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仲間・親友・それから…

原作: その他 (原作:ハイキュー) 作者: 久宮
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第8話

及川と岩泉が付き合っていると分かった日、松川は岩泉に聞きたい事があるといって、二人きりで帰る事にした。
話しながら帰る途中、パピコを食べながら近くにある公園に立ち寄った。
「どうやって、付き合うことになったの?」
松川がストレートに質問する。
「やっぱそこか…」
岩泉は予想はしていたものの、ストレートに聞かれた事で、少し嫌そうな顔をする。
「きっと、あっちも同じこと聞かれてると思うよ」
松川の言う「あっち」とは、及川の事だとすぐに分かった。間違いなく、今頃及川は花巻に質問攻めにあっていると思うと、益々嫌そうな顔になる。
「そんな嫌そうにしなくても」
と言いながら、松川は笑う。
「嫌っつーか、アイツ余計なことまで話してそうな気しかしない…」
確かに、岩泉の言うとおり、盛大なのろけを披露していそうな及川が思い浮かぶ。
「…いつもアイツが『岩ちゃん』『岩ちゃん』言ってるのが、あまりに普通になってて、それが当たり前だと思ってたんだよ。でも、それがない日があったんだ…」
松川は黙って岩泉の話を聞く。
「前に二人で出かけた時に、アイツ女の人に声かけられたんだよ。別にそれ自体はよくある事なんだけど、その時に『部活がない時でも、二人で一緒なんですね』とかなんとか言われてて。で、『単に、俺たち幼馴染なんです』って答えてたんだよ」
「…うん」
松川は、あまりよく意味が分からずにいた。
「いや、実際お前たち幼馴染だし、子供のころから一緒にバレーもやってるわけでしょ」
「だな…」
「ってか、岩泉も彼女いたころあったし、それこそ及川何て、彼女だか何なんだか分からないほどいるじゃん」
「おう…」
「今更?」
「今更ってか、なんかそん時『単に幼馴染』って言葉に、すごい引っかかりがあってさ。…で、幼馴染が嫌ってわけじゃないし、実際そうだし。…で、『ただの幼馴染』じゃなかったらなんなんだって考え続けてたんだよな」
松川は相変わらず黙って話を聞いている。
「で、ずっと気付かなかっただけで、俺がアイツの隣を誰にも譲りたくないってなったってゆー話だよ」
話の最後の方は、照れが出てきたのか、ほとんどヤケの様に話をまとめてきた。
「ふーん…。そーゆーもんなんだ」
やっと、松川が口を開く。
「そ。そーゆーもんなんだよ」
話が終わったことで、岩泉は歩き出そうとする。
「自分でも知らない間に、必ず視界に同じやつが入ってることがあるのと同じ感じ?」
松川の言葉に岩泉が振り返る。
「んだそれ」
「いや…分かんないんだけどさ。なんかいつも視界にいたり、隣にいたりすんのよ」
今度は岩泉が黙って話を聞く。
「クラスも違うのに、何でいつも近くにいんのかなぁ…とか思ってさ」
(コイツ気付いてないのか…)
松川の話を聞きながら、岩泉は思っていた。
(なんで…って、そりゃお前がアイツを目で追ってるからだろうが)
「うん…なんかごめん。急に話したくなっちゃっただけだから…」
「もし、それがなんなのか分かったら、何か変わんのか?」
急に岩泉は、松川に質問する。
「…それも分かんないいな」
思った事を、素直に松川は答える。
「そっか…」
「うん」
「じゃ、そろそろ帰るか」
「うん」
それだけを言うと、二人は帰る方へ足を向けた。
「ってか、その図体で『うん』とか、可愛くねーかんな」
と岩泉は、笑いながら言う。
「いや、お前の嫁も『うん』使ってるじゃん」
「あーそれな。マジでむかつくんだよな」
松川の反論に及川の事を思いだし、心底嫌そうな顔をする。
二人がお互いの家の方に向かう分かれ道に来たとき、松川が静かに言う。
「今日、話聞いてくれてサンキューね」
それに対し、岩泉は
「あれで話聞いたことになんのかよ」
と笑った。

花巻が部屋に戻る途中、ちょうど風呂から出てきた及川と会った。
「あれ、岩泉は?」
花巻が声をかける。
「先に行ってろって言われたから、一人で戻ってきた」
「ふーん」
そんな会話をしながら部屋に入る。先ほど花巻が戻ってきた時には、まだ数人が起きていたが、今は部屋にいる全員が眠っていいるようだ。
「さて、明日も早いし、俺らも寝るか」
そう言いながら、花巻は自分の布団に向かう。
「あれ、まっつんも戻ってないんだ」
及川が言うと、
「俺も、先に戻っててって言われたのよ」
と言いながら、布団に入る。
「ふーん」
さっき、花巻がした返事と同じトーンの返事をしながら、及川も布団に入る。
「あのさ…」
及川が話しかける。
「もし何かあったんなら、俺でよければ相談にのるよ」
「は?」
及川の言葉に、花巻は一瞬考えたが、
「いや、別に何もねーよ」
と答えた。
「そっか。じゃ、おやすみー」
及川は、特に声のトーンを落とすこともなく、就寝の挨拶をした。
「おう。おやすみ」
それに花巻も返事をした。
(何かあんのは、俺じゃなくて松川だよな…)
目を瞑ると、先ほどの会話が思い出された。
(でも、松川が何もないって言うんだから、何も聞けねーしな)
まだ寝る人の戻って来ない隣の布団を見る。
(とりあえず、俺は何も考えないで、いつも通り接するのがいいんだよな。それに、何かあるなら、松川なら話してくれるだろうし…)
花巻は、松川の布団に背を向ける様に向きを変え、再び目を閉じた。
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