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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第十五話 ヒッチハイク

「しばらく休憩できるな」
長い座席の背もたれに寄りかかり、手を頭の下で組んだ姿勢でくつろぎながら、ゾロがローに言った。
さっきのゾロの逆走ですっかり力が抜けてしまったローは、成り行きと自分の心の内に身を任せることにした。別にタビーに会わなくてもいい。彼女の安全を確認したらサニー号に帰ろう。

今、二人が乗っているのは、メンテナンス用の列車である。普段は線路の安全確認を行ったり、途中駅に必要な物資を配送したりするのに使われている。乗客を乗せるための列車よりも武骨な外見をしていて、今は後ろに連結する車両がないので、先頭部分だけで走っている。
線路の上を走っていたゾロとローは、列車同士がすれ違うために一部だけ二本作られた線路の上で、このメンテナンス列車が休憩しているのを発見した。そして、できる限り友好的な方法で乗っ取った。二人はこれを「ヒッチハイク」と言うだろう。
メンテナンス車の運転士は、筋肉質の中年の男性で、「くそっ」と一回悪態をついたが、それ以上の抵抗はしなかった。列車に乗せてやりさえすれば、自分の身に危害が及ぶことはないらしいと判断したようだ。
「できたらひとつめの停車駅に着く前に、前の列車に追い付きたいんだが…」
ローが運転士に言った。
運転士は横目でローをギロリと睨んでから、ぶっきらぼうな口調で答えた。
「無理だ。こっちのほうが軽いから少しはスピードが出るが、それでも四つめの駅を過ぎてからだろうな」
ローがなぜこんなことを気にしているのかと言うと、タビーがどの駅で降りるのか分からないからである。わざわざ終着駅行きに乗ったということは、終着駅近くまで降りないだろうとも考えられるたが、人目を避けるために乗客が少ない始発を選んだ、またはローから逃げるために突発的に乗り込んだとも考えられる。だとすると、駅に到着するごとに、何らかの方法でタビーが降りたかどうか確認しなくてはならない。
「駅に着いたら、少しの間停車できるか?」
「言われなくても、燃料の補給に停まらなくちゃならないさっ」
ローの乗っ取り犯らしからぬ要求に、運転士は早口に答えた。

約1時間後、メンテナンス列車はひとつめの駅に到着した。ローとゾロはできるだけ目立たないように列車を降りた。そして、ローが何食わぬ顔で駅舎に入って行って、中にいた駅員に訊ねた。
「さっき着いた列車から降りた乗客の中に、白いニット帽をかぶった若い女がいなかったか?」
駅員はちょっと考えるような顔をしてから、見なかったと思うと答えた。
ローがメンテナンス列車の側に戻ってくると、燃料の補給を終えたらしい運転士が、ニヤニヤ笑いながらローを待ち構えていた。
「なるほどそういう訳だったのか。そういうことなら分からんでもない」
地獄耳か、とローは驚いた。運転士はウンウンと頷きながら続ける。
「さっきの駅員には、アンタらのことは黙っておくように話しておくさ…」ここで駅舎に向かって、運転士が大声で怒鳴った。
「おい、客の中にこいつらが探してる女がいなかったって言ったのは本当か?」
さっきの駅員が大声で答えた。
「いなかったよ。さっきの列車から降りた客は11人。お馴染みさんばかりだ」
「ありがとよ!こいつらはそういう訳らしいから見逃してやってくれ。女の尻を追っかけてる理由を、詳しく聞き出しておくからよ!」
「おうっ、楽しみにしてるぜ!」
その後すぐにメンテナンス列車は発車した。
「次の駅まで1時間はかかる。その次の駅も1時間。その次は4時間だ。ここで4時間もかかるのは、山あいで人も街も少ないからだ。アンタらはこの土地は初めてか?」
饒舌に変わった運転士は、これからの道のりをざっと説明してくれた。
「ああ、今朝マルゼイヨ港に着いたばかりだ」
運転士の質問にはゾロが答えた。
「この鉄道は内陸部と港を結ぶために作られたもので、三つの国を通っている。もともとは内陸部の国が自分達のために作った鉄道だ。内陸部はダイヤモンドと金が採れるから金持ちなんだ」
「内陸部はボルドール地方って言うのか?」
ゾロが、ロビンが説明してくれたことを思い出して質問した。
「ああ、そうだ。この鉄道でいうと、ボルドール地方の手前にあるのがバスコニア王国、奥にあるのがガスケーニュ王国だ。どっちも山あいの小さい国だ」
「終点のツールーズはどの国だ?」
「ガスケーニュ王国だ」
やがて、ふたつめの駅に到着した。ここでもタビーらしき人物は降りていなかった。ひとつめの駅と同じように、この駅でも運転士が駅員に話しをつけてくれた。
次の三つめの駅と、四つ目の駅も同じだった。ここまでで7時間以上走ったことになる。運転士は四つ目の駅の駅員に訊ねた。
「前の列車は定刻通りに出たか?」
「ああ、ほぼ定刻通りだ」
「ありがとよ」
そして、ローとゾロに向かって言った。
「1時間休憩だ。列車には五つ目の駅までに追い付けばいいだろ」
そして、車両内のゾロが座っていた長い座席に寝そべって、仮眠を取り始めた。
しかし、運転士はそう長く休憩することはできなかった。駅員が大急ぎでやって来て、窓から車両の中に向かって怒鳴った。
「すぐに出発してくれ!倒木で列車が立ち往生してるそうだ」
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