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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第14話

 文句、愚痴、心の俳句、ツッコミ……。様々な不平不満(一部違ったけど)を言いながら、生徒たちはゾロゾロと体育館から出て行っていく。
 そんな体育館内の『帰る』という雰囲気に流されてか、『残ってもいいんだけどなぁ~』みたいな面持ちな人たちもそれに続いて帰っていく。俺のクラスメイトたちも、そんな感じで回れ右して歩き出す。
『え、えーと……これで全校集会を終わりにしますね』
 そんな長宗我部先生の言葉によって、教師たちも揃って体育館から出て行った。長宗我部先生も、「ご、ごめんね~」と言い残して姿を消す。ひっで。
『……残ったのは、これだけ……』
 壇上から体育館の様子を見ていた冠は、ため息交じりにそう言って、がっくりと肩を落とした。
「まあ、なぁ」
 この光景を見たら、そりゃ肩を落とすだろうさ。
 だって――
『残ったのは、たった五人、ですか……』
 体育館に残ったのは、仲山と冠を含め、たった五人だけだったのだから……。

◇ ◇ ◇ ◇

「あの、その……残ってくださり、ありがとうございますっ!」
 深々と頭を下げる仲山。そんな仲山に、俺と司馬、それに残ったもう一人の女生徒は苦笑いを浮かべた。
「私からもお礼を言いますわ。ありがとうございます」
 続くように、冠もそう言った。うん、言っただけで頭は下げてない。顔も笑ってない。なして?
「……ちっ! アタイと劉華ちゃんさえいれば、他に何もいらねえのに……」
 聞こえってっからね! その呟き、聞こえてっからねっ!
「……随分と個性的な生徒会役員だね」
 頭を下げ続ける会長と、悪態をつく副会長を見てそんな風に苦笑しながら隣の女生徒は呟いた。
「ん? なにかな?」
「あ、いや……」
 俺の視線に気づいたのか、女生徒は首を傾げながら俺の顔を覗きこんでくる。
 セミロングの黒髪に、アクセントとして可愛らしい花のヘアピン。中々に高い身長とどこか漂うボーイッシュな雰囲気が少し気になったけど、間違いなく美少女の部類に入る。ちょっとぺったんこだったけど。
 うぅ……かわええ……。
「……ああ、そういえば自己紹介がまだだったね。僕は一年二組の喜多村実里(きたむらみのり)。以後よろしく」
「あ、ああ。俺は一年一組の――」
「知ってるよ。竹中孔明君、だよね?」
「……どうして俺の名前を?」
「どうしてって、同じ学年の生徒だからね。知っておいて損はないと調べておいたのさ。幸い、うちの学校の一年生は二クラスしかないしね。ついでにそっちの君は司馬仲達君だったね」
「う、うむ。そ、そうでおじゃる」
 おじゃるって。
「……く、恐れるな我輩よ! 女子との会話は、毎晩シミュレートしておるだろうにっ!」
 ああ、緊張してるのね。なるほど。
「さて、今は挨拶はこの辺りにしておこうか。ねえ、生徒会長?」
「ふ、ふぇ!?」
「……そのような可愛げのある声を上げられても困るのだけれど……そろそろ本題に入ろうということだよ」
「ほ、本、題……?」
 まったく理解してない仲山に、喜多村は呆気にとられた顔をする。言葉もでないようだ。
「あぁ~可愛いぜぇ、劉華ちゃん……」
 副会長はというと、身体をくねくねと動かしながら悶えている。なんだ? この人は。
「……ああ、すまない。言葉を失ってしまった。本題というのは、どうやって山中高校との戦争を乗り越えるのかということさ」
「あ、ああ! そのことですね!」
 ようやく理解できたのか、仲山は右手でつくった握りこぶしを上に向けた左手の平に打ち付ける。小気味のいい音が鳴り響いた。
「そうですね、戦争のことですが……」
「ああ。あれだけ自信満々にやる気のない生徒を帰させたんだ。なにかしらの策があるのだろう?」
「え、えと……」
「?」
「……どうしましょう?」
「「何も考えてないんかいっ!?」」
 思わず俺も叫んでしまう。
「ひぅっ!? しゅ、しゅみましぇん……」
 いや、謝られても……。
「おいコラッ! 劉華ちゃんを苛める人はこのアタイがぶっ殺すぞ!」
「いや、苛めてはないのだけど……」
 喜多村は、こめかみを押さえながら苦虫を噛み潰した様な顔をする。ちなみに俺もそんな顔そしていることだろう。
 だって、副会長さんがあれだけ自信満々に『むしろ帰れ♪』なんて言ってたんだから。少人数でも戦争で勝つ、最悪負けない作戦があるのだと思っていたのに……。
「うーむ。僕としては、戦争で負けるのはあまり望ましくはないのだけど……」
 顎に手を当て、何かを考える仕草をする喜多村。
 ? 戦争で負けたくないって、なんでだろ?
「……まあ、戦う方法については後々でいいのかな。では、なにもなければ僕は帰宅したいのだけど……」
「え、ええと、それなんですけど……」
「む? なんだろうか、会長殿」
「実は――」
 申し訳なさそうに喜多村と、次いで俺と司馬を見る仲山。なんだ?
「その……現状、生徒会役員がわたしと美羽ちゃんしかいないんです」
「そうだろうね。生徒会長が不在という時点で、ある程度はわかるよ」
「そうですか。それでですね、実は生徒会を機能させるためには、会長、副会長、会計、書記、庶務が必要なんです」
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