ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

俺と彼女の退屈な日常

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
目次

第12話

「うぐ……っ! ふ、フンッ! ワタシには、幼稚な友人など、不必要だからな! そうだ! 不要だ!」
 ついに友達がいないことを認めた仙堂院。幼稚って……見た目小学生のあんたが言いますか?
「…つ、強がってなんか、ないんだからなっ!」
 うっすらと瞳に涙を浮かべながら、強がる仙堂院。その姿を見た俺は、思わず叫びそうになった。『萌えーーっ!』と。
「やべ……かわええ」
 さっきまでは仙堂院の態度にイラついていた村上だったが、今の仙堂院の姿を見るとそれもなくなる。
「な、なぁ、恭介」
「あん?」
 村上が顔を近づけてくる。キモい。
「せ、仙堂院を最後の一人にしようぜ。コイツ、なかなかの逸材だと思うしな」
「……ああ」
 言われて初めて気付く。
 友達がいない、という仙堂院なら、どこかの部活に入っている可能性も少ないだろう。それに、性格は少しアレなところもあるが、見た目は確実に美少女の部類に入る。たしかに、かなりの逸材かもしれん。
「なら村上、お前が頼んでくれよ」
 俺は、『入ってやるから、奴隷になれ』なんて言われたくはないから。
「ええっ!? それは無理だろ」
「どうしてだ?」
「……さっきあんだけのことをしたんだぞ、オレは。そんなやつの頼みなんか普通聞くか?」
「……聞かねえな」
 たしかに、「お前……友達いないだろ」なんて真正面から言う馬鹿野郎の頼みなんか、聞いてくれるわけがない。
 結局、俺が頼むしかないのか。
「なあ、仙堂院」
「……っ! ……なんだ?」
 俺が声をかけた瞬間、ごしごしと制服の袖で涙を拭う仙堂院。そんな可愛らしい仕草が、また男心をくすぐるのだろう。後ろでくねくねと身体をよがらせる村上は、見なかったことにする。
「お前さ、どっか部活に入ってたりするか?」
「……入るわけ、ないだろう。あんなところに……」
 なにかあったのだろうか?
 まあ、今は置いておこう。
「ならさ、俺たちと一緒に、新しい部活を作らないか?」
「新しい……部活?」
「ああ」
「……どんな部活だ? ……身長が低いとまともにできない部活は嫌だぞ」
「身長は関係ないと思う。だって、非日常を探す部活なんだから」
「……非日常?」
「そ、非日常」
 首を傾げる仙堂院。
 それもそうだ。『非日常を探す部活』なんて言ったって、普通、すぐには理解できないだろう。
「ま、簡単に言えば、この世の不思議を探す部活だな。UFOとか、吸血鬼とか……そういったものを見つけるのが目的だ」
「……それなら、オカルト研と同じじゃないか」
「ん~……なんか違うんだよなぁ……」
 不思議な現象を探すことは、オカルト研究会と同じことをするだけだが、俺たちはそれだけが目的ではない。
「仙堂院てさ、この世界がつまらないって感じたことないか?」
「? 何をいきなり」
 退屈な世界から抜け出す。それが、最大の目的だ。
「俺は、ある。退屈な日常……そんなのこりごりなんだ」
「……退屈な……日常?」
「ああ。だからこそ俺は、日常を楽しむために、非日常を探す。そのための部活だ」
「…………」
 目を閉じ、何かを考える仙堂院。
 数十秒の思考の後、仙堂院は、こう答えた。
「いいだろう。ワタシの手を貸してやる」
「ホントか?」
「うむ。だから真白恭介、貴様はワタシの奴隷に――」
「断る」
「むぅ……何故だ、真白恭介! 何故断るのだ!」
「奴隷になるのが嫌だからに決まってんだろ!」
「……なら、ワタシも貴様等の部活に入るのをやめる」
「ぐっ……!」
「どうする? 貴様がワタシの奴隷になれば、ワタシはその部活に入るんだがな」
「うぐぐ……」
「さあ、決めるんだ、真白恭介!」
 そんな事言われたって、奴隷になるのは嫌だし……どうするか。
「よっしゃ! オレに名案があるぜ!」
 そんな中、村上が大声を上げる。
「名案? 迷案じゃなくて?」
「名案だっつーの。ま、任せておけ。仙堂院!」
「ん? なんだ、ゴミクズ」
 村上は。仙堂院に近づきその耳に顔を近づける。
「フンッ!」
「ごべらぁっ!?」
 そして、思いっきり殴られた。
「なにすんだよっ!」
「それはこっちのセリフだたわけ! その気持ち悪い顔をワタシに近づけるな!」
「ひどいっ!? 内密の話があったから耳を借りようとしただけなのに!?」
 それからしばらく仙堂院と村上は口論していたが、村上の、「おまえにとっても有益な話なんだよ」という言葉が決め手となり、仙堂院はしぶしぶ村上に耳を貸した。
「いいか? ……お前が……れ……介の……奴隷に……れないぜ? オレも……するし」
 仙堂院に何かを耳打ちした後、村上は顔を離す。
「ふむ……確かに……」
 仙堂院は、腕を組んで何かを思考する。
「よし、決めたぞ! ワタシもその部活に入ってやる」
「……オレは奴隷にはならないぞ」
「ああ、構わないさ。今は、な」
「後でもならねえからな!」
「くっくっく……そう言っていられるのも、今のうちだぞ、真白恭介」
 自信に満ちた顔で、仙堂院はそう言った。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。