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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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囚われの少佐

 それに対し、理性がブチ切れたような口調でマックス(仮名)が叫んだ。
 少し丸い体型、印象が暗い感じがする表情。
 異質なオーラと気配はライザやハンクにもビンビンに伝わってくる。
 まるで理性を失い暴走してしまった擬神兵の姿を見ているよう。
「まっくす(かめい)さん。れいせいに。しかけてきます!」
 キツネくんはブチ切れたマックス(仮名)に静止を求めた。
「ああ、悪い。つい……」
 咄嗟に平静をとりつくろったマックス(仮名)。
 彼が火山の噴火のごとく怒りを露わにしたい気持ちは、ライザにも痛いほどわかる。
 自分にそれだけの力があれば、一気に仕掛けたい。
 相手の言い分に耳を貸さず、喉をかっきって少佐を奪い返したい。
 だが、この状況ではあまりにも非力、無力であることを自覚している。
「下がっていろ、ライザ。シャールを頼む」
 ハンクがライザの前に立ち下がらせた。
「ごめん。私では役に立ちそうにないみたいね。でもシャールのことは任せて」
「ああ……」
「じぇらるどのおめんさん。あなたもさがって」とキツネくん。
 続けてこう口にした。
「せんとうのうりょくはぼくのほうがうえ。きみはそちらのじょせいふたりをたのむ。もしものときは……」
 とまでいうと、ジェラルドのお面くんは、大きく頷いた。
 結果、彼がライザとシャールを守る体制にはいる。
 と、その時。
「まうえだ!」
 キツネくんの声が響くと、彼とハンク、マックス(仮名)がそれぞれ四方に分かれて回避、ピエロくんはその隙にオーレン(仮名)へとまっすぐ正面から接近。
「ピエロくん、無謀だわ!」
 オーレン(仮名)がすぐにピエロくんの行動に気づいた。
 ライザは彼が捕らわれてしまうことを懸念して叫ぶ。
 しかし。
「だいじょうぶだ。あれでもぴえろはつよい」
 キツネくんは大したことではないという。
 見ているとたしかに。
 ピエロくんは機敏な動きで攻撃してくる植物の蔦や枝をすり抜けていた。
 全体を見ていると、ピエロくんがオーレン(仮名)の注意を引いているように見えてくる。
 四方に分かれたハンク、マックス(仮名)、キツネくんは巨大な植物を上手く利用して姿を隠しながら、オーレン(仮名)の様子をうかがう。
 しかし、それもオーレン(仮名)に見破られてしまう。
「ち ょ こ ま か と、お ま ら え は……」
 単純な攻撃パターンだったが、蔦や枝が四方に分かれた彼らにも襲いかかる。
 ハンクはそれを余裕で交わしていく。
 腰に携えていたナイフで切り落とす。
 すると連続しての攻撃までの時間が変わってきた。
「意識が分散されたことで、再生に時間がかかっているのね」
 ライザはハンクが接近をせずに襲ってくるモノを切り落とし続けていることに意味があると思い、そう読みとった。
 戦闘力は自分の方があると自負していたキツネくんは一直線にオーレン(仮名)へと向かっていく。
 これで彼に向かっているのはキツネくんとピエロくんになる。
 三人の動きはわかった。
 そこにマックス(仮名)の姿がない。
 ライザは目を凝らし、マックス(仮名)の姿を探していた時だった。
「そこまでだ、オーレン(仮名)」
 マックス(仮名)の声が響く。
「マックス(仮名)? どこに……?」
 肉眼で捉えていないライザの視線が泳ぐ。
 すると。
「ライザさん。マックス(仮名)さんはオーレン(仮名)さんの背後にいます!」
 シャールがそこを指した。
「いつのまに?」
 その言葉はライザとオーレン(仮名)の口から飛び出た。
「おまえは昔から頭に血が上ると理性がブチ切れてたよな。なにもしてこないと思われていたけど、そうじゃない。心の内側、脳内ではおまえをバカにしていた奴らを何度も抹殺していたんだろう? 脳内殺人は別にいいさ。だけど、リアルでやるなら無差別だけはやめろ。無抵抗の乗客を殺したおまえを、俺は絶対に許さない!」
 マックス(仮名)は今までないほどの冷たい声色で、必死に憎しみと悲しみを押し殺しているようにも見えた。
 背後を取られたら、やすやすとその形勢を変えることはできないだろう。
 そうとうの手練れでなくては。
 オーレン(仮名)はお世辞にも手練れとは言い難い。
 ところが……。
「そ れ で? 僕 を ど う す る っ て?」
 オーレン(仮名)はこの状況でも怯まない。
 むしろマックス(仮名)を煽り始めた。
「こ れ を み て も、ま だ そ う や っ て い ら れ る の か、お ま え た ちは。僕 が こ い つ の 脳 を ひ と 突 き す れ ば、も う 脳 味 噌 は ぐ ち ゃ ぐ ち ゃで、死 人 も 同 然 に な る」
 ぱっくりと巨大植物の茎が割れると、その中から囚われ身となっているクロード少佐の姿が出現した。
 ライザが「少佐!」と叫ぶ。
 クロードはまったく反応を見せない。
「ば か か、お ま え ら は。簡 単 に 眠 り か ら 覚 め る と 思 う な。い ま、こ い つ の 脳 は こ ち ら の 手 の 中 に あ る。わ か っ た ら お と な し く し て い ろ。さ が れ!」
 さがれは明らかに背後にいるマックス(仮名)に言っていると思われる。
「お願い、聞き入れてマックス(仮名)!」
 ライザの必死の声が響く。
 しかし。
「さがらせるな、ライザ!」
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