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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第二十五話 アル

ローとゾロがルナン邸に到着すると、客間のソファにくつろいで座り、慈しみの微笑みをたたえたリュシーの給仕を受けながら、お手製のカスタードアップルパイを優雅にフォークで口に運ぶ、端正な容姿の青年の姿があった。
青年は座ったままローとゾロに声をかけた。
「このままで失礼するよ。バスコニア王国ドナリス公だ。お二人には私の部下がお世話になったようだね」
ルナンからあんな話を聞いた後だったので、暗く思い悩む青年のイメージがあったが、実際のアルは、柔らかな雰囲気の中にも強い精神力を感じさせる強烈な人物だった。
「隣の国の次期国王が、一人でこんなところにいていいのか?」
ローが探りを入れるように質問した。
アルはこれを、さらりと安全な方向の解釈に持って行った。
「一人で来たからって、別に誰かに叱られるような事はないさ。二人とも席にかけ給え。リュシーのカスタードアップルパイは絶品だよ」
「まあ、アル様ったら…」
リュシーの顔にぱっと浮かんだ恥ずかしそうな微笑みを、アルは当然のように、にこりと笑って受けとめた。リュシーはいそいそとローとゾロにもパイを切り分けた。
アルが口を開いた。
「ルナンと入れ違いになってしまった…オクタビアともだ。彼女は意外と行動が早かったようだね」
これを聞いてローとゾロは腹を立てた。
「人を死ぬ程の目に合わせて誘拐しようとしておきながら、ぬけぬけとそいつに会いに来たってのか?」
怒ったゾロが食ってかかったが、アルはカラカラと笑い飛ばした。
「それは悪かったと思ってるよ。でも、オクタビアは平気だったじゃないか。あの子は子供の頃から僕達3人の中で一番強かったからね!」
「~~~ッ」
二人は驚きすぎて何も言えなかった。冗談なのか、ひどく冷酷な性格なのか…。
アルは二人の反応に構わずに続けた。
「僕はね…、ずいぶん前からマリウスとオクタビアに会って話しをしたいと思っていたんだ。でも、大人になるとこんなにも自由が利かなくなるものなんだね…。お互いに忙しかったり他の理由があったり…結局、私は国を出てから一度も二人と顔を合わせていない」
「…」
アルはローとゾロに向かって静かに言った。
「君達は、僕らのことをどれくらい知っているのかな」
ここでアルがリュシーに下がるように言ったので、ルナン邸の客間は3人だけになった。

「最近のガスケーニュ王国の動きは異常だ。金とダイヤモンドの価格協定を破り、他の国と軍事同盟を結ぼうとしているなんて。まるで…バスコニア王国と戦争でもしようとしているようじゃないか」
アルは美しい眉間に皺を寄せた。
「伯父であるバスコニア国王も、訳が分からなくて警戒している。こういう時にマリウスと私的な繋がりが強い僕が動くべきなんだろうけど…公式の面会は全て断られてしまってね。非公式にいきなり訪ねていったこともあったけど、それも断られた」
アルはわずかに笑って、両手を広げるジェスチャーをしながら言った。
「そんな中で、オクタビアが海外訪問のために国を出た。それでオクタビアのほうに、国外で内密に接触しようと思ったんだけど…それも上手くいかなかった訳だ。これは君達のせいもあるのかな?」
笑いを含んだ、しかし鋭い目で見つめられて、ローとゾロは即座に否定した。
「いいや、それは絶対違う」
「そうだ。決しておれ達のせいじゃない」
「まあ、どうでもいいさ…。ところで、君達はかなり腕が立つそうじゃないか」
「まあな…」
何だろうといぶかしがりながらローとゾロが頷くと、アルは無邪気そうな笑顔を向けて、二人が驚くようなことを頼んできた。
「なら、マリウスかオクタビアを、私のところにさらってきてくれないか?」
「それだよ、それっ!!あんたのそういうとこが誤解を招いてんじゃねえのか?!」


アルが窓の外を見ながら言った。
「やっと日が暮れたね。オクタビアとルナンはツールーズ城に着いた頃だろうか」
「さあな…」
ローとゾロが静かに答えた。
「二人がツールーズ城に着いたタイミングで、マリウスに電伝虫を入れようと思っている。このままでは駄目だからね」
「あんたも苦労してるって訳か」
アルは目を細め、ちょっと遠くを見ていた。
「僕達3人の中ではね、マリウスが一番我慢強い性格で、勉強の成績も一番良かった。運動はちょっと苦手だったかもしれないけど…でも、乗馬は得意だったな。オクタビアが剣の修練に一生懸命に励んだのは、マリウスを守るためさ」
「そうなのか?」
「僕は二人の一つ年上で、マリウスとオクタビアは同い年だけど、小学生くらいまでは女の子のほうが力が強いだろう?マリウスは、3人の中で一番小さい弟みたいな扱いだったんだ」
客間にはしんとした空気が流れていた。それを一本の電伝虫が打ち破った。
ドアをノックする音が聞こえて、リュシーが顔を出した。
「お話し中、失礼いたします。アル様、オクタビア様から電伝虫が入っております」
「オクタビアから?」
アルはちょっと驚いたようだった。自分がルナン邸にいることをオクタビアが知る筈はない。
「それが…初めはここにマリウス様が来ていらっしゃらないかと尋ねられまして…」
「マリウス?」
アルは電伝虫に出た。
「オクタビア、久しぶりだね」
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