私のことを1番知っているのは、あなた
「それじゃ、次はおねーちゃんの番だねっ」
いつの間にか体力を回復させた日菜が、顔を輝かせながら言う。
「いえ……私は、別に良いわよ」
「えーっ!なんでなんで?あたしもおねーちゃんのこと気持ちよくさせてあげたいのに!」
頬をぷくっと膨らませ、不満そうに言われる。
「日菜に触って、もう十分満足したもの」
というのは、もちろん嘘だった。
日菜が私で感じてくれて、気持ちよくなっている表情を観たり、抱き合うことによって気持ちがある程度満たされたのは事実だけれど、私自身の熱は未だ放出できずに身体の中で燻り続けている。
本当なら、今すぐにでも日菜に触れてほしいし、愛してほしい。
けれど、日菜は明日も朝早くから仕事の予定が入っているはず。
家族として、姉として、恋人として……。
万が一にでも、日菜を仕事に遅刻させるわけにはいかない。
日菜自身は、たとえ遅刻しようが「ごっめーん!遅れちゃった!」と軽く謝る程度で、何一つ気にしないのでしょうけれど、日菜が所属する『Pastel*Palettes』は、今世間から注目を浴びている人気のアイドルグループであるため、些細なことでも日菜の評判を落としてしまうようなことは絶対にさせたくなかった。
「むーっ。おねーちゃん、ウソついてるでしょ」
「そんなこと……」
疑いの眼差しでジッと見つめられ、つい視線を逸してしまう。
「絶対ウソだー。だって今、耳の後ろ触ってたもん。おねーちゃんがウソつく時のクセだよ!」
「え……?私、そんなクセがあるの?」
自分でも知らなかったクセを初めて指摘され、驚きを隠せなかった。
「うん。生まれたときからずっと一緒だもん。それくらい分かるよ」
穏やかな顔で、そう言う日菜。
「そ、そう……」
慈愛に満ちたその表情は、同い年とは思えないくらいに大人びていた。
日菜の見せる新たな表情に、心臓がとくとくと脈打つのを感じる。
今までずっと一緒に暮らしてきたというのに、姉妹から恋人へと関係性が変化することによって初めて知ることも多く、日菜と過ごす時間は毎日が良くも悪くも刺激的だった。
「おねーちゃん、ほんとはあたしに触ってほしいんだよね?どうしてウソつくの?」
「バレてしまっているなら、もう隠す意味もないわね」
私は観念して、本音を伝えることにした。
「あなた、明日も朝早いでしょう?私にシてくれるのは、もちろん嬉しいのだけれど、それで寝るのが遅くなって万が一遅刻なんてしたら……って思うと、心配なのよ」
「なーんだ。そんなこと?」
「そんなことじゃないわ。あなたは人気アイドルなんだから、私なんかのために自分の評判を落とすようなことはしてほしくないの」
「おねーちゃん、頭カタすぎ!あたしだって、もう子供じゃないんだから、いくら寝るのが遅くなったってお仕事に遅刻なんかしないもん」
「あら。『Pastel*Palettes』が結成されて間もない頃、バンド練習にしょっちゅう遅刻していたのはどこの誰だったかしら」
「もう!いじわるー!」
「ふふっ」
でも、日菜は確実に成長している。
少し前までの日菜は、他人の気持ちを考えることが苦手で、悪気がなくても相手を傷つけてしまうことが多かった。
けれど今では、相手の気持ちを一生懸命理解しようと奮闘したり『Pastel*Palettes』のメンバーや友人、私のために行動を起こそうとしてくれたり……。
日菜が勇気を出して私に本音でぶつかってきれくれた秋時雨のあの日。
この子のおかげで、私達はお互いに変わることができた。
私のことを1番知っているのは、あなた。
そして、あなたのことを1番知っているのは私。
「ね、おねーちゃん。絶対に遅刻なんかしないから、あたしにもおねーちゃんのこと、気持ちよくさせて……?」
眉を下げ、すがるようにちゅっ、ちゅっとキスをされる。
「んっ……」
「それに……おねーちゃんは明日お休みでしょ?ならおねーちゃんが寝るのが遅くなる分には別に問題ないよね?」
「え、ええ。私は大丈夫だけれど……」
「なら、いっぱい気持ちよくしてあげるね」
そう言いながら、私のショーツを片手で器用にずり下げてくる。
「わっ。すごいトロトロだね。やっぱりあたしに触られるの待ってたんだ」
そして、指先が突起に触れ身体中にピリッとした衝撃が走る。
「んうっ……!」
私が日菜の気持ち良いところを知っているように、日菜も私がどこを触られると気持ち良いのかを熟知している。
私が感じるところを的確に刺激され、快感の波が次々に押し寄せてきた。
「あぁっ!ああっ……!日菜ぁ……そこっ、だめ……」
「しーっ。おねーちゃん、声が大きいよ?おかーさんたちに聞こえちゃう」
「もう、いじわるね」
「あははっ。さっきの仕返しだよー」
再び舌を絡ませながらのキス。
その間に、日菜の指が私の秘部へ進入してくる。
「あぁっ、いやぁぁっ……!!」
「わっ、おねーちゃんすごい。どんどんぎゅーって締めつけてくる」
内癖を擦られ続け、全身に力が入る。
脳が痺れるような強い快感に脚がガクガクと震えてしまう。
「日菜ぁ、キスしてっ……」
「うん」
私は、キスをされながら内癖を強めに擦られるのが好きだった。
もう、そろそろ身体が限界に近づいている。
じわじわと涙が目に溜まり、視界が滲んでくる。
「あっ、ああぁぁっ……!!」
そして、ついに果ててしまった。
「おねーちゃん、気持ちよかった?」
「はぁっ……、ええ、とても……。ありがとう」
荒くなった呼吸を整えながら、なんとか返事をする。
「えへへっ。よかったー」
ライブで味わう高揚感は、やがて熱となる。
その熱を、放出させてくれるのは世界にたった1人だけ。
私だけの、可愛い日菜。
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