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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第二十六話 国王の失踪

タビーの声が大きかったので、会話は筒抜けだった。
「アル、久しぶりね。あなたには聞きたいことがたくさんあるわ!」
「僕もだよ。愛しいはとこ殿」
「あなたはどうしてルナン邸にいるの?…もしかして、マリウスが今どこにいるのか、知っているの?」
「マリウスはツールーズ城にいないのかい?」
「本当に知らないの?…それとも、とぼけてるの?」
「この件には僕の関与はない。僕に隠し事をしているのは、むしろ君達のほうなんじゃないのか?」
「その言い方は何なの?アルはいつもそうよ。昔から、大事なことは私達には何も言わないで、自分だけでいろんなことを決めてしまっていたわよね。私達のことをいつまでも子供だと思わないで!マリウスがおかしくなったのは、半分以上はあなたのせいよっ!!」
タビーは自分の頭の中でしか成り立たない理論を大声でがなりたてた。
アルは額の辺りに手を当てて、思わず出てしまった自分の失言を後悔した。これが大切なはとことの、3年ぶりの会話とは…、と。
ローとゾロも、変に緊張しながら二人の会話を聞いていた。
アルは一呼吸置いてから、電伝虫に向かって静かに言った。
「ルナン先生はそこにいる?できたら代わって欲しいんだけど」

ルナンによると、あれからルナンはツールーズ城の一歩手前でタビーの馬車に追い付くことができて、城には二人一緒に入ることができたらしい。
しかし、二人を待っていたのは、マリウスの側近達の青ざめた顔だった。
「国王陛下がどこにもいらっしゃいません…」
タビーがこれからマリウスのもとに向かうことは、事前にルナンが伝えている。自分の妃が城に来ようとしているのに姿をくらますなど、夫としての誠実さに欠ける行動である。
「オクタビアに会うのが嫌で、どこかに逃げてしまったということでしょうか」
アルは電伝虫に向かって、皮肉なのか別の意味があるのか、どちらともつかない感じで言った。これに対して、ルナンがどのような反応をしたかは分からない。
マリウスの愛馬が厩舎からいなくなっており、厩舎で働いている者達に尋ねたところ、お茶の時間頃に「すぐに戻る」と言い残して出て行ったらしい。
マリウスの両親が住む屋敷や、ごくたまにお忍びで行くパブや料理屋等にはすでに確認を取っており、最後に可能性は薄いと思いながらも、ルナンの屋敷に連絡を入れたということだった。
真面目なマリウスは、今までふらりと一人でどこかに行ってしまうようなことはほとんどなかった。
しかし、普段から気苦労の多い立場の、成人の男性である。何らかの理由で、自分の意思で外出したのであろうから、しばらくすれば自分で帰ってくる…事故に巻き込まれる等の想定外のことが絶対起こらないとは言えないが…と側近達は考えていた。
タビーは自分が帰国した理由を側近達に明かしていない。事情を知らない側近達は、国外にいるはずの王妃が突然帰ってきたことに驚き、国王にすっぽかされて荒ぶる王妃を横目に見つつ、今問題なのは国王の失踪そのものよりも夫婦仲のほうではないかと囁き合った。
「側近達はもうしばらくは静かに待つという方針だそうだ。まあ、それも間違いではないのだろうな。私達は独自に少人数でマリウスを探すということにしてある。こちら側の事情は伏せたままにしてあるよ」
ルナンはアルに現状を説明した。一時、ほんの少しだけアルの行動を疑ったルナンであったが、数年ぶりの会話で、幼い頃から生徒として見守ってきたアルへの信頼がよみがえっていた。
彼らは今のマリウスを放っておくつもりはなかった。マリウスは助けを求めているか、あるいは叱責して張り倒す必要がある。
「先生、オクタビアを見張っていてください。自分でマリウスを探しに行きかねない」
「そこまで軽率ではないだろう…」
時刻は午後7時半。大人が外出できない時刻ではないが、外は完全に暗くなっている。
「私のほうでも心当たりを探します」
「君こそ無理をしないように。時期国王という立場にあることを忘れるな」
アルとルナンはこれで会話を終えた。
アルは電伝虫を弄びながら、ローとゾロに話しかけた。
「心当たりと言ってはみたものの、実はそんなものがある訳じゃない。こういう場合、どうやって探したらいいと思う?」
「おれ達に聞くなよ…」
ゾロの呟きが耳に入っているのかいないのか、アルは二人に困った顔を向けた。
「僕はここへは本当に一人で来てるし、事が事だけに国にいる部下に探させるのもはばかられるし…。君達がマリウスを探すのを手伝ってくれると嬉しいんだけど…」
「…」
下手に出られて、ローとゾロは断ることができなかった。
「ありがとう、恩に着るよ。お礼は何なりと…とまでは言えないけど、できる限りのことはさせてもらおう」
ローがちょっと考えこみながら訊ねた。
「本当に心当たりはないのか?」
「残念ながら」アルが答える。
「ないなら…向こうがこっちに来るように仕向けることはできねえか?」
この案にゾロもニヤリと笑って同調した。
「なるほどな。おびき寄せ作戦か。国王は電伝虫は持って行ってるのか?」
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