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アナタの隣で

原作: 名探偵コナン 作者: rabun
目次

第三話 違和感の先

ジリリリリリリ
ジリリリリリリ
ジリリリ・・・ピッ・・・

のっそりと起き上がる。
窓からは眩しいくらいの陽が差し込んでいる

「・・・もう朝か。」
(結局一睡も出来なかった)

昨夜の電話以来、いやそれよりもっと前から、
1人になると余計なことを考えてしまう。

もやもやした感情はいつまでも消えることはない。

なぜこんな気持ちになっているのか
自分でも検討がつかない

正体を暴こうとしても何かが歯止めをかける

それでも考えずにはいられない

(考えてみたって何も解決できやしないのにな)

ふぅーと一息つき心を落ち着かせる。

心が乱れると仕事に影響を及ぼす。
静かに呼吸をしながら、朝陽を浴びる。

机には手帳や携帯が整頓されている。
そのひとつ手帳をおもむろに開き、
内容を確認する。

今日は非番だ。

(どこかに出かけたい気分でもないが・・・)


億劫になってる自分を鼓舞するように頬を叩き、
身支度を整えるべく、部屋を後にする。


ブーブーブー

置き去りにされた机上の携帯が震えている。

『御用の方はメッセージを・・・』

誰もいない部屋にナレーションが響き渡る
留守電になる携帯をよそに身支度を進める

『風見。俺だ。例の件、動き出したようだ。・・・』

身支度に夢中で上司からの留守電には気づかない。

『非番なのは知っているが、●●倉庫まで来て欲しい』

メッセージはあっけなく用件だけ伝えられた。




「・・・さて、どこに行こうか・・・ん?」

身支度を整え部屋へと戻ると携帯に通知が見える。

(まさか!!!!??)

ガバッ

とある人物の顔が目に浮かび、
急いで携帯を手に取る。

常に連絡は取れるようにしている。
それが自分の責任だと思うからだ。
なのに、まさか・・・こんなかたちで・・・
よりによって・・・


(降谷さんに決まってる・・・!!!)

急いで留守電を聞く。

(....?!!!)

留守電を聞き終えるとスーツに着替えることもせず、
私服のまま玄関を駆け出す。


(間に合ってくれ!!!!)


-倉庫-


「〜・・・〜・〜〜〜」

倉庫では怪しげな取引が行われている。
薄暗い中にお粗末な電球がわずかな光をさしている。

「風見さん、まだですかね」

部下の1人が小声で話しかけてくる
出口を見やるが誰かが来る気配はない

「・・・仕方ない。交渉が成立したら確保する」

(それまでには来るはずだからな)

ただ信じて目の前の取引に集中する




キキーッ

埠頭の傍、こうこうと陽がさす中、
ブレーキ音が響き渡る。

「あの先か....」
(ここからは車は危険だな)

車をその場に置きしばらく歩くと
寂れた倉庫が見えてきた。

その一つに見覚えがあった

以前、闇取引で調べていた場所。
あの時は証拠不十分でとらえることはできなかった。

それでも秘密裏に動き、調べ続けていた甲斐あって、
おそらく組織が動き出したことを掴んだのだろう。


(例の件・・・ここのことだろう)

キィイイィ・・・

あたりを見渡して慎重にドアを開ける

(あ...)


そこには見覚えのある背中
部下の1人がこちらを見て、隣に知らせている

(!)

その人はこちらに気づいたようだった

(風見か。早くこっちへ)

彼に手招きされるまま、隣へと移る

「遅れてすみませ「来るとわかってた」

「え、、、」

「来ることは分かっていた」

そう短く告げる横顔は凛とただ前を見つめていた。
その横顔見ていると間もなく・・・


「よし!いまだ!」

その掛け声と共に隠れていた全員が一斉に飛び出す

追いかけるもの、逃げるもの、罵声
一瞬にしてそこは戦場と化し、
全てのものが必死に追いかけ、そして逃げ惑う

自分も一人も逃すまいと必死に「目で」
「足で」追いかける



あっという間に一人も欠かすことなく捉え、
うめき声だけが木霊する倉庫内で、
一息ついたところで肩をぽんっと叩かれる


「・・・あとは頼んだ」

一見ぶっきらぼうに聞こえるが、
そこに確かな信頼があることを俺は知っている


「・・・はい!」


その場を託され、部下に指示を出す。
ふと、彼の方に目を向ける

去っていく後ろ姿を眺めて
心が締め付けられる想いになる

大きな仕事を終えた後だ。
不謹慎なのもわかっている。


(そういうことだったのか...)

ついに自分の気持ちに気づいてしまった。


彼がだれかと笑っているだけで
なぜ胸に違和感を感じたのか

自分の知らない彼の顔を見て
なぜ苦しくなったのか

一人になると
なぜ彼のことばかり考え眠れなくなるのか


なぜ彼を見ると安心するのか

なぜ彼といると心が暖かくなるのか

なぜ




彼の去る後ろ姿がこんなにも愛しいのか




「・・・・」

周りには捉えた者たちを引き連れ
次々とその場を後にする仲間たち


自分は突然襲い掛かるどうしようもない思いを抱き
ただそこに立ち尽くすしかなかった


「・・・なんで今更・・・」


違和感を覚えたあの時から
違和感の正体が知りたかった

行き場のないモヤをなんとしても解消したかった

でも

(こんなことなら、気づかないほうが良かった)

(・・・最悪・・・だ)


気づいてしまった自分の思いが
肩に大きく思い荷物を背負ったような感覚を
味合わせる


こんな思いを抱くことは
「罪」でしかないのに







「降谷さん...」
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