ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

あらん

ジャンル: その他 作者: ワーク
目次

最低の青空

暗闇の中、青空の下で、自由に踊る、人ひとり

目が覚めて、時間見て、もう少し眠ろうとする。
この2度寝の間、変な夢を見る。大体が「夢」。
「こうだったらいいな」とか「こうだったらよかったな」みたいなの。
たまにある。すごい不安なの。こわいやつ。現実的な。
やめやめって思って、起き上がって、シャワー浴びる。
そんで、図書館に行って、隅の誰もいないところでスマホ触ったり、本読んだりする。

①はぁはぁはぁはぁ 1年生7月
授業が終わり、階段を上り、こんにちはと言いながら部室に入っていくと2年のトランペット担当の先輩(女)が芋虫みたく横になって、くねくねしている。
「はぁはぁはぁはぁ」
吹奏学部に入って、数か月の間、何度か同級生の過呼吸を見てきて、慣れていたが、先輩の過呼吸は初めて見たので驚いた。僕らが部室に入ってくる大分前か続いているようで、同級生のより大分激しかった。
心配模様でちょっと眺めていると、ホルン担当の先輩(女)が過呼吸の先輩の口にビニール袋を当てながら「離れて!みんなどっかいって!」と言ったので、僕らは部室を出ようとした。
「大丈夫?」「ゆっくり息を吸って」と後ろから聞こえる。
部室を出る時、過呼吸の先輩の先輩(男)が
「過呼吸て言うのは、寂しかったりしたときになるもんで、俺があんま構わんかったせいかもな」と言っていた。


役所の上にある図書館の角にある椅子に回りに誰もいなければ座ることにしている。
その椅子の横は建物の出っ張りになっていて、立ち入り禁止になっている。
僕は、その、立ち入り禁止の場所で丸くなりたいとよく思う。
首から、指から、足から、背中から小さく小さく丸く丸く丸く。


②ジーージーージーー 2年生4月
みんな、それぞれの楽器を取り出し楽器の準備をして、パートごとに練習場所へ行き、個人で練習を始める。
僕は「こんにちは」といいながら、音楽準備室に入っていく。
先輩(女)は自分より授業が一つ少なかったようで先に部活に来て、練習を行っていた。
先輩は小さく会釈をして、練習を続ける。
僕も準備をして、練習に取り掛かる。
コントラバスは吹奏楽の楽器の中、唯一の弦楽器だからか、音が小さいからか、大きく持ち運びが大変だからか、音楽準備室という移動が必要ない部屋が練習場所で、僕と先輩、二人きりだった。
なので、否が応でもお互いの行動や音に意識があったと思う。
僕は下手な事をすると、心の中で「ひどいな」と思われているのではないかと焦った。
ただ、この日は先輩の音が全く聞こえないほど集中して練習出来ていた。しかし、楽譜を進めていく中で、わからない所が出てきた。
わからないことがあったらいつでも聞いて、と言われていたので質問にいこうと思い、正反対にいる先輩の方を見た。
しかし、先輩はいなかった。
視界を下に向けると、部員の荷物を入れる大きな箱があり、その横から足が見えた。
先輩は時々、床に座って楽譜を眺める時があった。そうしているのだろうと思い近づくと、先輩は箱の前の椅子を枕にして眠っていた。
「先輩」と小さく掠れた声で呼んだつもりだったが、反応はなかった。
僕は、自分の練習位置へ帰り、コントラバスを持ち上げて、まず、弓で開放弦をジーーーと重くゆったり弾き、その後、「今年受験だからなー」とか思いながら、それを繰り返していた。

少し経った後、音楽準備室に忘れ物をしたらしいチューバ担当の先輩(女)が入ってきた。
眠っていた先輩は起きたようだった。
チューバの先輩は椅子にもたれかかった先輩を見て「えっ、どうしたん」と言った。
「あ、ちょっと気分悪くて」と唾をずぅとすすりなが、先輩は言った。
「大丈夫?ひどかったら帰りや。」「うん」
この後、二人は自分には、わからない同級生の話で盛り上がっていた、僕はその間も練習をしていた。バカみたいに、同じ事を繰り返していた。二人のおしゃべりではなく、自分の楽器の音を最大限に聞くため、楽器に顔を近づけて、自分の出す音を聞いた。
ジーー、ジーー、ジーー。
話が終わったのか、チューバの先輩は出ていった。
その3分後、僕は先輩にわからない事を質問したが、いまいち、なにを言っているのか、分からなかった。

この日以降、先輩が練習中に眠るのを僕は何度か見た。
「眠る。眠ろうとしなくても。白々しく朝が明ける事に、いつしか慣れていて。しんどい毎朝。」

多少、腹が減っていても、体に毛布を巻き付けて、スマホの電源を消したら、眠る。
眠ろうとしなくても。
午前2時ぐらいに目が覚めて、朝が来るまで、毛布の中でスマホを見て、また眠るを繰り返している。眠ると変な「夢」を見る。

外出の前、必ずトイレに入る。
座って上を向くと、黄色い丸い電球があって。それをじっと見つめながら「あーーーーーー」と声にならない声で叫ぶ。
自分の頭の中を空っぽにする。
トイレを真っ暗にして、イヤホンを着けて、大音量で音楽を流す。

家を出て、自転車に乗り、図書館へ向かう。
角から老人が飛び出してきて。
キーーーと自転車の悲鳴がする。
お互いに一秒見合う。
老人は逸れて歩く。
僕は、はぁとため息をついて、空を見る。
青空だ。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。