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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第三十三話 証拠隠滅計画

(あの時は助かりたい一心だったが…。ヴァレリー様はお怒りになるだろうな…)
サミエルはヴァレリー邸の使用人と同じように、ヴァレリーの得体のなさを恐れていた。ヴァレリーの正体は知らなかったが、自分達とは住む世界が違う人間のような感じがしていた。
(私は…あの悪魔ではなく、ヴァレリー様から殺されるかもしれない…)
サミエルは本気でそう思っていた。しかし、馴染みの小さな酒場で荒々しい気性の顔見知り達と一緒に酒を飲んでいるうちに、物騒な考えが頭の中に浮かんできた。
(私が王妃をヴァレリー様の屋敷に連れて行ったのを知っているのは…王妃だけだ。王妃の口を封じてしまえば…?)
正常な状態であれば、王妃の口を封じるだけでは証拠隠滅とはならないことが分かるはずである。そもそも、このようなことを考えつくこと自体が異常とも言えるだろう。
あんな恐ろしい思いをした後で、強い酒を飲んだサミエルの頭は、正常な判断ができない状態だった。
さらにこの悪いタイミングで、誰かが悪魔の実について語り始めた。
「悪魔の実の能力者が死ぬと、そいつが食ってた悪魔の実が体の中から出てくるって話しだぜ」
「じゃあ、そいつを殺っちまえば、悪魔の実が手に入るのか?」
男達は悪魔の実の能力者が死ぬと、体から悪魔の実がそのまま出てくるかのように話しているが、これは間違いである。能力者が死んだ後に悪魔の実がどんなふうにして再び出現するのか、まだ誰にも本当のことは分かっていない。
「悪魔の実を売れば、1億ベリー以上になるらしいぜ」
「そいつぁスゲエな…」
「おいおい、その能力者を殺っちまおうってか?ゲラゲラゲラ!」
サミエルは顔を上げた。その目は異様にギラギラしていた。
「あんたら、本当にその気があるなら案内するぜ…。俺にとっても一石二鳥だ」
男達がサミエルのほうを向いた。
「俺は…しくじっちまったんだ…。でも、そいつの口を封じれば失敗を取り戻せるかもしれない…。このままだと俺は…、殺される…」
サミエルは酔いで呂律が回らない口でこう言うと、机に顔を伏せてしまった。
「おい、泣いてるのか?」
「殺されるって…冗談だろ?」
「なんでそんな危ない橋を渡ってるんだ」
数人が驚いてサミエルに声をかけたが、サミエルが顔を上げようとしないので、全員遠くの席に行ってしまった。
しばらくすると、さっきの話しを聞いていた男の一人がサミエルの隣に座った。
「おい、もっと詳しく聞かせろ」
男は低い、凄みのある声で言った。
サミエルはゆっくりと顔を上げた。目に入ってきたのは、怪しげな雰囲気のたいそう凶悪そうな男だった。
「あんた、本当にやるのか…?」
「ああ、こんなチャンスを逃がす手はねえ。その悪魔の実の能力者はどんな奴だ?どのくらい強いんだ?」
「女だよ…。もの凄く恐ろしい女だ。でも、ちゃんとした武器を用意して大勢で行けば…きっと…」
「女とは驚きだな。しかし相手は能力者だ。油断してたらこっちがやられちまう。人と武器を集めなきゃならねえが…」
「そいつはこの近くの屋敷にいるが、急いだほうがいい。すぐにどこかに行ってしまうかもしれない」
サミエルは、相手が女だということは言ったが、王妃であることは口に出さなかった。
男の顔に狂暴な笑みが浮かんだ。恐ろしい計画が、秘かに実行されようとしていた。

アルとローとゾロは、ヴァレリーを連れて馬でニールの森の旧モラン邸に向かっていた。ヴァレリーは自分で馬を駆っていた。むっつりとして少々反抗的な態度をとりながらも、3人に合わせて従順に馬を走らせている。ローに心臓を奪われているので、言うことを聞かざるを得ないのだった。
(ヴァレリーの証言通りであれば、マリウスの失踪に関してはヴァレリーに罪はないんだけど…。証言通りであれば、だけどね)
罪があるかどうか不確定の段階にしては、自分達の今のヴァレリーの扱いは丁重とは言えないかもしれない…と思いつつ、アルは何も言わなかった。
その時、アルの電伝虫が鳴った。4人は馬を止めた。
電伝虫はルナンからだった。
「アル、君達の予感は正しかったようだよ。オクタビアが城からいなくなっていた。見張り役だった侍女が何か知っているようだが、泣くばかりで何も話さない」
ルナンは事実だけを簡潔に淡々と話した。城は大騒ぎになっているはずだった。
「オクタビアもですか…」
アルは唇をかんだ。ローとゾロも目付きを変えた。
「侍女の尋問を続けると同時に、捜索隊を出すことにした。君達はマリウスを頼む」
「わかりました」
アルは電伝虫を切った。
凄まじい怒気を発したゾロが、ヴァレリーの胸ぐらをつかんで無理やり引き寄せた。
「おめえが企んでたのはコレか?」
ローがポケットからヴァレリーの心臓を取り出して言った。
「正直に言え。手間を取らせるな」今にもヴァレリーの心臓を握りつぶしてしまいそうな目付きをしている。
ヴァレリーは真っ青な顔を引きつらせ、うわずった声で白状した。
「オ、オクタビアはボートレイ街の高級アパルトメントにいるはずだ…。それ以外は何も指示していない…」
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