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You Are My Sunshine

原作: Fate 作者: こさき
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first love

基本的には平和なカルデア。
だが、古今東西老若男女、実にバラエティ豊かな神霊や英雄が集まって大所帯となっている現在、生前の因縁やら記憶やら記録やらを起因とするトラブルは、大小様々常にどこかで起こっている。
ゆえに彼らを召喚したマスターのマイルームは、悩み相談という名の愚痴吐きに訪れるサーヴァントが後をたたない。

そんなわけで、本日のお客様である玉藻の前もまた、どうにも晴れない胸のモヤモヤをマスターにぶつけ・・・もとい聞いてもらおうとやって来た1人であった。

「へー。ゴールデンが酒呑ちゃんと?」
「えぇ・・・なんでも先日暴走しかけたのを止めてもらったそうで?その御礼を申し出たところ『それなら一緒に呑もう(※意訳)』と誘われたとかなんとか・・・。」

傾国の美女を目下悩ませている原因は、ロンドン以来何かと行動を共にしているゴールデンこと坂田金時と、彼とは浅からぬ縁で結ばれており、今なお複雑な関係を築いている酒呑童子の2人らしい。

「タマモちゃんの気持ちはわからないでもないけどさ・・・。でも、でもね?冷静に考えてみて?あのゴールデンだよ?ピュアという概念が現界して歩いてるみたいな存在だよ?どんだけ酒呑ちゃんがちょっかいかけようと心配するようなことにはならないだろうってほぼ断言できるというか、確かにあの2人の間に漂うお互いが特別感?他人が割り込めない感じ?はぶっちゃけエモいなって思うけれども!」
「え?」
「ああっごめんね?!最後のは日頃たまってたモノがつい噴出しちゃった。」
「イエあの、そうではなくてですね・・・私の気持ちとか心配するとか、マスターのおっしゃることがいまいちわからなかったもので、」
「うん?だってさっき、ゴールデンが酒呑ちゃんの部屋に行っちゃったって怒ってたよね?」
「それは、暇をもてあました女神の相手という大変名誉な役目を与えて差し上げようとせっかく足を運んだのに、先約があるなどと金時さんのくせに生意気なことを言うので・・・。」
「イヤでもそのゴールデンと酒呑ちゃんが2人っきりの密室で飲み会中という現在進行形の状況にも、なんというかこう・・・やきもきしてるわけでしょ?」
「やきもき?」
「あれ?」
「してるように、マスターからは見えてるんです?」
「まぁ、正直?」

その回答を受け、神妙な表情で黙り込んでしまった玉藻の前に、つられてマスターも難しい顔を作る。
英霊召喚システムの性質上一般的な恋人同士のように愛を誓い合うことは憚られるとしても、普段あれだけ堂々とイチャついているのだ。胸の内を言葉にして伝え合うことはなくとも、心は通じ合っているものとばかり認識していたのだが・・・。

「・・・言われてみれば、金時さんに対してとってもムカついている気がしてきました。」
「えっ。」
「金時さんの部屋からここへ来るまでずっと、なんだか面白くないような、どうにも心が晴れないような、いまいちスッキリしないような、微妙な気分でしたけど・・・これは金時さんへの怒り・憤りだったんですね!」
「うわ、ゴールデンごめん。」
「そう考えると、ここのところのあれやこれやがいろいろとしっくりきます。私ったら、崇め奉るべき信仰の対象をないがしろにして享楽に耽ようとする金時さんに、腹を立てていたのですね。」
「そ、そうかな?」
「そうです!金時さんは本当に、信者としての心構えがなっていなくて困ったものです。日輪色の髪といい大空色の瞳といい、まさに私の為だけに生まれてきたような存在ですのに、まったく・・・やはりマスターにお話しして正解でした!」
「いやぁ?たいしたことは本当に言ってないけど、お役に立てたなら良かった・・・。」
「さすが私のマスターです。ありがとうございます!」
「どういたしまして。・・・ちなみに、ゴールデンの相手が酒呑ちゃん以外でも今と同じ気持ちになってたと思う?」

あれよあれよという間に自己完結させてしまったものの、自らの感情の根っこにあるものをきちんと把握しているようには思えない。そんな玉藻の様子にお人好しのマスターは、聞きたくもない質問をぶつけてあげることにした。
サーヴァントたちとの契約は、彼らの思想や精神までをも縛るものでは決してない。だから、当人同士が了承・納得してさえいれば恋愛だって自由だと思う。
ただし是非とも泥沼の愛憎劇は避けて欲しいし、ゴタゴタには巻き込まれたくないのが本音だ。

にも関わらず、戦闘等では非常に頼りになる反面、それ以外では不器用だったり不安定だったりぎこちなかったりする英霊たちを放っておくことが出来ない性分だからこそ、彼らから慕われ、信頼され、愛されるマスターたり得るのだろう。

「酒呑ちゃん以外、ですか?」
「そう。ゴールデンが人気あるのは知ってるでしょ?」
「子どもと動物には好かれてますねぇ。あとは脳筋同士気が合う方々とか。」
「それだけじゃないんじゃないかなぁ。ゴールデン優しいし、カッコイイもん。」
「はぁ・・・。」

理解しかねると言いたげに首を傾げる玉藻の前に、マスターはふっと口元を緩める。悠久の時を生き数多の経験を積んだはずの彼女が味わう初めての。なんとも甘酸っぱいではないか。

「な、なんですか?どうしてお笑いになるんです、マスター?」
「え~、タマモちゃんはかわいいなと思って?」
「みこっ?そ、それは確かな真実ですけれども。」

どうか妖怪大戦争に発展するような事態には陥らないようにと願いつつ、マスターはこのじれったい初恋たちの行方を黙って見守ることにしたのだった。
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