ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

いち、にい、さん!

原作: 銀魂 作者: 澪音(れいん)
目次

27話 「双子」



参ツ葉さんが「街」に戻られてから数日した頃。
その日は何だか慌ただしい壱橋さんから「客人が来る」とだけ言われた。
それに葯娑丸君の方を見るけれど、どうやら葯娑丸君も誰が来るのかは聞かされていないらしい。
葯娑丸君の方を見ると、自然と合った視線にお互いに首をかしげると、また目の前を慌ただしく駆けて行った壱橋さんを目で追った。

「客人」がやってきたのはそれから半刻ばかりした後だった。
壱橋さんが「出迎えてくる」と言ったきり戻ってこないことに葯娑丸君と居間で「何かあったのだろうか」と話していると、玄関を開ける音がして、慌てて立ち上がった。猫型の葯娑丸君を抱えて玄関に向かうと、壱橋さんに向けて「お邪魔します」と声を掛けていた2人の男性と目が合った。



「はじめまして、肆谷肆杏(よつや しあん)と申します」

「はじめまして、伍森伍(いつつもり あつむ)と申します」

以後よしなに、と同じタイミングで頭を下げた2人は、容姿は勿論のこと一挙一動から何から何までそっくりだった。一見双子かななんて思ったけれど苗字も違うことから他人の空似というやつらしい。壱橋さんが「茶を淹れてくる」と立とうとした時に「お構いなく」と言って片腕を挙げる動作まで全く一緒だ。狙ったってここまで完璧には揃わないんじゃないかと思われるくらいのシンクロ率に思わず感嘆をあげてしまう。

「肆谷と伍森は、弐那川さんの助手のような役割をしている。普段は表に姿を見せることはないが、弐那川さんから頼まれたんだそうだ」

壱橋さんが説明している間、一瞬も逸れずにこちらに向く視線に思わず右往左往してしまう私を察してか葯娑丸君が肆谷さんと伍森さんの気を逸らしてくれた。2人は表情がなく、声の抑揚もない、まるで事務的な事柄を話すように淡々としているせいか、少し怖い印象が強い子達かと思ったけれど、葯娑丸君が間に入ってくれて話してみると、案外いい子達なのかもしれないと思った。2人を区別して話せるようになるまでは時間が掛かりそうだけれど、一刻程経てば葯娑丸君を介さなくても話せるようにまで近づけていた。

葯娑丸君がふらりと部屋を出て行った後、弐橋さんにもタイミングが良いのか悪いのか、仕事の電話が入ってしまい、客間に残ったのは私と肆谷さん、伍森さんだけになった。少しだけ気まずさはあるけれど、何か話そうかと悩んでいると、意外にも話題を振ってくれたのは伍森さんだった。

先程葯娑丸君が2人に話し掛けた時に「先輩」と呼んでいたのが気になり聞いてみると、お互いに顔を見合わせ頷いてから、意外にもすぐに答えてくれた。弐那川さんの下へ来るまでは色々な仕事を転々としていたらしい2人は、元は葯娑丸君の「後輩」だったらしい。だから未だに癖で「先輩」と呼んでしまうのだとか。ただ「先輩」と言っても2人はお役所勤めのようなことを淡々と熟していたほうで、それも期間がうんと短く、弐那川さんの下へやってきた年月のほうが余程長いから実際一緒に仕事をしたことはないんだとか。

「先輩に実際関わるようになったのは、弐那川さんの下へやって来てからです。それまでお互いの存在を認知していたものの、関わるきっかけがなかったもので」

「今は頻繁に弐那川さんのもとへ先輩が顔を出しているので、僕たちもそれなりに顔を合わせるようになったという訳です。」

2人は葯娑丸君に嫌な印象はないらしい。
葯娑丸君が部屋を出て行ってしまう時に、もしかしてまた帰ってこなくなってしまうんじゃないかと思ったけれど、どうやらそれも私の杞憂だったらしい。

「もしかして、姐さんのことで気にされていますか?」

「姐さん?」

ホッと息をついていると、今度は肆谷さんに話題を振られ思わず唖然としてしまう。
肆谷さんは「参ツ葉の姐さんのことです」というと伍森さんが続けて「あだ名です」と言った。

あだ名にしても「姐さん」だなんて、参ツ葉さんは一体何をしたのだろう。
それにしても、さっきのやり取りで葯娑丸君のことで心配事があるのを見抜いたどころか、その原因が何であるかまで見抜かれてしまったんだ。我ながらなんて分かりやすいのだろうと苦笑いしながら頷いた。

「2人の関係に口出すつもりも、2人が話したがらないことを聞く気もないの。けれど、どうしても気になってしまうというか」

話してくれたらいいなぁなんて気持ちはあるけれど、無理に知りたいなんて思いもない。
けれど、もう2人が思い悩んだり苦しんだりすることが起きてほしくないなとは思っている。
肆谷さんは私の話に頷くと、それ以上話を広げることはしなかった。それは私にとってもありがたい事だったし、この場にいない2人のことを憶測で話すのは避けるべきだろう、私もそれ以上何も言わずに話はいったん途切れてしまった。


肆谷 肆杏
髪は藍色、瞳は群青色の日本人離れした顔立ちをした男性。
無表情で声に抑揚がないが話してみると案外気さくな方だったりする。
元は葯娑丸の「後輩」だった。
参ツ葉のように事業を立ち上げようともしたが接客業には向かない為、弐那川の助手として裏で動いている。

伍森 伍
容姿は「肆谷」と同じだが、親しいものから見ると若干「おっとり」している顔立ちをしている。
「肆谷」同様、元葯娑丸の「後輩」、現在は「肆谷」と弐那川の助手として裏で働いている。

目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。