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俺と彼女の退屈な日常

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第5話

翌日の昼休み。
 桐野からのメールで屋上へと集まった俺たちは、まず何をするか話し合っていた。
「部活を作るのに必要なものは三つ。部員と顧問と部室だ」
 生徒手帳を見ながら、桐野はそう告げる。
「ちなみに、部員は最低五名必要みたいだ」
「五人か……俺と桐野を入れて、あと三人。見つかるかな」
「今ナチュラルにオレを存在しないことにしたよね?」
「…………。……はぁ。俺と桐野と村上を入れてあと二人だな」
「今、オレを入れるべきかどうかめちゃくちゃ悩んだよね!?」
 あ、バレた。
「それと」
 村上の扱いにも慣れてきたであろう桐野が、村上を無視して話を続ける。
「どうやら、新しい部活を作るのには、一学期中に申請書を提出しなければならないらしい」
「……そいつはまた、急な話だな」
 今日は七月十三日。一学期が終わるのは、たしか二十四日だから、休日を含めると後一週間とちょっとしかない。
「とにかく、だ。顧問と部室の方は私がなんとか探してみるから、君たちは部員の方をなんとかしてほしい」
「ん? そりゃ構わないけどさ。どっちかって言うと、女子が勧誘したほうがいいんじゃないか? 友達も多いだろうし」
 俺がそう訊ねると、桐野は言いにくそうにしながら、こう言った。
「……私には、友人と呼べる人間がいないんだ」
「「…………」」
 場を、静寂が支配した。
 桐野の言葉に、俺と村上は何も言うことができなかった。うん、ごめん。
「と、とにかく! 今日の放課後から、活動を開始しようぜ! えい、えい、おーー!!」
 そんな村上の言葉に、申し訳程度に「お、お~」と右手を上げながら答えるのと同時に、昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。


「さて、ナンパしようぜナンパ!」
 放課後。HRが終わると同時に、村上が俺の席までやってきて、開口一番馬鹿な台詞を吐いた。
「やっぱさ、残り二人の部員は、女の子にしたいわけよ。オレ的には」
「…………」
「あれ? なんで黙るのさ?」
「お前が馬鹿だから」
「や、だってさ! お前は桐野がいるからいいかもしれないけどさ、オレには相手がいないのよ! オレにだって甘酸っぱい青春を! 放課後ティータイムをください!」
「意味わからん」
「だ・か・ら! お前が桐野といちゃいちゃラブラブしてるのを、黙って見ていることなんてできるのか? いいや、できない!」
「知らねえよ」
「ということは、だ。オレにも相棒、パートナー、すなわち恋人を作るしかないだろ?」
「や、俺と桐野は恋人じゃないからな」
「ただ、もしも、万が一、五人目がオレといい勝負のイケメンだった場合、四人目の女の子がそのイケメンにもっていかれるかもしれないだろう! そうした場合、オレは一人で何をしてればいいんだよ!」
「学校やめれば?」
「だから、残る二人は女の子、しかも美少女で決定だ!」
 熱く語りだす馬鹿には、どうやら俺の声は届いてないらしい。
 一つ嘆息した後、馬鹿の肩を軽く叩いて妄想空間から帰還させ、
「行くぞ」
 と告げる。
「はいはい。とにかく、美少女二人は決定だからな!」
 そんな事をぶつぶつと呟く馬鹿を引き連れて、校内散策を始めた。
 だが、馬鹿と過ごした無駄な時間のせいか、校内には生徒の姿がほとんど残っていなかった。
「つかさ、マジでどうするのよ? ホントに見ず知らずの人間を片っ端から勧誘していくのか?」
「どうすっかな……俺の知り合いは全員、他の部活に所属してるからなぁ」
「ちなみに、オレのダチもだぜ」
「となると、やっぱり片っ端から勧誘、ってのが手っ取り早いのかな?」
「そうなるかねぇ~。やっぱり、ナンパするしかなくね?」
「お前一人でやれよ」
「恭介に言われなくてもやるさ! オレの輝かしい青春のためにも! んじゃ、一旦別行動だ。オレは一階から順に当たってくっから、恭介は四階から当たってくれ。ノルマは一人な」
「ああ、了解」
「なんかあったらメールするわ。バイビー♪」
 投げキッスを置き土産に走り去っていった村上は、とてつもなく気持ち悪かった。
「さて」
 村上と別れた後、俺は四階に来ていた。
 この四階にあるのは、三年生の教室と、視聴覚室やら生徒会室など、いくつかの特別教室だ。
 こんなところに俺たちの新しい部活動に参加してくれるような人物はいないだろうけど、世の中には奇跡ってものもあるし、一応歩き回ってみる。
「…………」
 歩き回った結果、誰ともエンカウントしなかった。
 仕方ない、三階に下りるか。
「ちょっと、いいかな?」
 はぁ、と軽く嘆息しながらそう考えていると、不意に後ろから声をかけられた。
 振り向くと、そこには一人の女生徒の姿が。
「話があるんだけど、時間はだいじょーぶかな? あ、すぐに終わる話だよ?」
 赤みがかった長い髪を両側で縛ったツインテールを揺らしながら、笑顔でそう言う女生徒。
 若干子供っぽいが、その容姿はかなり高レベルだった。村上がいたら発狂していたかもしれない。
「ああ、大丈夫だけど……なんの用だ?」
 残念なことに、目の前にいる美少女とは、なんの接点もない。
 俺が特別イケメンということはないから、一目惚れというのも考えにくい。何の用だろうか?
「ありがと~♪ なら、中庭に出よっか? ジュースくらい奢るよ?」
 美少女と二人、中庭でお茶をする。
 そんな魅力的な提案に、俺は二つ返事で了承した。

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