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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第四十三話 喜びの再会

タビーは後ずさりして3人がいるところに戻ると、マリウスに抱きとめられた。
いつの間にか、屋敷の真ん中に一直線の太い切れ目ができているのにタビーは気付いた。今、自分が切ったところだと思った。
「火が…」
「消えた…」
「助かった…」
二人の隣で、フロリモンとカントーも抱き合って座りこんでいた。

屋敷は真ん中にザックリと切り目を入れられながらも、崩壊もせずに静かにその場に建っていた。土台からてっぺんまで、切られてできた割れ目の幅は約70センチ。まるで四角いケーキをナイフで半分に切ったような状態だった。
火事の火が消された直後はところどころに細い煙が上がっていたが、それもすぐになくなった。
「おい、上に様子を見に行くぞ」
ローがゾロに声をかけ、シャンブルズで屋上に瞬間移動した。

屋上には、すすと煙で真っ黒に汚れたタビー、タビーに寄り添うボロボロで真っ黒の青年、それに同じように全身の至るところが焼け焦げて真っ黒になっている、妙におしゃべりな二人の中年または初老の男性がいた。
おしゃべりな男性二人は、「いまだに自分の目が信じられません」、「私達が今いるところは本当は天国なのでは…」等とひっきりなしに話しをしていた。
「ロー!ゾロ!」
タビーが屋上に姿を現した二人にすぐに気付いて、笑顔で名前を呼んだ。名前を呼ばれた二人は、この声にたいそうホッとした。
「おい、大丈夫か?」
「何があった?いや、そんなことは後でいい」
(「この方達がお迎えの方でしょうか?」「しかし、ツールーズ城からいらっしゃったにしては、それらしくないような…。あっ、つい余計なことを…」と、二人の使用人は後ろのほうでしゃべり通しだった。)
ローは近くに落ちていた鞘を拾って、タビーから手渡された鬼哭を収めた。そして、ふと考えた。
この火事を消したのはタビーだろうか。それとも鬼哭だろうか。
この場にいる人間には、誰にも分からないだろうと思われた。かといって、鬼哭も教えてはくれないだろう。
タビーの隣にいる青年が、秘かに自分達のことを観察しているのにローとゾロは気付いた。
夜で月明かりしかないのではっきりと見えないが、それでも面立ちがアルに似ているのは分かった。しかし、ちょっと尖った感じもあるアルに対して、この青年は穏やかで優しげな印象が強い。
ローとゾロは、タビーの夫に対して少なからぬ関心を持っているので、自分達も気が付かれないように相手をじっくり観察した。しかし、外野の声が呆れてしまう程やかましい。
(「はて、この方達はどうやってここまで登ってきたのでしょう?」「きっと不思議な力をお持ちなのです。私は今後はどんなことがあっても驚きません!」)
ローとゾロは、4人を地面の上に下ろした。
ヴァレリー邸の真ん中にできた切れ目は、屋上で足元付近にあるのを見ても迫力があったが、地面に立った状態で見ると、さらに圧巻だった。
「このお屋敷にはもう住めませんね…」
フロリモンとカントーは、自分達が長年働いていた屋敷の姿を見て呟いた。
ふいにフロリモンが焼けた屋敷に近づいて、この切れ目の隙間から中に入っていこうとした。
「おい、崩れるかもしれねえからやめろ。危険だ」
ゾロが止めると、フロリモンは下を向いて答えた。
「屋敷の中に…電伝虫を置きざりにしまったのです…」
「電伝虫?」
ローは「スキャン」で焼け跡の中の電伝虫を探した。もしも焼け死んでいたら黙っているつもりだったが…。
「いたぞ」
ローの腕の中に、卓上サイズの電伝虫が出現した。すすで黒く汚れてはいるが、どこにも怪我はしていない。床下やタンスの中などの火の手が届かないところに、上手く非難していたのだろう。
「ああ、良かった!」
「あの火の中でよく無事だったな」
二人の使用人は、ローから電伝虫を受け取って礼を言った。
「こいつももう年寄りで…。最後まで面倒を見てやるつもりだったので、無事でいてくれて本当に良かった」
マリウスがローとゾロの前で初めて口を開いた。
「でも、あなた方が住んでいたこのお屋敷は燃えてしまいました…。あなた方の職場でもあったし、思い出もたくさんあっただろうに…」
「いいえ、命が助かっただけでも十分です」
「長い人生にはこのようなこともあるのでしょう」
遠くにランタンの灯りが見えた。耳を澄ますと、何頭かの馬の足跡も聞こえる。
「警察か消防でしょうか?」
カントーが言った。確かに警察や消防が来てもいい頃なのだ。
「アンタらの幼馴染みかもしれねえな」
ゾロがタビーとマリウスに向かって言うと、二人はちょっと緊張してはいるが、嬉しそうな反応を示した。お互いに髪を直し合い、服からほこりを払う。
屋敷の庭に、馬を駆ったアルが入ってきた。
「アル!」タビーが叫んだ。
アルも片手を上げて答えた。「マリウス!オクタビア!」
アルは笑顔だった。
しかし、アルの隣を走る馬を駆っている人間には、首が付いていなかった。さらに、後ろに並んで走っている2頭の馬のうちの1頭の背中には生首が乗っていた。
「きゃ~~~っ!!」
「きゃ~~~っ!!」
「きゃ~~~っ!!」
「きゃ~~~っ!!」
マリウスとタビーと二人の使用人は、悲鳴を上げて一目散に逃げ出した。
「ええっ?! こ、これは違うんだっ!オクタビア!マリウス!」
ゾロとローはこれを見て呟いた。
「何が悪くてこうなっちまったかな…」
「おれのせいじゃねえ…」
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