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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第17話

「あいあいあー。実は、倒したい人がいるんだ。だからこそ、こんなところで負けるわけにはいかないって思った」
「倒したい人? 誰、と聞いてもいいのかな?」
「いいけど。早倉孟徳さんって人」
「っ!?」
 名前を言った瞬間、途端に驚いたような顔をする喜多村。
「……それってもしかして、蒼龍館学院の生徒会長の早倉孟徳さん?」
「そうそう。流石は報道部、よく知ってるなー」
「……いや、学園都市のことをある程度知ってる人なら、全員早倉さんのことを知ってるはずだよ」
 呆れたように告げる喜多村。そして、ポケットから手帳を取り出し開いてから、言葉を続ける。
「早倉孟徳さん。中堅レベルだった蒼龍館高校を、入学してたった1年で学園都市第四位の勢力を持つ高校にまでした天才。ちょっとした有名人だよ」
「……おうふ」
 そこまで有名人だったのか。驚き桃の木山椒の木。
 一応入学前に学園都市のことを調べたけど、簡単にだったしなぁ。知らなかった。
「……そんな目標があって、どうしてこの学校を選んだんだい?」
「……適性テストに落ちた」
「……お互い、厳しい目標だね」
「……だね」
 どうやら、俺の目標は前途多難らしい。
 でも、諦めるわけにはいかないし、諦めるつもりもない。
 孔明の名前通り、俺がこの国を補佐してやんよ!


「さて、それでは作戦会議を始めますわ」
 冠の号令で、対山中高校の作戦会議は始まった。
 生徒会室に用意された長テーブルに、それぞれが着席している。
 長テーブルの短い方、俗にいうお誕生日席には生徒会長の仲山が、後は仲山から見て右のラインに冠と司馬が、左のラインに喜多村が座っている。
 俺? 俺は仲山の後ろ、ホワイトボードの前に立っている。書記だからね。
「山中高校との開戦まで後1週間。その間に対策を立てなければなりません。何かしらいい案はないでしょうか?」
 ぐるりと冠が皆の顔を見渡す。だが、司馬も喜多村も仲山も何も言葉を発さなかった。
 まあ、いい案なんてそう簡単に思いつくわけでもないだろうし、仕方ないと言えば仕方ないんだろうけど。司馬さん、あんた司馬懿の生まれ変わりなんでしょう? しっかりしなさい!
「……質問してもいいかな?」
 手を上げる喜多村。司馬は俯いたまま何も喋らない。役に立たねー!
「どうぞ」
「現時点で、この学校が所有している武器と防具の数はどのくらいあるんだい?」
「少しお待ちを。ええと……」
 手元にあるパソコンを操作し始める冠。しばしの間。キーボードを叩く音だけが生徒会室に響き渡る。
「現時点で織館高校が所有している武器は、剣が十二本、槍が五本、弓が三張ですね。防具は十八個です」
「……少ないね」
「ええ。前生徒会長が最後に行った戦争の時に、ほとんどが敵に奪われたようですわね」
 どんだけ屑なんだよ、前生徒会長!
「他には何か?」
「……ううん、とりあえずは武器の数だけでいいよ」
 喜多村は、それっきり黙り込んでしまった。勝機が見えないから悩んでいるというところだろうか。
 とりあえず、俺は書記として武器の数をホワイトボードに書き込んでおく。仕事をしておかないと、司馬と同レベルになっちゃうからね。
 重苦しい空気のまま数十分が経過した。あれから、誰一人口を開いていない。これ会議って言わなくない?
 仕方ない。ここは俺が動くしかないか。まったくもう。仕方ないなぁ~。
「あの、かんむ――」
「黙りなさい。男性と話す趣味は持ち合わせておりません」
「ええーッ!?」
 初耳だよ! いや、冠と喋ったの今日が初めてだけど。
「み、美羽ちゃん……そういうことは……」
「はっ!? ご、ごごご、ごめん劉華ちゃん。はしたないところを見せちまったな」
「いえ、分かってくれたらいいんです」
「ああ! 以後気を付けるぞ……で? 何の用だ、竹中孔明」
 殺気が半端ないっ!?
「あ、はい……えと、地図とかってないのか?」
「地図?」
「ああ。作戦を立てるにしても、地図を見なきゃ始まんなくない?」
「んなもんねえよ」
「ないんかいっ!」
 それでよく作戦会議なんて言えたな。
「真面目な話、うちの学校には地図はなかったですわ。校内はもちろん、ショッピングモールも隅々まで探しましたけど、使えそうなものはなかったです。大体、あったらとっくに出してますわ」
「なるほど」
 地図がないとなると、結構厳しいな。
「ふむ。地図ならば、僕が調達しておこう」
「できるのか?」
「ああ。必ず、明日までにはなんとかしておくよ」
 頼もしい喜多村の言葉。ありがてえ。
「よし。地図さえあれば、いくらか策は考えられるはずだ」
「ほ、本当ですか? 竹中くん」
「ああ。伊達に歴史好きと名乗ってないさ」
「あんたが歴史好きって名乗ったとこ、見たことないけどな」
 横槍入れるなよ冠!
「ともかく、作戦とかに関しては任せてくれ。いくつか案はある。けど、なにか作戦を考えるにしても地図を手に入れてからになると思うけど」
 伏兵とか、奇襲とか。そういうのは、地図がないと話にならない。
「充分ですっ! お願いしますっ!」
「あいあい。任せてください大統領」
「大統領? 私は生徒会長ですよ?」
「ぐふっ!?」
 ま、まぶしいっ!? これが純粋無垢というやつか……っ!
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