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俺と彼女の退屈な日常

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
目次

第1話

Prologue
      ~俺と彼女の退屈な日常~

 幽霊を、本気で信じている人。
 サンタクロースを、本気で信じている人。
 宇宙人を、本気で信じている人。
 世間一般の人間は、そんな人を頭のおかしい人だと思うだろう。
 でも、俺はそうは思わない。
 なぜならこの俺、真白恭介(ましろきょうすけ)も、幽霊や、サンタクロースや、宇宙人などを信じている人間だからだ。
 だから、分かる。
 多分、幽霊やサンタクロース、宇宙人を信じている人は、純粋で、不思議なことが大好きで。

 そして、この世界が、つまらない。



「なあ、恭介。もうすぐ夏休みだぜ」
 昼休み。いつもと同じように、小学校からの悪友、村上渉(むらかみわたる)と机をくっつけて昼食をとっていた時のこと。村上が、唐突にそんな事を言い出した。
 たしか、さっきまでは次の数学の授業について話していたはずなのに。この急な話題転換は、本当にやめてほしい。
「たしかに、夏休みだけどよ……だからどうした?」
 無視するのも哀れすぎるので、一応は聞いてやる。すると村上は「はぁ!?」 と声を上げ、まるで信じられないとでも言いたげな顔で俺の方を見てきた。
「信じられねえな」
 あ、本当に言った。
「何がだよ?」
「何がって。んなの、決まってんじゃねえかよ」
 スポーツ狩りにした髪の毛を、右手でぐりぐりとかき回しながら、村上は呆れたようにそう言う。
「彼女だよ彼女。お前、この夏を一人で過ごすつもりか?」
 そんな村上の台詞を聞いて、俺は、「ああ」と納得した。
 実は俺たちには、昼食を共にしていた友人があと二人いる。
 ……いや、正確には、いたと言った方が正しいか。
 その二人には、つい最近彼女ができた。多分、昼食はどこかで彼女と一緒に愛情こもった手作り弁当でも食べているのだろう。
 要するに、焦っているのだ。この村上(バカ)は。
「オレたちがこの桜花高校に入学してから早二ヶ月……もうそろそろ、彼女ができてもいいと思わんか?」
「いや、別に」
「そもそも、だ。オレは、この学校に入学してから、女の子たちの好感度を上げるために色々と頑張ってきた」
「無視かよ」
 手を広げ、天井を仰ぎながら語りだす村上。
 仕方なしに、それを無視して、俺は今朝早起きして作ってきた弁当のおかず(冷凍食品)を口に運ぶ。
 うん、うまい。
「――だからこそ、オレは……彼女が……で、あるからして……それが――」
「……はぁ」
 いい加減、村上のことがうざくなってきた俺を、誰が責められようか。
「ごちそうさま」
 中身のなくなった弁当の容器を片付け、俺は教室を後にする。
「――だから宇宙は、こんな形をしているんだ。そう、だからこそ、オレのモテパワーは世界でも最高峰――」
 教室を出る時には、何故か村上は宇宙と村上のモテパワーとやらの関係性のことについて語っていた。

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