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雪解け

ジャンル: その他 作者: 水篶(みすず)
目次

雪解け⑴


目を覚ますと外がやけに明るかった。
(あれ、寝すぎたかな…)
体を起こすと冷たい空気が一気に布団の中に入ってきた。
「寒いっ……」
この季節はなかなか布団から出られない。
冷たい空気のせいで少しだけ目が覚めたがまだ眠く、目は半分程しか開かない。
掛け布団にくるまり、ふぁ〜とあくびをしながら障子を開ける。
すると目に写ったのは、辺り一面真っ白な景色だった。
「わぁ………」
審神者は目を輝かせた。
雪は全てを覆い尽くし、まだ上ったばかりの太陽の光が雪に反射して余計に輝いてた。
そして、はぁーっと口を大きく開け、息を吐き出す。すると白い息が出た。
「わぁ………!」
息が白いと寒さを感じることができ、またいつもと違う環境にわくわくするのだ。
この景色で完全に目が覚めた審神者は寝間着のまま、上着を一枚手に取り、急いで階段を駆け下りた。途中でまだ他のみんなは寝ているだろうと思い、廊下は静かに歩いた。

縁側に出ると先程とはまた違う景色であった。
雪は縁側の少し下当たりまで積もっている。
審神者は屈んで手のひらを大きく広げ、優しく雪の上に置いた。そして、指が隠れるまでゆっくり押した。
ぱっと手を離し、
「冷たっ…」
と小さな声で呟き、雪の方へ視線を移すと綺麗な手形が出来ていた。審神者はふふっと笑った。そして何か思いついたのか目を輝かせ、いきなり立ち上がり縁側の角へ向かった。

<清光の~本丸紹介~!(ドンドンパフパフ~)>
この本丸の縁側は建物を囲むように一周ぐるりと続いていて、角は90°に曲がっているからよく鉢合わせて、ぶつかっちゃうんだよね~。まっ、鶴丸にとっては好都合らしくよく角を使って脅かしては怒られてるんだけどね…。いい加減辞めたらどうなんだろう。以上、清光の本丸紹介でした!それでは引き続き楽しんでね~ばいば~い。


縁側の角へと向かった審神者は人がいない事を何度も確認し、後ろに何歩か下がった。
そして、みんなを起こさないように足音は極力小さく、且つ勢い良く走り出した。
曲がり角まで差し掛かったその時、横から人影が見えたが審神者は止まれなかった。
「わっ!!」
驚いた声が聞こえ、そのままぶつかってしまった。審神者の体は雪の方へ押し出された。
しかし、誰かがギリギリの所で手を掴んだため何とか倒れずに済んだ。
「あっぶな……」
「痛たた…」
見てみると清光が焦った表情で手を掴み、安定が尻もちをついていた。
よっと清光が手を引き、審神者を助けた。安定も立ち上がり言った。
「あ〜びっくりした…。主、ごめんね。結構強くぶつかったけど大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。私も勢い良くぶつかっちゃってごめんね。安定、大丈夫?」
「あはは、大丈夫大丈夫。」
「こいつは丈夫だから平気だよ。」
と清光が口を挟む。そして審神者はもう一度謝った。
「本当にごめんね。清光もありがとう。」
「本当だよ…もう少しで雪まみれになるところだったんだからね。っていうかどうしたの?そんな勢い良く走って。」
そして安定が
「急ぎの用事?」
審神者はえーーーっと……と目を泳がせた。清光と安定は首を傾げ、不思議な顔をした。

審神者は相変わらずえっと……と困ったような表情をしていた。すると、2人がやって来た方から再び和泉守兼定と堀川国広がやって来た。
「おぅ〜おはようさん。何だ何だ、みんな集まって。」
「あ〜和泉守に堀川。おはよう」
「おはよ〜」
「加州さん、大和守さんおはよう。あ、主さんもおはようございます。」
「おはよう〜」
挨拶を終えると和泉守がぶるっと身震いし、
「うぅ〜さみぃな…お前ら、こんな所で何やってんだ?」
と聞くと安定が答え、続いて清光も答えた。
「僕たちが歩いてたら曲がり角で主とぶつかっちゃって。主、凄い勢いで走ってたから何か急ぎの用事でもあるの?って聞いてた所」
「そうそう。そんな速く走ったら角で曲がれないでしょっていうぐらい速かった」
「そんなに速かったんだ……大丈夫でした?」
「うん。僕は大丈夫。でも主はもう少しで外に放り出されるところだったけどね。」
「なるほどな…んでそんなに急いで何処に行くつもりだったんだ?…まさか!敵襲か?」
「あ、いや…えーーーっと…」
審神者は雪の方をちらちら見ながら相変わらず困った表情をしていた。和泉守と堀川を新たに含め、みんな首を傾げていた。すると堀川が
「主さんは、あっちから来たんですよね?」
と言って、審神者が走って来た方を指差した。うん。と審神者と清光、安定が頷いた。
「そして、曲がれないんじゃないかというぐらい勢い良く走って来たんですよね?」
と言うと、再びうん。と審神者と清光、安定が頷いた。確認をしたところで堀川は何か分かったようだ。少し微笑んで審神者の手を掴み、
「兼さん達、少し下がってて」
と言って先程審神者が走って来た方へ歩き始めた。
「「「???」」」
和泉守と清光と安定はお互いに顔を見合わせ、言われるがままに下がった。審神者の手を引き、縁側を歩く堀川。

<つづく>
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