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いち、にい、さん!

原作: 銀魂 作者: 澪音(れいん)
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23話 「相席のお兄さん」



「すみません、店内が混み合っていまして相席になってしまうのですが」

注文をして待っている間、参ツ葉さんの仕事の話を聞いていると申し訳なさそうにやってきた店員さんの言葉に参ツ葉さんは二つ返事で了承して、私の隣に席を移した。

「相席とかあるんですね」

「んーあんまりないんじゃないかなあ。私も初めて言われたからびっくりしちゃった」

来た時は、然程混み合っていなかった店内もいつの間にか満席になっていた。
どの席も家族連れや大人数で利用している人が多く、席が空いているのがこの席くらいしかないようだった。どんな人が来るんだろう、たまたま席を一緒にするだけだしあまり話し掛けちゃ迷惑だろうけれど、気さくな人だったらいいなぁなんて思う。

少しして店員さんに連れられてやって来たのは銀髪のお兄さん。
「どーも」なんて言いながら前の席に座ったその人は、どこかで見たような気も。
もしかして、どこかですれ違った人かななんて思っていると参ツ葉さんにニコニコ笑いながらつんつんと指で頬をつつかれる。

「もしかして、知っている人?」

「あ、いえ…ただちょっと見た事あるなぁなんて。けど気のせいみたいです」

コソコソと耳元で話す参ツ葉さんは「そっかそっか」と言うと先に運ばれてきたコップを手に取った。

「もしかしたら「何か」分かったかなぁって思ったんだけど」

「そういう訳じゃなくて…ごめんなさい」

「謝らないで。ゆっくり探していこうよ」

参ツ葉さんは外を眺めながら「随分降って来たねぇ」と上を見上げる。
年明けから随分雪も減ってきたと思ったら、今日はまた冷え込んできて散歩の途中からずっと降り続いている雪は弱まることもない。店内にいると温かくてつい忘れてしまうけれど、相席に座った男の人の肩にも少しだけ雪が降り積もっていて、指先に冷えを感じた。

前の男の人は私たちを見て「注文いいッスか?」と訪ね、参ツ葉さんが「もう済ませているので、どーぞ」と言うとチャイムを鳴らした。店員さんが注文を取っている間、参ツ葉さんが外を見ながら「見てみて、あの子達双子かな。お揃いコーデしてるよ」なんて言いながら、何かが気になったのかお兄さんの方を見ると丁度良くか去って行った店員さんに、お兄さんの方を見ながら不思議そうな顔をした。

「うっはー、お兄さんこの寒い時期にパフェ頼むんだ」

思わず何の躊躇もなく話し掛けてしまう参ツ葉さんに唖然としていたけれど、お兄さんが「俺に聞いてんの?」と尋ね返してきたことに我に返って、参ツ葉さんの服の裾を引くと、参ツ葉さんは大丈夫、とでも言うかのように私の手を握った。

「この寒い時期にってねぇ。冬にこそアイスが食べたくなるでしょ。凍えそうな冬にこそ、熱いくらいに暖房とか炬燵とかつけて、アイスを食うのが贅沢というか、美味しいでしょうが」

案外普通に答えてくれたお兄さんに、参ツ葉さんは「ふーん」と言いながら手元にあった抹茶オレを口に運んだ。お兄さんのいうのはちょっとわかる気がする。炬燵に入っている時にアイスを食べると夏場にアイスを食べる時とは違った美味しさを感じるというか、それに魅力を感じることがある。

「感じる?」

でも参ツ葉さんは寒い時は温かいもの派、らしく不思議そうに私に尋ねてくるので、少し迷いながらも頷くと「私だけか―」と少しだけ拗ねた顔をした。

そうこうしているうちに、運ばれてきたお昼ご飯に舌鼓をしていると、フッと前から視線を感じて、顔を上げると、前に座っているお兄さんとカチリと視線が合った。気だるそうな視線は私に一直線に向いていて、それに居心地の悪さを感じながら慌てて逸らすけれど、逸れる気配のない視線に勇気を振り絞って「なんですか?」と尋ねた。

「いや、なーんかどっかで見た事あるなと思って。」

それは、確かに私も思った。
何となくどこかで見た気がするし、初めてな気がしないのだけれど。
けれど思い出せないからきっと、道ですれ違った程度何だと思ってた。

「ちょっと、お兄さんさぁ。私のツレをナンパとか信じらんないんですけどー」

「何その女子高生的なノリ。おじさんにはきついからやめてくんね?」

参ツ葉さんがからかうような口調でお兄さんにいうと、やっと逸れた視線に安堵した。

「この辺に住んでいるので。多分、道ですれ違ったのだと、思いますけど。」

「あーそうかもしんねーな。ここうちからも近いから」

「この辺なのですか?」なんて立ち入ったことを聞いてもいいのだろうか、そう悩んでいると参ツ葉さんが先にその質問をしていてお兄さんはそれに懐から名刺を出すと私たちの前に置いた。

「万事屋、銀ちゃん?」

思わず書いてあった名刺の名前を読むと「そう、銀ちゃんってのは俺ね」と運ばれてきた向こうからパフェをじっと見つめながら、今か今かと楽しそうに待っている。

「俺のじゃないんかい!」

しかしそのパフェはお兄さんの期待虚しく、向こう側のテーブルに運ばれていき、参ツ葉さんは名刺を手に取ると私の手に置いて「何でも屋さんってこと?」とお兄さんの方に問い掛けた。

「んまぁそんなとこ。お嬢さんがたも何かあったらぜひごひいきに」

「知り合い価格でやってくれる?」

「オイオイ。俺達初対面だよね?今初めましてだよね。何ちゃっかり知りあい価格でやってもらう流れ作ってんの。そこは正規の値段でお願いします」

「えーじゃあいいや。探し物頼もうと思ったけど、お兄さん目死んでるし、多分見つからないよね。目に輝きがないと見逃しちゃうだろうし。灯台下暗しって言うじゃない?」

「おーい、辞典引き直してこいよ。灯台下暗しってそんな意味じゃないからね。そもそも初対面の男に「目死んでるよ」なんてどういう教育受けてきてんの?心にはいつでも武装してんの?目に入った奴には特攻しろとでも言われてんの?」

「わ!この生姜焼き美味しいよ」

「聞けや。お願いだから」


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