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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第一話 ローは銀行へ

麦わらの海賊団は、とある海域の、とある島に停泊していた。なぜかハートの海賊団の船長トラファルガー・ローが行動を共にしている。何らかの理由で、これからの航海に同行することになったらしい。
一行は、北に向かう予定だった。航海の前に食料と必要なものを調達する必要があるため、交易が盛んなこの島の港に立ち寄ったのである。
この島はモコモ公国やワノ国と違って平和な島だ。
一行のこの島でのスケジュールは、買い出しにだいたい一日か二日くらい、街の探索と骨休めと自由時間には一日か二日か三日か四日くらい…の予定だ。最終的に何日くらいこの島に停泊するのかは、今のところは分からない。
今日も朝早くから、コックは新しい食材を求めて、船大工は自分のボディ用の部品のスペアの補充、船医は薬、狙撃手は火薬、楽師はバイオリンの弦。それからこの土地ならでは名物と酒、新鮮なフルーツ。みんなそれぞれの目的で町に入っていった。

トラファルガー・ローは、賑やかな通りを一人で歩いていた。この島にある大手銀行に立ち寄らなければいけない。手持ちの金がなくなったのだ。麦わらの一味は、自分達のお宝が船底の倉庫にあるから、自分の分け前分をすぐに取り出すことができるが、ハートの海賊団であるローは、麦わらの一味の財宝を使う訳にはいかない。
昨日の夜、麦わらの一味に借金を申し込んだところ、法外な利息を要求された。
「悪いが3万ベリーほど貸せ。後で10倍にして返す」
「冗談言わないでよ。そんな安い利子で貸せる訳ないでしょ。少なくても100倍にして返してもらわなきゃ割に合わないわよ!」
電伝虫によるオンラインで、世界中どこからでも預金を引き出すことができるシステムを持つ銀行というものがこの世界にも存在し、この島にも、今歩いているこの通りの先にあるはずだ。
ハートの海賊団は、自分達の財産を世界中の複数個所に隠し持っている。ひとつは、どんなにダーティーな資産であったとしても、万全なセキュリティ下での保管が保障されている某国の貸金庫に、少々の金塊。もうひとつは、表向きは小さな農村で暮らす普通の農夫だが、実は凄腕の元用心棒であった男が人知れず経営する「預り屋」に、いくつかの宝石類。他にも、シャボンディ諸島で仲間になったジャンバール元船長が昔から馴染みにしていた、怪しげだが信用のおける質屋に、質流れ厳禁として美術品を数点、等。
そして、普通の人が利用している一般の銀行にも、こっそりと口座を作って、それなりの額の現金を預けていた。これが意外と便利で重宝している。ただ、海軍にバレたら口座を封鎖されるかもしれない。
ローが目指す銀行のある通りは、交易や金融を営む商人たちが建てた石造りの高い建物が立ち並ぶ、やや堅苦しい雰囲気ながらも賑やかな通りだった。真面目で堅気の交易商や金融商が、ネクタイにスーツという服装で街を忙しそうに歩いている。

そんな、いわゆるビジネス街を行き交う商人たちの中に、顔の周りを覆い隠せるほどの広いツバのある帽子(女優帽とよばれるやつである)を目深にかぶった若い女がいた。
地味な濃いグレーのふくらはぎ丈のワンピースに、地味で当たりさわりのないデザインのベージュのカーディガン、地味なバッグ、地味なストラップ付きのパンプス。彼女のいでたちで多少人目を引くとすれば、かぶっている大きな帽子だけであろうが、それも特に問題という訳ではない。
この通り一画にいるのは、お堅い交易商や金融商ばかりではない。これらの商人たちを相手に商いをする食堂や喫茶店、昼食時になると路上に出現する弁当の屋台、文房具屋や雑貨屋等の店、郵便や物品を輸送する荷馬車。
それに、今日のローのように、銀行の顧客もこの通りにやって来る。だからその若い女も、特段目立っていた訳ではなかった。
この先で二人の男を追い越すまでのことではあるが…。

ローは前方から、腰に剣をさした長身の男が歩いてくるのを確認した。
「おーい、トラ男じゃねえか。この辺りは道が入り組んでいて迷っちまった。サニー号まで連れて帰ってくれ」
その男とは、麦わらの一団の剣士ゾロである。ちなみに、この男が道に迷ったのは道路のせいではない。
「なぜこんなところにいる。今日はゾロ屋が船番じゃなかったか」
「フランキーがさっさと帰って来たから代わってもらったんだ」
「連れて帰るのはいいが、俺はこれから行くところがある。時間はそんなにかからねえと思うが」
「構わねえよ。俺はそこいらで時間を潰して待ってるからよ」
不敵な笑みをニヤリと浮かべてこう豪語する剣士に、ローは、コイツを一人でどこかで待たせておいて、無事に再会できるのだろうかと、ちらりと考えた。まあ、もしも今日またコイツが迷ってどこかに行ってしまっても、船が出発までに回収できれば問題ないのだが。
「どこかに良い待ち合わせ場所はあるか」
「さっき通ってきたところに川と橋があった」
「どっちの方向だ」
「…」
その時、カタリとローの肩から鬼哭が転がり落ちた。後方から歩いてきた通行人の女が、「きゃっ」と小さな悲鳴を上げる。
「おっと、すまねえ」ローが反射的に振り返って通行人の女に謝った。
「怪我はねえか?こいつがうっかりしてたせいで悪かったな」ゾロも一緒に謝る。
「いいえ、大丈夫です」
女の顔は大きな帽子に囲まれてほとんど見えなかったが、軽く頷き、口元がにこりと微笑んだのは分かった。歩を止めもせず、立ち止まっている二人の横を通り過ぎようとする。
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