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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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ライザの生還


「え? ちょっ? え? ここ、え? あれ、シャール? うそ、シャール! よ、よかった、無事だったのね!」
 ライザが顔をゆがめて抱きしめる。
「ライザさん! よかったです、無事で、よかったです!」
 ふたりが無事であることを確認しあっていると、マックス(仮名)とジェラルドの意識もこちらへと戻る。
 ふたりの再会の場面を見たマックス(仮名)は、
「なんとか、なったみたいだね」と、ビエロくんに労いの言葉をかけた。
 それからオーレン(仮名)を見て、「もしかして、そのままにしておくの?」と聞く。
「このまま、とは?」とジェラルド。
 ライザの無事を自分の目で確かめたのち、マックス(仮名)の言葉に反応をした。
「言葉通り。このまま寝かせておくってこと。目が覚めると、リンクされてこちらの情報は筒抜けになるからね。あっちでも対処してくれているとは思うけど、こっちでもなにかしら手を打っていると思っていると思うし。ほかに何か提案があれば話し合いの余地はあるよ?」
「いえ。そういうわけではなく。そうでした、こちらを見られているのでしたね。寝かせておくことは最善であると思いますよ」
 と、言いながらハンクを見た。
 ハンクもとくに意義はないようで、頷く。
 そしてハンクはシャールを呼ぶ。
 その声に、ライザも反応した。
「ハンク! こっちに戻ってたのね」
「ああ。そっちは散々だったな」
「まったくよ」
 ライザは自分が別の場所へと飛ばされたことを散々だと言って笑う。
「まさか、少佐の幻覚に救われるとはね……」
 と、どうやら自分の置かれた状況より、クロードに助けられた、幻覚とはとえ、それが汚点ののように話す。
「それで? どこまで進んだの? こっちと幻覚の中、そして吸血鬼の世界とはそれぞれ時間の流れが違うのよね。随分と進展してくれていると助かるのだけど……」
 すぐに切り替えてくる。
 またジェラルドがいることに、彼もまたすべてを知ったのだと理解した。
 その上で。
「ねえ、軍曹が加わったってことは、最悪の事態なのかしら?」
 ライザはそれぞれの顔を見渡し、ピエロくんの隣で横たわっているオーレン(仮名)の姿に目を留める。
「そいつがここにいるって、どういうこと? なんで、ここにいるのがそいつで、少佐じゃないの?」
「それはだな、ライザ少尉……」とジェラルド。
 ジェラルドはハンクとマックス(仮名)を見て、ふたりに説明するよう促した。

※※※

「そういうこと」とライザ。
 ハンクとマックス(仮名)の説明に、一応は納得したのだが。
「けれど、進展どころか、むしろ後退しているじゃないの!」
 と、軽く憤慨する。
「まったくだよ」とマックス(仮名)がヘラヘラと同意するので、
「あなたがそれを言うか!」
 と、不満がプラスする。
「マアマア……」とピエロくんが仲介して、
「とにかく、落ち着きましょう、ライザさん」とシャールが宥め、
「なってしまったものは仕方がないことで、これからどうするかを考えた方が早いのでは?」とジェラルドに指摘され、やっと落ち着く。
「それもそうね。もちろん、打開策とかあるのでしょう?」
 が、沈黙。
「嘘。ないの? どうなっているの? もう、私がいないとダメみたいね」
 たしかに、まとめ役は必要だろう。
 どちらかといえば、今までもライザが引っ張っていたようなものだ。
「とりあえずは、私の救出を優先してくれて、ありがとう。少佐の幻覚、あれってマックス(仮名)たちの仕業でしょう? なんで彼だったのか、言いたいことは多々あるけれど、助かったのは確かだし、今はお礼だけにしておくわ。本当にありがとう。で、これからの優先順位だけど、話を聞けば少佐は回復しない限りこちらには戻せないのね?」
「そうだね。信用のある人間の医者に託すか、いま診ている誰か同行させるか。その場合は軍の方でいろいろ便宜をはかってもらう必要はあるかもね」
 マックス(仮名)は絶対に戻せないわけではないと言うが、現実問題、意識が戻らない理由の説明等、ややこしくなりそうなので完全回復するまであちら側に任せた方がいいとジェラルドは考え、またライザもほぼそちらよりの考えであった。
「では、少佐の件はひとまずマックス(仮名)たち一族側にお願いするとして。問題はふたつね。ひとつは、汽車停車とこの巨大植物による死傷者がでた事件の対応と結末。もうひとつは、そこのオーレン(仮名)の対処」
「そのことなんだけどね」とマックス(仮名)。
 双方の落としどころの折り合いがついているのだと説明をした。
「でもそれって、その男からすべてを聞き出すための方便でしょう? 本気でそれを受け入れるつもりなの?」
「本気、とは?」とマックス(仮名)。
「だから、人間としてこちらで罪を償わせ、別の人生を与えるってところよ。それで、一族は納得できるの? ケインの件は絶対とは言えない。そちらが欲しい情報や真実とは限らないのよ?」
「そうだね。それを踏まえての決断だと思っていい。どのみち、オーレン(仮名)にはあっちの世界で生きる場所はない。仮に温情をかけられて生きることを許されたとしても、今度は組織の者たちに命を狙われながら生涯を暮らすことになる」
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