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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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薬草

「……マア、ソウダネ。ダケド、キケン。ヘタシタラ、コイツ、コワレル」
 睡眠に入る前に下準備がしてあれば問題は軽減されていただろうと、彼は付け加えた。
 それでも、やる価値はあるとマックス(仮名)は推し進める。
 だが……と渋りを見せるのはハンク。
 シャールは沈黙。
 わからないことに、あえて自己的な考えは言わない方がいいと判断をしたようだ。
 ピエロくんは判断に従う姿勢でおり、最終的な判断はジェラルドに委ねた。
「こう言っちゃうのはなんだけど」と、マックス(仮名)は前置きをした。
「ライザ少尉は軍人だから、ジェラルド軍曹が決断するのが筋だとは思う。けど、確実じゃない」
 失敗はふたりとも失う、どちらかを失うという意味も含まれる。
「私は……ひとりの人間としては悩ましいところですな。しかし軍人としては仲間の救出は叶えたいところではある」
 つまり……? と皆が彼の決断を待つ。
 ジェラルドはみなの顔を一通り見回してから、
「可能性にかけたい」
 と、決断した。
「ワカッタ。ジュンビ、スル。マズ、コイツノイシキ、アンテイ、サセタイ」
 ピエロくんの言葉に、マックス(仮名)は半ば呆れたような顔をして脱力する。
「あ……恐怖で失神だからな。泡吹いたし。大丈夫なのか?」
「アルモノガ、アレバ」
「あるもの?」
「ニオイ。アンテイ、スイミン、コウカ、アル。ハナガ、アル」
 今まで沈黙していたシャールが「あ……」と小さな声をあげた。
「知っているのか?」とハンク。
「あ、はい。たぶん、ですけど。薬草、のことではないでしょうか?」
「薬草?」と首を傾げたながら復唱したのはマックス(仮名)。
 三人のやりとりを見ていたピエロくんが、「ナルホド」と頷く。
「ニンゲンハ、ヤクソウ、ト、トッテイルノカ。イチゾクデハ、コウ、ト、イウノダガ」
「こう……お香のことでしょうか? たしか、東洋の方ではそういったものがあると、以前、父から聞いたことがあります」
 すると今度はピエロくんが首を傾げた。
「コウ、トモ、イウノカ? ヤヤコシイナ」
 そこにジェラルドが入る。
「おそらく、どちらも指しているモノは同じモノでしょうな」
「そうなのか?」とハンク。
「ここにライザ少尉がいれば、もっとわかりやすい説明をしていただけるのでしょうが。植物にはいろいろな効力があり、薬にも毒にもなります。また、香りを楽しむために乾燥したり調合したり。それらを用いて医療に使用するという話も聞いたことがあります。香りは人の感情を揺るがす存在ですからな。いい香りは高ぶったり安らいだり、嫌な臭いは不快になったりします。そういうことではないでしょうか?」
 今度は四人が一斉に、「なるほど」と納得をした。
「それで?」と話を進めようとするマックス(仮名)に、ピエロくんは、「ヒツヨウ、ショクブツ、ホシイ」という。
「採取な。ここは荒れ地だし、無理そうだな。いったん、一族の世界に戻って採取してくるか」
「ソウダナ。ダレガ、イク?」
「そりゃ、品種をわかっている、おまえじゃないの?」
「ダガ、コイツ、ドウスル?」
「……あ。そっか。そのまま寝かせておけば?」
「コノママナラ。ケレド、メザメテシマッタラ?」
「ん……あ! シャールちゃんは多少、知識あったりするの?」
「え? まあ、少しだけ。けれど、父に教わったくらいしか」
「でも、教えてもらえればいいんだよね?」
「……たぶん」
「じゃ、決まり。俺とシャールちゃんで、ちょっと戻って採取してくる」
 戻るには吸血鬼であるマックス(仮名)かピエロくんの同行は必須。
 だがオーレン(仮名)のことを診ていられるのはピエロくんにしかできず、必然とそのひと枠はマックス(仮名)になる。
 残り、薬草の知識が必要となり、その枠が問題だった。
 あまり多くを語らないハンクが「なあ……」とシャール同行に待ったをかける。
「なあ。知識だけでいいんだったら、ジェラルド軍曹でもいいのではないか?」
 ハンクの視線がジェラルドを見た。
 ふられたジェラルドは。
「たしかに。ですが、シャールさんほどの知識はないと思います。それでも危険回避、もしくはなにかの時、私でしたら自分のことは守りきれますし、マックス(仮名)さんのお手間は取らせないかと」
 雰囲気的には、みなさんのご判断にお任せ致します……とも取れる。
 みな思うことは、シャールを危険からできるだけ遠ざけたい、ということだろう。
 マックス(仮名)は、腕を組んでかなり葛藤しているようだ。
 そして、
「わかった。軍曹殿と行こう。代わりに、ピエロくんには絵なども使って教えてほしい」
「ワカッタ。ソレナラ、ツカイマ、ツレテイケ」
「つかいま?」
 人間たちが一斉に聞き返す。
 マックス(仮名)は、「ざっくりというとね」と前置きをしてから、
「こっちの世界でいう通信機器みたいなもの」
 と、これまた意味不明な説明をした。
 つかいま、字では「使い魔」と書くらしいが決して魔物というわけではない。
 自分の一部を実体化させたもの。
 ピエロくんは自分の霧と併せて滴のような形にしてマックス(仮名)に持たせる。
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