第14話
第三章
~五人で始める不思議探索~
「生徒会(ジャッジメント)ですのっ! 全員、手を上げて大人しくしなさいっ!」
突然勢いよく部室のドアが開かれたかと思うと、そんな物騒な台詞を言いながら一人の女生徒が乗り込んできた。
「あ~……なんですかね?」
生憎、今現在部室にいるのは俺だけ。仕方なく、俺が応対する。
「……やけに落ち着いてるね、君」
「いや、めちゃめちゃ驚いてますよ」
「ふぅん……ま、いっか」
女生徒は、ポニーテールにした黒髪をしゃらりと揺らす。
「さて。うちは、生徒会役員の者だけど、部長は君かな?」
「いえ、違います」
「んじゃ、部長さんは今どこに?」
「掃除当番で遅れるそうですけど」
「そかそか。なら、少し待たせてもらうよ」
女生徒は、俺の返事も待たずに近くにあったパイプ椅子を引き寄せ、そこに座る。
「……生徒会が、何の用ですか?」
俺は女生徒の対面に座り、そう訊ねた。
「そんな睨まないでちょうだいよ。うち、感じちゃう……」
「…………」
「あれ? 無視? こんな美少女が『感じちゃう……』なんてセクシーボイスで言ってるんだよ?」
自分で美少女って言っちゃったよ、この人。
まあ確かに、可愛いとは思うが……。
「むむ、君はもしかして女の子に興味がないのかな?」
「いや、ありますけど」
「……なら、なんでそんなに落ち着いていられるのかな? もしかして……うちに魅力がないって言うのっ!?」
「言ってませんけど!?」
「のど渇いた。お茶ちょうだい」
「急に話題が変わった!?」
「客人にお茶も出さんのかね、この家は」
「いや、家じゃないし」
「文句ばっかり……そんな子に育てた覚えはないぞ」
「奇遇だな、俺も育てられた覚えがないぞ」
「そういえば、うち昨日オセロしたよ」
「だからどうしたっ!?」
「……一人で、だけどね……」
「寂しい!」
「お、今のは『オセロをやるなら、俺も一緒にやってやるよ』っていう意味のプロポーズかな?」
「ちげえよ!」
「ぷっ……あはははは!」
そんなやりとりを交わした後、女生徒は腹を抱えて笑いだした。
「君、おもしろいね。うち、こんなにツッコまれたの久しぶりだよ」
「はぁ……」
「うん。気に入った。うちは君のために一肌脱ごう」
にかっと、白い歯を見せながら女生徒は笑みを浮かべる。
「うちは、二年の相原夏希(あいはらなつき)。一応、生徒会副会長を務めているよ。よろしくね、真白君」
「え? あ、こちらこそ。でも、どうして俺の名前を?」
「ん? 部活新設の書類に、部員として君の名前が書いてあったからだよ。この部活にいる男子は、君と村上渉の二人。問題児の村上の顔は、うちも知ってるから、必然的に君がもう一人の男子、真白恭介君になるのだよ、ワトソン君」
「誰がワトソン君ですか」
村上が問題児扱いされていたことには、けっして驚かない。
「それで、生徒会がなんの用ですか?」
出来るだけ真剣な顔で、俺は相原先輩の顔を見る。
生徒会の要件。それはきっと、昨日桐野が生徒会に提出した部活申請書のことだろう。
もしかして、却下されるのか?
「ん~……まあなんていうかさ、君らが提出した書類、ちょこっと足りない部分があったってとこかな?」
「足りない部分?」
「そ。詳しいことは、部員さんたちが集まったら話すよん。ってことで、部員さんたちはまだかな?」
「……メール、送ってみます」
そう言って、俺は携帯を取り出し、昨日アドレスを交換した仙堂院含め、みんなに『生徒会の人が来てるから、早く部室に来てくれ』という内容のにメールを送った。余談だが、この時の俺は素で村上にメールを送るのを忘れていたらしい。
メールを送ってから数分。
続々と部員が部室へと集まってきた。
みんな、部室に入った瞬間、俺と笑顔で歓談している相原先輩に気付くと、俺の方を見てどこかむっとした表情になった。なぜむっとしたのかは、よくわからん。
「これで全員かな?」
桐野、宮原、仙堂院が揃ったところで、相原先輩が口を開いた。
その問いに、俺は頷く。
「了解。それじゃ、部長はだれかな?」
「……一応、私ということになっていますけど」
パイプ椅子に座ったまま、桐野が答える。目を少し細め、相原先輩に睨みつけるような視線を送っていた。
「そんなに睨まないでよ。お姉さん、興奮しちゃう……」
「……はぁ。とっとと用件をお伺いしたいですね。私もくだらない会話をするほど暇ではないので」
「おう、怖い。そんな態度はよしてよ。うちは別に、君らの敵ってわけじゃないんだから」
「…………」
「信じてくれてないようだね、その様子じゃ。まあいいよん」
そこまで言った相原先輩は、今までのどこか人懐っこい笑みを消し、少し怖さを感じる、真剣な表情になる。
「単刀直入に言うけど、現状、あなたたちの部活を認めるわけにはいきません」
その言葉に、俺はああやっぱりな、という思いと、なぜなんだ、という思いを抱いていた。
予想はしていたが、いざ言われると、多少なりとも驚愕する。
それは俺以外の面々も同じらしく、みんな驚いたような表情を浮かべていた。
――ただ一人、うちの部長を除いて。
「何故です? 書類は不備のないように書きましたけど」
足を組んで、冷静に訊ねる桐野。
その表情には、微塵も動揺を感じない。
~五人で始める不思議探索~
「生徒会(ジャッジメント)ですのっ! 全員、手を上げて大人しくしなさいっ!」
突然勢いよく部室のドアが開かれたかと思うと、そんな物騒な台詞を言いながら一人の女生徒が乗り込んできた。
「あ~……なんですかね?」
生憎、今現在部室にいるのは俺だけ。仕方なく、俺が応対する。
「……やけに落ち着いてるね、君」
「いや、めちゃめちゃ驚いてますよ」
「ふぅん……ま、いっか」
女生徒は、ポニーテールにした黒髪をしゃらりと揺らす。
「さて。うちは、生徒会役員の者だけど、部長は君かな?」
「いえ、違います」
「んじゃ、部長さんは今どこに?」
「掃除当番で遅れるそうですけど」
「そかそか。なら、少し待たせてもらうよ」
女生徒は、俺の返事も待たずに近くにあったパイプ椅子を引き寄せ、そこに座る。
「……生徒会が、何の用ですか?」
俺は女生徒の対面に座り、そう訊ねた。
「そんな睨まないでちょうだいよ。うち、感じちゃう……」
「…………」
「あれ? 無視? こんな美少女が『感じちゃう……』なんてセクシーボイスで言ってるんだよ?」
自分で美少女って言っちゃったよ、この人。
まあ確かに、可愛いとは思うが……。
「むむ、君はもしかして女の子に興味がないのかな?」
「いや、ありますけど」
「……なら、なんでそんなに落ち着いていられるのかな? もしかして……うちに魅力がないって言うのっ!?」
「言ってませんけど!?」
「のど渇いた。お茶ちょうだい」
「急に話題が変わった!?」
「客人にお茶も出さんのかね、この家は」
「いや、家じゃないし」
「文句ばっかり……そんな子に育てた覚えはないぞ」
「奇遇だな、俺も育てられた覚えがないぞ」
「そういえば、うち昨日オセロしたよ」
「だからどうしたっ!?」
「……一人で、だけどね……」
「寂しい!」
「お、今のは『オセロをやるなら、俺も一緒にやってやるよ』っていう意味のプロポーズかな?」
「ちげえよ!」
「ぷっ……あはははは!」
そんなやりとりを交わした後、女生徒は腹を抱えて笑いだした。
「君、おもしろいね。うち、こんなにツッコまれたの久しぶりだよ」
「はぁ……」
「うん。気に入った。うちは君のために一肌脱ごう」
にかっと、白い歯を見せながら女生徒は笑みを浮かべる。
「うちは、二年の相原夏希(あいはらなつき)。一応、生徒会副会長を務めているよ。よろしくね、真白君」
「え? あ、こちらこそ。でも、どうして俺の名前を?」
「ん? 部活新設の書類に、部員として君の名前が書いてあったからだよ。この部活にいる男子は、君と村上渉の二人。問題児の村上の顔は、うちも知ってるから、必然的に君がもう一人の男子、真白恭介君になるのだよ、ワトソン君」
「誰がワトソン君ですか」
村上が問題児扱いされていたことには、けっして驚かない。
「それで、生徒会がなんの用ですか?」
出来るだけ真剣な顔で、俺は相原先輩の顔を見る。
生徒会の要件。それはきっと、昨日桐野が生徒会に提出した部活申請書のことだろう。
もしかして、却下されるのか?
「ん~……まあなんていうかさ、君らが提出した書類、ちょこっと足りない部分があったってとこかな?」
「足りない部分?」
「そ。詳しいことは、部員さんたちが集まったら話すよん。ってことで、部員さんたちはまだかな?」
「……メール、送ってみます」
そう言って、俺は携帯を取り出し、昨日アドレスを交換した仙堂院含め、みんなに『生徒会の人が来てるから、早く部室に来てくれ』という内容のにメールを送った。余談だが、この時の俺は素で村上にメールを送るのを忘れていたらしい。
メールを送ってから数分。
続々と部員が部室へと集まってきた。
みんな、部室に入った瞬間、俺と笑顔で歓談している相原先輩に気付くと、俺の方を見てどこかむっとした表情になった。なぜむっとしたのかは、よくわからん。
「これで全員かな?」
桐野、宮原、仙堂院が揃ったところで、相原先輩が口を開いた。
その問いに、俺は頷く。
「了解。それじゃ、部長はだれかな?」
「……一応、私ということになっていますけど」
パイプ椅子に座ったまま、桐野が答える。目を少し細め、相原先輩に睨みつけるような視線を送っていた。
「そんなに睨まないでよ。お姉さん、興奮しちゃう……」
「……はぁ。とっとと用件をお伺いしたいですね。私もくだらない会話をするほど暇ではないので」
「おう、怖い。そんな態度はよしてよ。うちは別に、君らの敵ってわけじゃないんだから」
「…………」
「信じてくれてないようだね、その様子じゃ。まあいいよん」
そこまで言った相原先輩は、今までのどこか人懐っこい笑みを消し、少し怖さを感じる、真剣な表情になる。
「単刀直入に言うけど、現状、あなたたちの部活を認めるわけにはいきません」
その言葉に、俺はああやっぱりな、という思いと、なぜなんだ、という思いを抱いていた。
予想はしていたが、いざ言われると、多少なりとも驚愕する。
それは俺以外の面々も同じらしく、みんな驚いたような表情を浮かべていた。
――ただ一人、うちの部長を除いて。
「何故です? 書類は不備のないように書きましたけど」
足を組んで、冷静に訊ねる桐野。
その表情には、微塵も動揺を感じない。
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