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「幸福の雨」

原作: その他 (原作:DIABOLIK LOVERS) 作者: 佐薙
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第1話

何を間違えたのか。


過ぎ去った時間はもう元には戻らない。



思い出した記憶は、私を救ってはくれない。







_____




雨は嫌い。
嫌な記憶ばかり、思い出してしまうから。




"貴方の名前はね、雨のRainから取ったのよ。雨は、私とあの人を出会わせてくれたの"




雨を背負う私は、もっともっと嫌い。大嫌い。
雨は私に不幸しか運んで来なかった。



_____





ザアザアと雨がガラスを叩く。その音は私の鼓膜に伝わり不快感は増すばかりだった。

いつ止むんだろう・・・。

けれどこの屋敷には天気予報を知る術はなく、無意味な問いだ。


「なーに考えてるの?こっちに集中して。」

「あ、ごめん。・・・んっ、」

「痛かった〜?んふ、お仕置き♪」


私は彼の、彼らの"餌"だ。拒否権はない。それだけの罪を犯してしまったのだから。


「ライト、そろそろ登校の時間です。・・・貴方も。」

「もう〜いい所だったのに。続きは学校で、ね?レイちゃん♪」

「えぇ・・・。」


ライトの気配が部屋から消える。首筋にあった痛みは、傷跡と共に消えていた。




_____





学校に向かうリムジンには、運転手と私の他に6人の兄弟が乗っていた。6人もいれば騒がしいと思うだろうが、いつになく今日は静かだった。これも雨のせいだろうか。

上からシュウ、レイジ、アヤト、ライト、カナト、スバル。
表向きには大物政治家・逆巻透吾の息子達として有名だ。しかし彼らには裏の顔がある。
裏の顔、と言っても隠すつもりなどないのだろうが。

彼らは吸血鬼だ。そしてその父・逆巻透吾は魔界で名を轟かすヴァンパイアの長、カールハインツ。
その中での私の立ち位置は、先程も言った通り、この兄弟達の餌だ。
訳あって逆巻レイと名乗っているけれど、血の繋がりは無い。

これだけ聞けば可哀想な少女、とか思ってくれる人はいるんだろうか。
だけどこれは、私が望んだこと。たった一つ、私に出来る罪滅ぼし。

私も正真正銘のヴァンパイアだけど、少し特殊でね。
それは他のヴァンパイアよりも飢えにくい、というところ。いくら血を吸われようと、自我を失ったヴァンパイアのように人を襲うことは無い。ほんの少しの血だけで生きていける。飢えたところで治癒能力が衰える訳でもないから、餌としては最適な素材。身体中の血を吸ったって傷付けたって死なない。魔界の者は心臓を銀製のもので刺すか、頭と体を離してあげなければ死ぬことは出来ない。
可哀想な生き物、かな?少なくとも私はそう思う。見た目は高校生でも、何十年、何百年と生きている。もう、生き飽きてしまった。




リムジンのスピードが徐々に落ちていく。どうやら学校に到着したようだ。

私達が一番乗りかな。こんなに早く着いたってやる事ないのに・・・。

すると数台の高級車が学校の前で止まり始めた。どうやらそんな早い時間でもないらしい。


ここ嶺帝学院高校には、アイドルや政治家、大手会社の社長の子供達がわんさかやってくる。所謂セレブだけが通える夜間学校だ。
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