ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

アンジュ・ヴィエルジュ ~Another Story~

原作: その他 (原作:アンジュ・ヴィエルジュ) 作者: adachi
目次

第30話

「ペンギンマン参上!」
風紀委員室にペンギンマンが現れた。久方ぶりの登場である。
「あ、あれは! ペンギンのいない北極の平和を守ってるペンギンマンと!」
「シロクママン参上でがすよ」
「2回目の登場なのにいまだにキャラが定まっていないシロクママン!」
「ヒャッハー! てめーらぁ! ペンギンマン様に対して頭が高いぜ! 毛皮を剥かれて燻製にされてーのくわぁ!」
「なんだそのテンション」
「どうやら久しぶりのコメディ回で昂ぶっているようですね」
「キャラが定まらないどころか崩壊しかかってない?」
「そしてこいつが新しい子分、アザラシマンなのだ!」
「ア、アザラシマン、参上!」
 ひょっこりと現れたのは、安っぽいアザラシの着ぐるみを着たセナだった。羞恥で顔が赤くなっているが、それがより一層可愛らしさを盛り上げていた。
「セナ!? 何やってるの!?」
「わ、私はアザラシマン、です」
 赤面しつつ抗弁する。こうなった経緯は想像できる。大方テオドーチェとゼンジに半ば強制的に着せられたのだろう。北極を守る戦士アザラシマンとなれる素質でもみつけたのだろうか。はたまた適当か。多分後者の理由が強いだろう。2人に押切られるセナの姿が容易に想像できる。                                                                                 
「シロクママン! 例の物を出すのだ」
「アイアイサー」
「またこの流れ!?」
 シロクママンがラジカセを取り出し、スイッチを押すと、聴き慣れない音楽が鳴り出した。

デデデーン♪ デデデーン♪ チャリチャリチャッチャラーン♪

「何この音楽」
「これはペンギンマンのテーマソングですね」
 アクエリアがさらっと答える。
「ペンギンマンにテーマソングなんてあるの!?」
「タイトルは『哀しき愛の戦士 ペンギンマン』です」
「なんだそのタイトル」
「私も制作に協力したんですよ」
「一体何をやってるんだ、お前たちは」

ルルールルルー♪ ルルルルールルー♪ ルルルルー♪ルルルルー♪ ルールルールールー♪

「鼻歌しかない! しかも音痴だ!」
「歌詞を入れるまでは間に合いませんでした」
「どんな歌詞なんだ」
「ペンギンマンをひたすら称える歌詞です」
「歌詞がついてもろくなものになりそうにないな」

我ら北極三銃士! 今ここにアセンブル! ジアァァアン♪

「最後の決めポーズだけはやるんだ」
「お見事です。お三方」
「はぁ、この1週間、大人しく休んでいるかと思っていたのに。セナまで巻き込んでこんなことをやっていたとは」
 クラリスが頭を抱える。
「クラリス、何も俺たちは遊んでたわけじゃないんだ。ゆくゆくはこの歌を青蘭学園の校歌にして、5つの世界に流行らせて、印税で大儲けして札束のプールで泳ぐんだ」
「夢見すぎ! そして結局は私欲じゃん!」
「そうだ」
「開き直った! なんだこいつ!」
 いつもの騒がしい日常が戻ってきた。
 青蘭島に『マザー』が襲来してから、すでに1週間が過ぎていた。セナの「フライハイト」によって瀕死だった『マザー』は倒され、消滅した。『マザー』が消滅すると同時に随伴機たちも塵となり消えていった。どうやら随伴機は『マザー』の分身であったようで、本体が消えたからエネルギー源を絶たれて分身も消えたということらしい。空に開いた黒い穴も塞がり、青蘭島は『マザー』の襲撃を退け、勝利した。校庭や校舎の一部が欠損したが、人的被害は皆無だった。風紀委員のみならず、多くのプログレスが協力し合いウロボロスと戦ったための戦果である。
 戦いの後、遥、テオドーチェ、アクエリア、ゼンジらは疲れ果てて数日寝込んでいたが、さすがというべきか、その間にキヌエら
本家の風紀委員は事後処理に当たり、回復した頃にはすっかり元通りになっていた。
 遥たちにとって、今回の戦いがもたらした成果が2つある。1つはαドライバーの功績が認められたことだ。常に激戦の中心におり、『マザー』討伐に大いに尽力したゼンジの奮闘が広く知れ渡り、アルドラの有益性が際立った。これによって懸念していたゼンジの風紀委員脱退の話はなくなったわけである。
 そしてもう1つは、セナ・ユニヴェールが正式に風紀委員に加入したことである。「フライハイト」の威力を直にみたキヌエのお墨付きであり、遥たちとともに活動することを許可された。当然ウルリカも一緒に。
 こうして新たな仲間も加わり、学園は再び平穏を取り戻した。ウロボロスはすべてが消え去ったわけではない。『マザー』とは異なる強力な個体がまたいつ襲ってくるか誰にもわからず、世界崩壊の危機もいまだ解決されていない。今日の安寧は薄氷の上であり、遥たちはこの先も戦いに身を投じていくだろう。だが、勝ち取った平和の内で彼女らの青春は息ずき、躍動している。笑い、楽しみ、時には泣き、悲しむ。彼女らは成長するだろう。平和は永遠ならざるものだが争いもまた同じ。いつかくると信じる平和のために、風紀委員たちは戦い続けるだろう。波乱万丈の人生を楽しみながr。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。