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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第四十五話 回想、これからのこと(二)

「こちらの二人は…?」警官がアルの横にいるローとゾロを見て質問してきた。
「私の連れです」アルが即座に答えた。確かに、この二人は見るからに怪しいから無理もない。
フロリモンとカントーは、アルの指示で警官に取り囲まれているヴァレリーを見て呆然とした。
(とうとうご主人様が警察に捕まってしまった…)
(以前から堅気ではないと思っていたが…)
この二人は、今夜は警察の庁舎に泊まることになった。明日になったら、火事が起きた状況を聞かれることになっている。これは今夜ツールーズ城に帰る侍女と青年も同じだった。
「おい」
ローとゾロがアルの肩をそっとつついた。
「悪いがおれ達はもう行く。この国の警察に賞金首だとバレたらまずい…」
「じゃあ、とりあえずルナン先生の屋敷に行こう。僕も一緒に行く」
「あんたはアイツらに付いててやったほうがいいんじゃねえのか?」
二人がこう言うと、アルは片方の眉を上げ、ニヤリと笑って言った。
「彼らだって子供じゃない。国王と王妃が二人揃ってるんだ。上手くやるだろ」
アルが警察に向かって、自分はこれから二人の供を連れてバスコニア王国との国境近くまで移動し、今夜はその付近の領主のルナンの屋敷に泊まると伝えると、警察はやはりちょっと慌てた。
「私の事情聴取は後日にしてくれ。ツールーズ城を通して依頼してくればいい。いつでも出向くよ」
以前はこの国の、今は隣国の王族であるアルに無理を言う訳にもいかない。警察はこれで納得した。
「アル…」
マリウスとタビーがアルの側にやって来た。
「近いうちにゆっくり話がしたい」
マリウスが周りに聞かれないように、ごく小さな声で言った。アルはこれに爽やかに笑って答えた。
「いつでもいいよ。僕も君の悪だくみの全貌を聞きたいからね」
「!!」
「アル!」
マリウスは無言で驚き、タビーは声を押し殺して叫んだ。
アルは大声で笑いながら馬にまたがった。ローとゾロもそれに続こうとしたが、ローが「おっと、いけねえ」と言って、ヴァレリーのところに走って行き、いきなり左の胸に何かを押し付けた。奪っていた心臓を返したのだった。
そして、3人は馬に乗って行ってしまった。


プレシ公国に出向いているタビーから電話がかかってきた時、既に夜の11時を過ぎていたが、マリウスはまだ執務室にいた。他の者は全て下がらせた後だった。明日までにこの書類に全て目を通さなければいけない。
「マリウス、落ち着いて聞いて」
電伝虫で、タビーはこう切り出した。
「私、不審者に連れ去られかけたわ。犯人を取り押さえて尋問した結果、妙な情報が出てきたの」
マリウスは無言でタビーの言うことを聞いていた。
「信じられないけど、犯行の主犯はアルのようよ。目的は、ガスケーニュ王国の価格協定破棄と、某国との軍事協定締結の真相を探るためだって犯人は言ってる。おかしいわ、どうしてアルはこんなことを疑ってるの?」
マリウスはぼんやりとタビーの声を聞いていた。ついにアルがこちらに対して行動を起こしたか、という考えが頭の中に浮かんだ。そして、自分が知っている情報をタビーに説明するのを面倒に感じた。
おそらく、タビーはそれを聞いたらショックを受けて泣くだろう。しかし、自分には彼女を慰めて、現状を説明し、納得させる時間はない。明日も執務が詰まっている。
それでこう言った。
「君は何も考えなくていい」
タビーが絶句したのがわかった。でも、何も感じなかった。
「君は予定通り友好国訪問を続けてくれ」
「分かったわ…」
タビーはこう言って電伝虫を切った。
タビーに持たせた友好国への親書には、金とダイヤモンドの輸出価格を下げることをそれとなく含ませている。相手国も喜んで乗るはずだ。
味方をできるだけ多く作らなくてはいけない。マリウスはそう考えていた。古くからの友好国である隣国が、我が国を裏切ろうとしているのだから。
それからしばらく、マリウスは自分でも周辺の国々に密書を送った。これにはヴァレリーを紹介してくれたクロードという若い貴族が使者の役割を買って出てくれた。
しかし約一月半後、突然タビーが単身でプレシ公国から帰ってきたという連絡がルナンから入った。タビーは友好国訪問を全てキャンセルしていた。タビーに託していた親書が相手国に渡っていないという事実に、マリウスはかっとなった。こちらがグズグズしていた間に、バスコニア王国がこれらの国々と何らかの交渉を始めている可能性は大いにあると思った。
対策を講じなくてはいけない。一人で城を出て、ヴァレリーの元に向かった。

ヴァレリーは行きつけのパブで見つかった。
「オクタビアが外交を行ってなかったって?」
マリウスから話しを聞いて、ヴァレリーは少し大げさに驚いてみせた。
(オクタビアは意外と鋭かったな)
そして心の中でそう思ったが、口には出さなかった。
とにかく、このパブでは込み入った話しはできない。とりあえず、ヴァレリーは自分の屋敷にマリウスを連れて行くことにした。
(そろそろ引き際かもな)
ヴァレリーは馬を駆りながらこう思った。急にややこしいことになって、急激に熱が冷めていくのを感じていた。
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