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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第24話

「まず、戦争は午後六時に強制終了となり、翌日十時に再開。この際、生徒全員が終了時とまったく同じ状況であることが義務付けられる。一見、戦争再開時はなにも状況が変わらずに再開するように思える。でも、だ。このルールには抜け道がある」
「抜け道?」
「そ。六時に強制終了。十時に再開。ってことは」
「六時から十時までの間は自由に動ける、ってことか」
「そういうこと」
 まあ、こんな抜け道、誰もが気づくことだろう。ただ、戦争再開時には終了時と同じ状況じゃなければならないというルールがあるから、利用しようと思わない……はず。
 俺程度の頭で考えたことだから、もっと頭のいい人はもっと有効にこの抜け道を利用する方法に気付いているんだろうけど。
「冠も、籠城すればそう簡単には落ちないって思うだろ?」
「まあ、な。いくら兵数で劣っても、数日は耐えられるだろうよ。上手く立ち回ればずっと守っていられるかもな。校門さえ守ればいいんだから」
 校門に自校の校旗を掲げることが勝利条件である以上、それをさせなければ負けることはないからな。
「だけどよ、再開時には昨日と同じ状況じゃないといけないんだろ? いくら六時から十時までの間は自由に動けるって言っても、大したことはできないんじゃねえか?」
「まあ、伏兵だったり、奇襲だったり、罠だったり、総大将の移動だったり、そういうのは駄目だろうね」
「じゃあ、意味ねーんじゃねえか?」
「ところがどっこい。そうでもないんよ。戦争再開時、状況が変わっちゃいけないのは戦争に参加している学校の生徒全員(、、、、、、、、、、、、、、、、)だからな」
「……つまり?」
「さっき冠も言っただろ? 第三者の介入があるかもしれないって」
「……なるほどな。そういうことか」
 理解した様子の冠。頭の回転が速いな。俺より冠が作戦立てた方がいいんじゃないか?
「話に水を差すのは嫌なんだけど……」
 申し訳なさそうに、今まで黙っていた喜多村が声を上げた。
「僕はよく理解できていない。すまないが、説明してもらえないだろうか」
「ほいほい。了解だわさ」
 言って、地図上に駒を並べていく。うちの学校の敷地内に二つの王将と複数の歩。そして、他の学校がある場所に歩を数個ずつ。
「まず、うちが籠城する。兵力に差があるって言っても、うちの学校は広くないし、出入り口が正門と裏門の二つだけ。東側はすぐそばに海があるし、南側は中立エリアのショッピングモールで守られている。よって、そう簡単に落ちはしない」
「ふむ。それはよくわかるよ」
「ん。戦争が始まってから強制終了の六時まで耐える。耐えた後、俺たちは第十五学区内にある他の学校に交渉しに行くんだ。五万ポイント払うから、山中高校を攻めてくれって」
「なるほど……だが、それはルール違反なのではないか? 状況が変わってしまう」
「戦争に参加している学校の生徒全員が変わらなければいいのさ。変わったのは、これから参加する学校の生徒だ。俺たちは変わっていない」
「……なるほど。でも、他校が交渉に必ずしも応じるというわけではないのでは?」
「まあな。だけど、うちの交渉に成功しなくても、山中高校を攻めようと考える学校があるかもしれないだろ? それに、第三者の介入がいつあるかわからない以上。戦争を長期化するのを恐れて講和が成るかもしれない」
「……うん、理解した。説明ありがとう」
「どういたしまして。ま、実際そう上手くことが運ぶかは運しだいなんだけどね」
 説明を終え、今度は冠の方を見る。恒例の冠チェックの結果を待つためだ。
「……立てた作戦が三つとも運頼みかよ」
「うぐっ!」
 ちくしょう! 気していることをっ!
「ま、三つの中じゃ、籠城が一番負けない可能性があるかな。七十点だ」
 高得点じゃないですか! やったー!
「だが、もっと確実に勝てる作戦を考えろ。劉華ちゃんのためにも」
「わかってるよ。実際、これらの作戦は現時点でのものだ。敵の詳しい情報だったり、うちの学校の兵数が増えれば違った作戦を思いつくだろうさ」
「そうか。まあ、兵はアタイと劉華ちゃんでどうにかしてみせるさ」
「僕ももう少し情報を集めてみるよ。今度は戦争に関することを重点的にね」
 そうして、この日の臨時生徒会の活動は終了した。
 その後、仲山を待ってから帰宅。多分、帰宅した後も各々が自ら成すべきことを色々と考えているだろう。めんどくさがりの俺がこうして地図とにらめっこしてるんだから。

◇ ◇ ◇ ◇

 そうして翌日。
 すいみんすいみんすいみんすいみんすいみん不足♪ と口ずさみながら学校へと登校し、一年一組の教室にある自分の席へと座る。
「ふははっ! 随分と遅い登場ではないか、孔明!」
 前に据えある司馬は、相変わらずうるさかった。
「ところで、知っているか? 孔明よ」
「あん? ……どうした?」
 珍しく真剣な顔の司馬。今日は雨かな?
「実はだな。こんなものが校内にばらまかれてるのだよ」
 言いながら、三つ折りにされた紙を取り出し俺に見せる司馬。
 開くと、そこにはこう書いてあった。
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