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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第七話 ビムビムの実の能力者

夜空に瞬く満天の星のもと、サニー号の甲板で素っ頓狂な声があがった。
「内側から鍵がかけられてるって?!」
「ええ、やられたわ」
サニー号では、見張り役のブルックとジンベエ以外は、それぞれ寝る準備をしようとしている頃だった。ロビンとナミもそろそろ女子部屋に引き上げようとしたのだが、女子部屋は内側から鍵がかかっていて、二人は中に入ることができなかった。
「そんなもん、ドアか壁をぶっ壊しゃいいじゃねえか」
「確かにそういう手もあるわね」
あの後、病人のところに軽い食事を運び、しばらくしてから食器を下げて(ほんのわずかしか手が付けられていなかったが)、チョッパーが再び診察した。この時点でも、熱はさらに上がっていた。
女は一貫して大人しかった。言われるままに診察を受け、薬を飲んだ。そして、熱が高い割には凛とした態度を崩さなかった。
「警戒されてるってことね。無理もないけど」
チョッパーが医師としての意見を言った。
「熱が結構高いから苦しいはずだ。本当は誰かが側に付いてたほうがいいんだろうけど、警戒されてるんなら、無理に近づかないほうが向こうも安心して休めるかもしれない」
一同で話し合った結果、「しばらくほっとこうぜ」という結論に至った。明日の朝になっても病人が部屋にこもったままだったら、ロビンがハナハナの実の能力を使って、こっそり女子部屋の中に顔を出して病人の様子を伺う。場合によっては、内側からかけられた鍵を開けて、チョッパーが中に入る。
「そうと決まったら、ナミさんとロビンちゃんが今晩寝られるように、どこかの部屋にベッドを入れるぞ」
「測量室兼図書室が良いかしら」
ここはナミが普段から使っている部屋だ。
「どこのベッドを持ってくる?」
「意外と手のかかる客だな」
ここでチョッパーがポツリと言った。
「本当は病人のほうを医療室に移せればいいんだけど…」
その場にいた全員がチョッパーを見た。
「確かにな」
「そのほうが簡単だしな」
「でも無理だろ。力づくで部屋に押し入って引っ張り出す訳にもいかねえしよ」
「別にそんなことしなくても、外から大声で呼んだり、ドアをバンバン叩いたりすりゃあ出てくるんじゃねえのか?」
「ちょっと、相手は病人よ」
「じゃあ、今すぐロビンにドアの鍵を開けてもらうとかよ」
「それはあまり気が進まないわ」
「こんなことになる前に、さっさと病人を医療室に移動させれば良かったな…。医療室のほうが看病するのにも何かと便利だし…」チョッパーも一人反省点をつぶやく。

各々が自分の意見をワイワイギャアギャアと言い合っている中、ロビンはみんなには黙って、ハナハナの実の能力でこっそり病人の様子を覗いてみた。
女はベッドで眠っていたが、とても苦しそうな様子だった。額や首に大量に汗をかき、呼吸が浅くて速い。顔をしかめながらブツブツとうわ言をつぶやいている。
「大変よ。お客様はとても具合が悪いみたい」
「なに?!」
「ちょっと強引だけど、今すぐドアを開けるわ。医療室に移しましょう」
ロビンの突然の方針転換に、事の重大さを感じ取った一同は、右往左往の大騒ぎになった。
「チョッパー、相手はレディだ。お前がおんぶして運べ!」
「タンカを持ってきたほうがいいんじゃないか」
「誰か医療室のベッドに布団を敷いといてくれ~」
「それは私がやるから慌てないで!」
病人の移送という慣れない作業に、全員が大慌てしている。
その時、甲板の隅に座ったまま今までの会話に一言も口を挟まなかったローが、ふらりと立ち上がって言った。
「俺に任せろ…シャンブルズ!」

すると、ローの声とほぼ同時に、毛布にくるまった病人の姿が甲板の上に現れた。
「シャンブルズで瞬間移動させたのか!」
「なんつー強引な…」
「医療室のベッドの準備がまだできていないのに~っ!」
甲板の上で横向きに寝そべっている状態の病人は、自分の力でうつぶせの体勢になり、甲板に両手をついて上半身を起こした。やはり相当具合が悪いらしい。チョッパーが病人に駆け寄った。
「おい、具合はどうだ?立てるか?」
病人は一瞬自分が置かれた状況を理解できなかったようだが、すぐにローによって瞬間移動されたのだと気が付いたようだった。そして震える声で怒りをあらわにした。
「なんてことを…無礼者!!」
女の顔は、怒りによって眉の間と鼻の付け根に凶悪なシワが深く寄せられ、目の色までもが変わっていた。この豹変ぶりは、その場にいた全員の背筋を瞬間冷凍するのに十分過ぎる程のものだった。
「違うんだっ、具合が悪そうだっていうんで、それで…」
「ひええ~、こ、怖い~」
一同は、逃げ出すこともできないくらいに震えおののいた。
「頼むからそんなに怒らないでくれぇぇ」
「だからこの女は弱くなんかねえって言ったじゃねえかっ」
あんなにも上品で、たおやかで、はかなげだった女性が、鬼のように怒り狂っている…船ごと地獄に落とされてもおかしくないくらい、激しく怒っている!

次の瞬間、女の目から赤い光線がほとばしった。
「!!!」
女の目から発せられた赤い光線は、女を瞬間移動させた張本人であるローの肩から胸にかけてを一刀両断した。
「トラ男~っ!!」
大量の血が飛び散り、ローは無言でその場に倒れた。
「そのビームはもしかして…」
「ひょっとして…、ビムビムの実の能力者かっ!?」
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