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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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 小柄な男は「当たり前だ」と叫ぶ。
 きっとオーレン(仮名)を説得する以上に苦戦するだろう。
「わかりました。では、保護するという名目で動きます。その後はあなた方の判断待ちということでご了承いただきたい」
「問題はないでしょう」とアストレイ(仮名)。
 さらに、
「同行したいのですが、代表代行をしているので、マックス(仮名)が同行いたします。向こうにはピエロくんもいるので、大丈夫でしょう」

※※※

 ピエロくんの霧に包まれ、別の場所に移動した三人は……。

「ここは……?」
 見慣れない風景が広がる中にいたシャールは、思わず声を漏らした。
「ニンゲンノ、セカイ」
「私たちのいた世界? 戻ってきたんですね! でも、ここはどこ? 汽車の中ではないみたいだけど……」
「ソウノヨウダネ。シラナイ、バショ?」
「……はい。でも知らない場所には移動できないのでは?」
「ソウダネ。キット、ダレカノ、ナカ、ノゾイタ。インショウ、ノコッテタ」
「誰のか、わかりますか?」
「サイキン。アナタト、モウヒトリノ、カレ。ハンク、ダケ。デモ、コイツノ、ゲンカクノナカ、ハイッタ、トキ、コイツノ、ナカ、ミタ、ヨウナ、キガスル」
「ということは、オーレン(仮名)さんの? 彼が人間の世界で印象に残っている場所ってことでしょうか?」
 ピエロくんが頷く。
 オーレン(仮名)はケインを追っていた。
 情報源として軍を利用していたのだから、シャールにもわかる場所の可能性がある。
 だが、いつからオーレン(仮名)がマックス(仮名)と入れ替わっていたのか、シャールにはわからない。
 ジェラルドやクロードなら、作戦中などの記憶から推測はできるだろう。
 ジェラルドと別行動になったのは、痛手。
「タブン」
「そう……ですか。では、私たちだけであれこれ考えても、どうしようもないですね」
「イヤ、ソウデモナイカモ、シレナイヨ?」
「……どういうことですか?」
「キット、オッテクル。ダカラ、マツ」
 待っているだけで、いいのだろうか……シャールはこの状況の中、それが正しい判断なのかがわからない。
 肯定も否定もできない自分が、本当に情けなくなっていく。
 せめて、なにか役に立ちたい。
 気持ちは焦るけど、実際、なにもできないのだと嫌というほど感じてしまった。
「モシカシテ、オチコンデ、テル?」
「……どうして、ですか?」
「ナントナク。ムリシテ、ナニカ、シヨウト、オモワナクテ、イイ。ヒト、ニハ、ソレゾレ、ヤクワリガ、アル。ソレヲ、コエルト、ハンドウガ、クル。ソレハ、アマリ、イイコト、デハ、ナイ」
「……無理は返って足手まとい……なんですよね。わかってはいるんですけど」
「フッ。キレイナ、ココロノ、モチヌシ、ナンデスネ」
「え! そなこと、ないですよ? でも、そんな風に私のことを見てくれているのは、嬉しいです。ありがとうございます」
「アナタトイウ、カタハ……イヤミガナク、ステキ、デス。ニンゲンガミナ、アナタノヨウダト、イイノデスガ……」
「人間が、嫌いですか?」
「キライ? イイエ、ニガテ」
「苦手? 敵対関係だったからですか?」
「テキ、ソレハ、チガウ。ニンゲンモ、イキモノ、タベル。ソレ、テキ、ダカラ?」
「……あ……。そうですね。命あるものを食べています。そんなこと、意識したことはなかったのですけど。でも、父が猟を教えてくれた時、私は狙いを定めながら、撃てませんでした。やっと撃てた時も、一発でしとめ損ねて、無駄に苦しませてしまって。自然の摂理、とでもいうのでしょうか。命あるものを頂き、私たちは命を繋げていく。吸血鬼が人を食用……あ、いえ。この言い方でいいのかわかりませんが、それも自然の摂理なのかも」
「……ソウイウ、カンガエモ、アルノカモ。アナタト、スゴスジカン。タノシイ。デモ、ソレモ、オワリ、デス」

※※※

「捜したぞ!」
 聞き覚えのある声が、突如背後からして、シャールは驚き、肩がわずかにあがった。
「イガイト、ハヤカッタ、ナ」
 ピエロくんは、それがわかっていたのだろう。
 とくにこれといって何かが変わっているわけでもない。
「ハ、ハンク、さん? どうして、ここに?」
 声の主はハンクで、彼に続くようにマックス(仮名)とジェラルドがいた。
「どうしてだと? 追いかけてきたに決まっているだろう?」
 ところがマックス(仮名)は「それだけじゃないんだ」と言う。
 すると、ハンクは眉をわずかに寄せた。
 余計なこと言うな……とでも言いたいのだろう。
「あれから、なにかあったんですか?」
「まあね。まったく、ハンクさんは! そういうのはよくない。シャールちゃんにも事の次第を知る権利はあるよ」
「だが……」
「うん。心配なのはわかる。だけど、隠し事をして問いつめられて、余計なことまで言っちゃう失敗談だってある。ま、俺の失敗談だけどさ」
 そこにジェラルドが「ごもっともな意見ではありますが、今はそれを論じている場合ではないのでは?」と横から入る。
「そうだった!」とマックス(仮名)。
 続いて。
「とにかく場所を移動しよう。そうだね、あの事件のあった汽車の中がいいかな。オーレン(仮名)のことも心配だし」
 と言い終わると、霧に包まれその場所にでた。
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