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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第四十二話 鎮火

ローとゾロの体が空中に投げ出された。
ローは自分達が地面にたたきつけられる前に、地上にあった石と自分達をシャンブルズして安全に着地した。
月明かりがある夜だったので、白い岩や石がボンヤリと浮かんで見える。瞬間移動の目標物がすぐに見つかるのは都合が良かった。
シャンブルズで元の位置に戻された鬼哭が、二人の頭上を飛んで行った。ローは鬼哭が程良い距離まで行ったところで、再び自分達と鬼哭の位置を入れ替えた。
上空で二人は、2発目の爆弾の炎が上がるのを見た。ぼんやりとではあるが、暗闇の中に燃えているヴァレリー邸を肉眼で確認することができた。
「あの建物か!」
ローとゾロは、さっきと同じようにして無事に地上に降りた。鬼哭がまた二人の頭の上を飛んで行った。
これまでローは、鬼哭の感情というものを感じたことがなかったが、今は鬼哭が怒っているのがはっきりと分かった。鬼哭からしてみれば、懸命にタビーのところに飛んで行こうとしているのに、何度もシャンブルズで引き戻されてしまっているのだから無理もない。
「悪いな、鬼哭っ!」
ローは容赦なかった。再度、自分達と鬼哭の位置をシャンブルズで交換した。上空から目的地点の様子を観察すると、異様に明るく光る光線が屋敷の一部を焼き切っているのが見えた。
「!!」「!!」
大きな木の枝にフクロウがとまっていたので、二人はそこに瞬間移動して木の枝と幹にしがみ付いた。その木の上から、燃えているヴァレリー邸をじっくり観察することができた。
「アイツはあの建物の上にいるぞっ…」
「大丈夫だ。まだピンピンしてる」
焦るように言うゾロに、ローが冗談のような返答をした。屋敷の屋上にいる人間まではっきりと見える距離ではなかったが、あの光線を出しているのは絶対にタビーだと二人は思った。この時、ダダ~ンという重いものが地面に落ちる音が聞こえた。
後ろからまた鬼哭が飛んできた。しかし、ローはもう鬼哭の邪魔をしなかった。鬼哭の機嫌を損ね過ぎてもいけないと思ったし、タビーのところに鬼哭を早く助けに行かせたほうがいいかもしれないとも思った。それにここまで来れば、自分達ももう1~2回シャンブルズすれば目的地に着く。
重いものが地面に落ちる音がまた聞こえた。火事の炎が大きく上がったのが見えた。
「ずいぶん派手に暴れてやがる」
「ああ」
二人はシャンブルズで屋敷に近付いたが、庭の隅でいったん止まった。10人くらいの怪しげな男達が屋敷の前で騒いでいるのに気付いたからだった。
「ちくしょう~っ!これじゃあ悪魔の実の能力者の死体が丸焼けだぜ!」
「お前のせいだぞっ!!」
「うるせえっ!さっさと屋敷の外に出てこなかったあいつが悪いんだ!!」
男達は言い争っていた。冷静に仲間の暴走を観察していた何人かは、すでにこの場から離れていたのかもしれない。そろそろ警察か消防が来てもおかしくない頃でもあった。
ローとゾロは、この男達が敵であると判断した。激しく燃える屋敷を見てゾロが言った。
「一番急がねえといけねえのはアイツの救出だ。そっちはお前に任せる。おれはあの連中の始末をつけとく」
「了解した」
男達がローとゾロがいるのに気が付いて、因縁をつけてきた。
「何だお前らっ?火事場見物かっ?!」
「こんなところを見られたからには、タダじゃ済まねえぜっ!」
ゾロがゆっくりと男達のほうに進み出て、ローはシャンブルズで屋上に向かおうとした時だった。
ローとゾロは誰かがこの建物の上の方で、刀…つまりは鬼哭…を振り下ろそうとしているのを感じ取った。


タビーは鬼哭がこちらに向かって飛んでくるのに気が付くと、マリウスと2人の使用人の間をすり抜けて、またもや屋上の上に走り出た。
(鬼哭…!アル達が近くまで来ている!)
タビーは鬼哭が飛んでくる位置に走った。飛んでくる鬼哭を受け止めるのは二度目だった。
フロリモンとカントーは、タビーが何をしに飛び出したのかを悟って大声で叫んだ。
「ひえええ~っ、お客様、さすがにそれは無理です~」
「危のうございます~~っ」
マリウスも、タビーが剣が得意なことは知っているが、やはり無理だと思った。
「よすんだ!無茶なことはやめろ!」
しかし、タビーは流れるような動作でそれをやり遂げた。

パシィッ!!

鬼哭の勢いが強かったので両手でしっかりと捕まえたが、勢い余って体が回転しながららせん状に引きずられる。思いっきり足を踏ん張ってブレーキをかけて、2~3回転してやっと止まることができた。
(このまま思いっきり振り下ろせ!!)
頭の中で誰かの声がした。鬼哭の鞘は、回転した時に外れて落ちていた。
タビーはその声が言う通り、鬼哭を大きく振りかぶって力いっぱい振り下ろした。
足元でバリバリと音がしたが、恐怖は全く感じなかった。

衝撃はそんなに強くないように思ったが、そうでもなかったかもしれない。ゾロとローは素早く身をかわしてよけたが、他の者達はそうはいかなかったようだ。男達の体は吹き飛ばされて宙に浮き、地面に叩きつけられた。全員が気を失って動けないでいる。
そして、火事はこの勢いで完全に鎮火した。辺りは急に静かになった。
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