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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第二十四話 3人の幼馴染み

人払いをした応接室で、ルナンは低い声で言った。
「あの方は、このガスケーニュ王国の王妃オクタビア様だ」
「アイツの命を狙っているのは誰だ?」
ルナンの心臓を指先で放り上げては受け止めることを繰り返しながら、ほぼ無表情でローが訊ねた。
「まさか命まで狙っているのではないはずだ…王妃を誘拐しようとしていたのは、バスコニア王国のドナリス公だ。王妃と国王の幼馴染みの…」
「詳しく話せ」

ルナンは自分でも意外なくらいに饒舌に話した。
バスコニア王国ドナリス公アルは、もともとはガスケーニュ王国の前国王の弟の子息で、前国王の王子マリウスの従兄である。ちなみにオクタビアは母親が前国王の従姉で、マリウスとアルのはとこにあたる。3人は年齢が近いこともあり、子供の頃は宮廷内で仲良く育った。
アルが18歳の時、隣国のバスコニア国王に養子として迎えられ、爵位を得てドナリス公となった。ゆくゆくは国王の座に就くとされている。
前王弟妃であるアルの母は、バスコニア国王の妹だった。つまり、アルとバスコニア国王は、甥と伯父の関係にある。
後継ぎのないバスコニア国王が、甥のアルを養子に望んだこと自体は、別に不自然なことではない。
しかし、この1年前にマリウスとオクタビアの婚約が発表されていたことから、人々はこれについて好き勝手なことを噂し合った。

…マリウスとアルとオクタビア。仲の良い3人の幼馴染みの恋物語。恋に破れた王弟子息は隣国に去り、いずれその国の王となると言われている…

3か月後、マリウスとオクタビアは婚礼を挙げた。二人とも17歳だった。
「マリウスとアルが何かと比べられるようになったのは、この頃からだったろうか。それに…」
2年前、病弱を理由に前国王が退位し、マリウスが国王となった。
実は、オクタビアの存在も、ある政治勢力から重要視されている。彼らは王家の本流はオクタビアだと主張していた。
なぜなら、3代前の国王の長子であったオクタビアの祖母は、第一位王位継承者として即位したが、出産で命を落とした。赤ん坊は生き延びたが、王位は亡くなった女王の弟に移り、女王の子や孫に王位が戻ることなく現在に至っている。
「これは亡くなった女王の夫であるサンセ公が、自分の娘が気苦労の多い立場になるのを嫌がったのも一因だと言われている。しかし、それでは納得しない連中もいるのだ」
マリウスとオクタビアの婚姻後、その勢力から、この夫婦のどちらが真の国王かと囁く声が出てきた。
現在のガスケーニュ王国は、若い国王が実力を発揮できる環境とは言い難かった。

その後、ルナンはタビーがプレシ公国から単身で戻ってきた理由まで吐き出した。
幼い頃は仲の良かった3人の関係は崩れ、今はそれぞれが自分が置かれた立場の中で苦悩していた。かつて3人の家庭教師を務めたルナンは、今回のことに関する自分の思いを、誰かに語らずにはいられなかったのかもしれない。
「君達なら、これをどうやって解決する?」
ルナンは半ば真剣に二人に訊ねた。
「離婚させよう」
「おいっ、おめえは自分がしたいこと言ってねえか?!」
ローの速攻の回答とゾロの突っ込みに、ルナンは整った顔をわずかに歪めさせて笑ったが、表情の暗さは消えなかった。
「金とダイヤモンドの協定破棄や軍事同盟のことは、確かめてみねえと本当のところは分からねえんだよな?」
ゾロが口を開いた。
「ならあんたもあの女と一緒に国王のところに行って、真相を聞き出したほうが良さそうだ。引き止めて悪かったな」
「ああ、そうだな」
ローも同意した。
「しかし、それにしてもよ…」
ゾロは大きく眉をしかめて、思いっきりぞんざいに言った。
「おれには難しいことは分からねえが、つまり、噂や評判を気にするあまり暴走して、自分の国がどうにかなっちまうようなことをしでかしかけてるってことか。もしかすると、隣の国に行った奴も同じか?」
平たく言えば、ゾロの言う通りだろう。
「いい加減にしろって説教しとけっ。オッサンはそいつらのセン公だったんだろ」
ゾロに一喝されて、ルナンもやっと少し笑った。
「約30分のロスか。別にたいしたことねえな。あんたはさっさと行ったほうがいい」
ローがルナンに心臓を返しながら、しれっと言った。

ルナンは馬場から新しい馬を借りて出発した。
残ったローとゾロは、しばらく無言で馬場の前に立っていた。
「あのオッサンと一緒に行かなくて良かったのか?」ゾロがローに言った。
「さあな」
「これからどうする?」
「あのオヤジの家に、あの女のカスタードアップルパイを食いに戻るって手もあるぜ」
出発前、リュシーが二人に手製のカスタードアップルパイをぜひ食べて欲しいと語ったのだ。
「お前マジかよ…。ん?」
馬場で働いている少年が二人のほうに走って来た。手に電伝虫を持っている。
「伯爵様のお屋敷から電伝虫が入ってます」
「伯爵って誰だ?」
「ルナン様です…」
二人から出た質問が意外だったらしく、少年はちょっと困った顔をしながら答えた。
「あのオッサン、伯爵だったのか」
「伯爵様はもう出られたって言ったら、あなた方でもいいって」
「? 一体何だ」
ゾロが電伝虫に出ると、相手はリュシーだった。ゾロは「うっ」と一瞬悲鳴を上げたが、幸いにして聞こえなかったらしい。
「すぐに戻ってきてくださいませ。お客様がお待ちです」リュシーは特に慌てた様子もなく話した。
「客?」
「はい。アル様がいらっしゃっています」
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