょ――――っ!! いつの間にフラグが立ったんだ!? 流石は一級フラグ建築士の司馬仲達。腕が違うぜ!!」
 一人で何を舞い上がってんだよこいつは。
「っと、おーい、喜多村ーっ!」
 ベンチで一人佇む喜多村を見つけ、呼びかける。
「ん? や、早いね」
「喜多村に会うためだからな」
「冗談でも嬉しいよ。ん、司馬君もこんにちは」
「こここ、ここここここここここここ、ここんにちは! 本日は御日柄もよく――」
「そんなに長い挨拶はいいよ。で、竹中君。今から向かうんだよね?」
「ああ。なるべくなら昼休みが終わる前に帰ってきたいしな。自転車も借りれたし」
「ま、ここからそう離れてはないし、足も手に入れたのなら急げば可能かな。じゃ、早速行こうか」
「ん? 集めた情報のこと、聞かせてくれるんじゃ……」
「走りながらでもできるだろう?」
「走りながらって、自転車は一台しかないぞ?」
「知ってるかい? 自転車って言うのは、無理すれば四人は乗れるんだ。僕一人くらい、乗せていけるだろう?」
 どうやって四人も乗せるんだろう?
「……後ろに乗って行くと?」
「うん。その通りだね。大丈夫、こう見えて僕は結構軽いから」
「……まあ、だろうな」
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。