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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第二十二話 ルナン邸にて

ローとゾロは無言だった。
「でも、二人にはとてもお世話になったから、お礼をしなければなりません」
ルナンはタビーとローとゾロを交互に見ながら、さも親切そうに言った。
「分かった。二人をこの屋敷で歓待しよう。しばらく滞在してもらって、ゆっくり楽しんでいってもらえばいい。それから君がお世話になった報酬も支払う必要があるな」
これにゾロが噛み付いた。
「礼や報酬なんぞ要らねえ。お…」
「おれは有り難く受け取るぜ」
即座にローがゾロを遮った。
「もともとおれがボディガードになったのは、アンタへの非礼の詫びだったからな。アンタがいいなら、別にそれでいいさ」
「ロー、お前…」
信じられないという顔をして、ゾロがローを見る。だが、すぐにゾロは口をつぐんだ。
「二人とも、今まで本当にありがとう。言葉では言い尽くせないくらいに感謝してるわ」
タビーは口元だけでにっこりと笑って二人にお礼の言葉を言うと、ルナンに向き直ってこれからのことを話し始めた。
「私はすぐにでも出発したいと思っています。ルナン先生、少しお話しをさせてください。ロー、ゾロ、私達はちょっと失礼するわ」
「二人は少しここで待っていてくれ。屋敷の中を使用人に案内させよう。それではまた後程」
こんなふうに、いささか一方的に話しを終わらせて、タビーとルナンは慌ただしく出て行った。
ローとゾロは客間に取り残された。

タビーとルナンは、急いで書斎に移動し、小さなテーブルに向かい合って座った。
公式には、タビー…ガスケーニュ王国のオクタビア妃は、3か月前、夫であるガスケーニュ国王マリウスの叔母の嫁ぎ先であるプレシ公国の建国80周年記念式典に、多忙な国王の名代で出席するため、この国を出発した。現在は式典出席を終え、友好国を訪問がてら外遊している最中のはずだった。
「オクタビア、なぜ今君がここにいるのか教えてくれないか」
ルナンはタビーの顔をじっと見ながら、静かに訊ねた。タビーも静かに答える。
「プレシ公国の式典に出席した後、一人で戻って来ました。その後の予定はすべてキャンセルしています。供の者達は全員プレシ公国に残しました」
「理由は?」
「現状のまま友好国訪問を続けることはできないと判断しました。…ルナン先生、マリウスは金とダイヤモンドの取引価格を一方的に引き下げようとしているようです」
金とダイヤモンドは、ガスケーニュ王国バスコニア王国の主要輸出品である。両国は、今まで仲良く金とダイヤモンドの対外価格を話し合いで決めていた。マリウスはこの価格協定を一方的に破ろうとしているらしい。
「それに、ある国と軍事協定を結ぼうとしているという情報もあります。私の外国訪問は、これらの根回しと思われたのかもしれません。もしかすると本当にそうだったのかも…。式典出席の後、不審者に連れ去られかけました」
ルナンは苦い声で訊いた。
「つまり…バスコニア王国の犯行ということか?」
「バスコニア王国というより、アルが個人的にした事のようです」
今回のタビーの外国訪問は、遠方かつ半年という長期間であったため供の人数も多かった。その中に、バスコニア王国ドナリス公であるアルと通じていた者がいたのだ。この者は、自分はタビーの外国訪問の供として一緒に行動し、自分の部下に王妃一行のあとを付けさせ、タイミングを見計らって誘拐の実行を指示していた。
誘拐が失敗した時、プレシ公国の協力もあって、実行犯を取り押さえることができた。そして尋問の結果、タビーはアルの犯行だけでなく、マリウスの計画をも知った。
タビーはすぐにマリウスのプライベート電伝虫に電話をかけた。しかし、マリウスの答えは、タビーをさらに戸惑わせるものだった。
「君は何も考えなくていい」
マリウスはなぜこれしか言わないのだろう。今は話せないけど、何か事情があるということだろうか。それとも…。
「私はマリウスに会って、直接話しをしなくてはいけません」
タビーは苦しそうに顔を歪めて言った。
「マリウスに君がこれから会いに行くことを連絡したほうがいいだろうか」
ルナンも困惑した表情をしていた。
「黙っている訳にもいかないでしょう」
「…そうだな。私も同行しよう」
タビーが着替えや休憩を不要としたので、二人はできるだけ早く馬車で出発することにした。
タビーは、ローとゾロに会わずに行くつもりだった。何をどこまで説明したら良いのか分からなかったし、どちらにせよ、ここから先に彼らを立ち入らせる理由はない。私もここからはタビーではなくオクタビアなのだ。
しかし、タビーは心の中で考えていた。これほどまでに二人に恩を感じながらも、切り捨てるように置き去りにして、先に進もうとしている自分は何なのだろうと。

客間でほおっておかれているローとゾロのところに、さっき裏庭で会ったリュシーがケーキとお茶のお代わりを持ってやって来た。
ゾロはむっすりとしていたが、ローは愛想良くリュシーに話しかけた。
「この屋敷に勤めて長いのか?」
リュシーはローにちらりと視線を向けた後、穏やかな口調で質問とは全然関係ないことを言った。
「タビー様は、ご自分の旦那様に会いに行かれました」
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