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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第二十七話 おびき寄せられた人物

「向こうから来るように仕向けるって…どうするんだい?」
アルは言われたとおりに、自分の電伝虫とマリウスの電伝虫の番号をローとゾロに渡したが、ちょっと気弱そうに言った。
「僕の電伝虫からだと出てくれないかもしれないけど…」
「出なければ他の手を考えるさ。もしも繋がるなら、あんたの電伝虫を使ったほうが効果的だ。それと、おびき寄せる場所だが…どこか適当なところはねえか?この屋敷でもいいかもしれねえが」
「ここから馬で30分くらいのところに、ルナン先生の小さな別荘がある」
「よし…」
ローがアルの電伝虫に番号を入力しながら言った。
「おびき寄せるネタは…そいつが興味があることなら何でもいい。今回の場合、こういうのはどうだ?」
プルプル…と電伝虫が鳴る。そして、ガチャっと繋がる音がした。
ローは目でゾロとアルに合図した後、一呼吸置いてから話し出した。
「国王のマリウスか?」
「…」相手は無言だった。
「ドナリス公の身柄に興味はねえか?あるならルナンの別荘に今すぐ来い」
「………ガチャ」相手は無言のまま電伝虫を切った。
ゾロが口を開いた。
「とりあえず誰かには伝わったな」
アルが眉を寄せながら言った。
「これが思ってもみなかったところに伝わって、大ごとになったらどうするんだ?」
「その時はあんたが何とかしてくれ。酔っぱらってふざけてたとか、どうとでも言えるだろ」
3人は急いでルナンの別荘に移動することにした。可能性としては低いだろうが、相手のほうが自分達よりも先に別荘に着いてしまってはいけない。
アルがリュシーに今夜は3人だけでルナンの別荘で過ごすことを伝え、別荘に持参するための飲み物とサンドイッチ等の食事を用意するように言った。
「供の者は不要だ。友人だけで気楽に過ごすからね」
アルが笑顔でこう言ったので、使用人達は素直に従った。
15分後、使用人達が用意してくれた豪華な食事が入ったバスケットとカンテラを持ち、3人はルナンの別荘に向けて出発した。

ツールーズ城とルナンの領地の間にある森の中に、20年程前に大商人が別宅として建てた、小さくはあるが重厚で豪奢な屋敷がある。
時を経て所有者が変わり、現在の主人はこの家には週に1日か2日くらいしか来ない。
住み込みの使用人が2人いるが、主人からは個人的なことには深く係わらないように言われていたし、主人からの扱われ方も同じだった。
だからこの日の夕方、主人が珍しく客人を伴って来訪し、夕食を運んだ時に給仕を断られても、使用人達は別に驚かなかったし、ついさっき、主人が客人を屋敷に残して外出してしまった時もそうだった。
主人からの命令で客人に寝室を案内したが、客人は室内にもかかわらず帽子を目深にかぶり、一言も口を利かなかった。
使用人はふと好奇心を覚えたが、すぐにこの屋敷の主人が持つ、薄ら暗い恐ろしさを思い出した。この使用人は、自分達の主人は裏の社会の人間なのではないかと秘かに推測していた。
それで「御用がありましたらいつでもお呼びください」と客人に言い残し、できるだけ早くその場からいなくなることにした。

ローとゾロとアルは、林の中の細い小路を馬をやや急がせながら進んでいた。道を知っているアルが先頭になって、カンテラを高く掲げながら進んでいく。やがてルナンの別荘に到着すると、3人は馬から鞍を外して水を汲んでやり、自分達も別荘の中に落ち着いた。
その別荘は木で造られた田舎風の建物で、居間と台所と二部屋の寝室だけの小さな建物だった。
ランプのロウソクに火を灯して回りながらアルが言った。
「この別荘も懐かしいな。昔はよく来てたんだけど」
使用人がバスケットに詰めてくれた飲み物や食事をテーブルに広げ、3人はマリウスが来るのを待った。
一時間程経った頃、外で何かの気配があった。馬のブルル…という鼻息も聞こえる。
「来たようだぜ」とゾロが二人に言った。
アルがドアを開けて外に出ようとしたが、ローが「待て」と制止して、自分が先に表に出た。ゾロも相手から発せられる敵意を感じ取ったのか、アルの前に立った。
「あんた、国王のマリウスか?ランプの光が当たるところまで近づいてきて欲しいんだが…」
ローが相手に声をかけた。
相手は暗闇の中からゆっくりと近づいてきた。その顔を見て、アルが固い声で言った。
「貴方は…ヴァレリーですね。なぜ貴方がここに?」
「なぜって、ドナリス公の身柄に興味があったら来いって言うからさ…俺はお呼びじゃなかったのかな」
ヴァレリーは何かを含んだ笑みを3人に向けた。

居間のテーブルにアルとヴァレリーが向かい合って座り、ローとゾロはアルの両側に座った。
ヴァレリーの顔立ちがなんとなくアルに似ていることにローとゾロは気付いた。しかし、アルと違って、どこか危うい雰囲気がある。年はヴァレリーのほうがいくらか上だろうか。
「マリウスは今どこに?」
アルが訊ねると、ヴァレリーは笑いながら質問をかわした。
「ろくな挨拶もなしでいきなりそれはないだろう?積もる話も少しはあるだろうに…。国の話しを聞かせてくれ。父上と母上は元気かい?従弟殿」
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