ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

雪解け

ジャンル: その他 作者: 水篶(みすず)
目次

雪解け⑵

前回のお話
庭に積もった雪を見た審神者は何かを思いついたように目を輝かせていた。
途中で清光、安定に出逢い、さらに和泉守兼定と堀川国広も合流する。何をしていたのか聞くが審神者は困ったような表情をする。そんな中、堀川は理解したようであり他の三振りに下がるよう伝え、堀川は審神者の手を引いて縁側を歩きだした…。


曲がり角から少し離れたところで
「よし、この辺でいいかな?」
と堀川が言った。そして微笑んだ。
「主さん、もしかして飛び込むつもりでした?」
「え?」
「主さん凄い雪降るの楽しみにしてましたよね?あと、雪が降ったら飛び込んで雪まみれになってみたいとも言ってましたよね?」
「え!?あ………うん。言いました。随分前に…」
言ったことを思い出し、恥ずかしくなった審神者は手で顔を隠した。
「あはは、思い出しました?」
「うん……よく覚えてたね。」
「はい。もし雪が降ったら主さんと一緒にやろうって決めてたので。」
「え?」
「よしっ、じゃあ行きますよ。」
「え?え!?」
審神者が状況を把握出来ず、焦っていると審神者の体がふわっと浮いた。
「わっ!え、堀川!?」
堀川が審神者を片手で簡単に持ち上げたのだ。
「ちょっ…どどどうしたの。お、重いから…降ろして…っていうか片手…。」
審神者は顔を真っ赤にして言った。
「全然重くないですよ。寧ろ軽いです。ちゃんとご飯食べてますか?」
堀川は微笑んだ。こんな近い距離だろうか。いつもより眩しく思える。そして堀川は言った。
「主さん、しっかり僕に掴まってて下さいね。」
「え?」
審神者は今だに状況を把握出来ずに混乱している。
そして片手に審神者を抱えた堀川は持ち前の機動力を活かし、走り出した。そして縁側の角まで来ると曲がらずにそのまま雪の方へ大きく飛んだ。
飛び上がる瞬間、審神者は堀川の服を強く握り、ギュッと目を閉じた。

清光達はいきなり飛び出してきた堀川と審神者に驚き、
「わっ!」「うお!」「うわっ!」
と、それぞれ声を上げた。



堀川と審神者は空高く飛び上がった。
風が冷たい。すると堀川が耳元で優しくささやく。
「主さん。目、開けて。」
審神者は恐る恐る目を開けた。
すると、
目の前にはまだ昇ったばかりの綺麗な太陽と、太陽できらきら光っている雪が遠くまで見渡せた。
辺り一面輝いている。
(きれい………)
心からそう思った。まだ夢の中にいるのだろうか。
そして堀川の顔を見た。綺麗な横顔、太陽でより輝いている大きな目。わぁと白い息をはき、笑っている。
審神者は彼の顔をみつめた。
(きれい………)
しかし体が下へ落ちていくのを感じ、我に返った。落ちていく恐怖を感じ、堀川の服をぎゅっと掴む。すると堀川は審神者を抱き寄せ、体をグルンと回し、自分の体を下にした。
そして二人は雪の上に落ちた。



ぼふっと音が聞こえ、頬に冷たいものを感じ、次第にその冷たさは体全体に伝わった。
審神者は恐る恐る目を開けると少し体が埋まり、雪を被った堀川の顔が目の前にあった。審神者と堀川は互いに顔を見合わせ、ふふっと吹き出した。笑いをこらえていたが次第に大きくなり遂に二人は口を開けて笑いだした。額をコツンと合わせ、思いっきり笑った。
真っ白な景色の中に二人の笑い声が響く。


落ち着いた二人は仰向けになり、はぁーと息を整えた。
「はぁーー……すごいきれいでしたね。」
「うん。とってもきれいだった…。感動しちゃったよ。ありがとう、堀川。」
「いえいえ!僕も主さんと一緒にこんな綺麗な景色を見ることが出来て良かったです。それに、僕も一度やってみたかったんですよね。あ、どうでした?雪に飛び込んだ感想は。」
「……最高でした。笑」
「あはは。僕もです。冷たいですけどね笑」
「確かに!冷たいけど、楽し……っくしゅん!」
審神者が小さなクシャミをした。そして震えながら
「そ、そういえば上だけ羽織って来ただけだった…」
と言うと、堀川は
「ちょっと!主さん、寝間着のままじゃないですか!そんな格好してたら風邪引いちゃいますよ!?」
「うぅ〜〜。だって……嬉しくて急いで飛び出てきちゃったから……」
「だってじゃないです!これ着てください。」
堀川がそう言うとジャージの上着を脱ぎ、審神者に着せた。
「まぁ、僕も気づかずに連れ出してしまってすみませんでした。でも、本当に気をつけて下さいよ。みんな心配しますから。」
色々言いながら堀川はジャージを審神者に着させ、チャックを上までしっかり上げた。
「ごめんなさい……。」
審神者は少し俯きながら言った。
「分かればいいんです。」
そう言って審神者のおでこをピンッと指ではじき、痛っと審神者が小声で言う。
「よしっ!じゃあそろそろ戻りましょうか。」
「そだね。」
審神者が立ち上がろうとすると、堀川が審神者を抱き上げた。
「わっ!!え!?ちょっと堀川!?良いよ良いよ。自分で歩くよ。」
審神者が抵抗するが、堀川はピシャリと言った。
「裸足の人が何言ってるんですか。」
「ご、ごめんなさい。」
審神者はおとなしくした。
確かに手足が赤くなっていた。しかし寒さなんて感じない。堀川がジャージを着せてくれたおかげでもあるが、彼の温もりが伝わり、寒くないのだ。考えて見ればこんなにも近く、長く彼と触れ合ったのは初めてかもしれない。急に恥ずかしくなった。

つづく
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。