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仲間・親友・それから…

原作: その他 (原作:ハイキュー) 作者: 久宮
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第6話

先に風呂場に着き、すでに髪を洗い始めていた花巻。少し遅れて、松川が隣に腰掛ける。
「あれ、及川たちは?」
一緒に来るのだと思っていた花巻が、松川に聞く。
「なんか、まだやることあるんだって。終わってから、風呂入るらしい」
シャワーの温度を調節しながら、松川が答える。
「うぇー。キャプテンは大変だね」
そう言いながら、花巻は泡を落としていく。身体まで洗い終わった花巻は、松川に「先に言ってるよ」声をかけ、湯舟に向かった。
「ちょ、温田。寝るなら布団行けよ」
先に湯舟にいたチームメイトが、どうやらうとうとしているらしい。それを起こす声が浴室に響いた。
「いやー、さっぱりして温まってきたら、急激な眠気が…」
と言っている声が聞こえる。
「確かに、それ分かるわ。俺もそろそろ出るかな」
「おう。途中でぶっ倒れるなよ」
数名が、一気に風呂からあがり出ていくのを、花巻が声をかける。
「松川お先―」
「おう」
身体を洗い終わった松川は、逆に湯舟につかり始める。
「はぁぁ…」
松川はしっかりと深い息を吐く。
「オヤジか」
湯舟につかったままの花巻が、笑いながらつっこむ。
「えー、だって言いたくならない?」
松川が答える。
「確かに、家の風呂だと、ちゃんと脚伸ばすのとかできないもんなぁ」
「それなぁ。俺ら、それなりにでかいしな」
「なー」
松川の意見に、花巻も同意する。ゆっくり脚が伸ばせる事を楽しむように、花巻はつま先までピンと伸ばしている。
「初日からチトはりきり過ぎたかな」
「俺も、今日くらいは早く寝ようと思ってた」
2人、ゆっくり話をしたり、黙って目を瞑っていたりしながら、隣同士で湯に浸かっている。
「松川とこーやってのんびりするの、やばいよなぁ」
「何それ」
花巻の言葉の意味を松川が聞く。
「一緒にばかなこともできるし、一緒にバレーもできるし、のんびりしたい時はほっといてくれるし、疲れてる時とかにも頑張ってテンション上げなくてもいいし…」
花巻は、頭を湯船の縁に乗せ目を瞑ったまま、ゆっくり話す。その言葉に、松川は無言で花巻の方を見る。
「マジすげー楽だし、楽しいんだわ」
花巻はその言葉を言いながら、松川の方に顔を向けて笑いながら、花巻は深い息を吐いた。その言葉に松川からの返答はない。その松川はというと、目をつむったままの花巻をじっと見つめている。松川からの何の返答もない事で、花巻は目を開けた。
その時、勢いよく隣からザバッとお湯が動いてきた。
「松川?」
花巻は松川に声をかける。
「出るわ」
そう言うと、松川は浴槽のふちに足を上げた。
「早くねぇ?」
花巻が声をかけるが、松川は振り返らない。
「んー。ちょっと眠たくなってきたから、早く布団に行きたい」
とだけ返す。
「そ。途中で寝ないでよ」
「花巻も風呂で寝落ちしないでよ」
少しだけ会話をすると、松川は浴室から出て行った。花巻は浴槽のふちに腕を組み、松川が出ていく様子をみながら、また湯船に浸かる。
「はぁ…俺変な事いったのかぁ」
花巻は小さな声で独り言をつぶやく。いつもなら花巻が声をかければ何かしらの返事をくれる松川なのだが、今の言葉には何も言ってはこなかった。花巻の中でそれが少し引っかかったのだ。
「眠いって言ってだし、あんまり聞こえてなかったのかもしれないよな」
少し考えたあとに、一人納得するような言葉を口にしたとき、脱衣所の方から話し声が聞こえてきた。花巻はその声に気付き、顔をそちらに向ける。しばらくすると、浴室へ入ってくるくもりガラスのドアがガラっと開いた。
「マッキ―、まだ入ってたんだねぇ」
それは、及川と岩泉だった。
「おつかれー。お前らもやっと風呂はいれたんだね」
浴槽から、入ってきた二人に声をかける。
「明日からのメニューを相談してたら、ちょっと遅くなっっちゃた」
そう言いながら、シャワーの方へ行き、頭を洗い始める。
「うげー…明日からが怖いわ―」
花巻はそういうと、頭を浴槽のふちに乗せて上を向いた。そのまま、ゆっくりと湯船に浸かっていると、お湯が動いたのが分かった。
「そーいえば、まっつん長い時間お湯につかってたの?」
及川が浴槽に入りながら、花巻に話しかけてくる。
「そーでもないと思うよ。俺より後に入ってきて先に出て行ったし」
花巻は目をつむったまま、及川の質問に答える。
「そーなんだ」
及川もゆっくりお湯につかる。
「眠いからって、先にあがって行ったよ。松川何かあったの?」
花巻が質問すると
「いや、なんか顔が赤い気がしたから、のぼせたのかと思ってさぁ」
と返ってきた。
「ふーん。そんなのぼせるほどは入ってないと思うよ」
花巻は頭を起こしながら言う。
「結構赤かったから心配になったんだけど。ねぇ、岩ちゃん」
「ああ」
岩泉も浴槽に入って、足を伸ばす。
「体調悪いとかじゃないといいな」
及川がそういうのと同時に、花巻が立ち上がった。
「多分、ちょっと様子見てみるわ。じゃ、先あがるな」
花巻はそう言いながら、湯船から出る。そして、ドアまでいくと「あっ」と言いながら振り返る。
「二人きりだからって、ヤラシー事すんなよー」
と、ニヤニヤしながら及川たちに声をかける。
「マッキー!!」
及川が、ザバッと勢いよく立ち上がり声を上げる。花巻は笑いながら、そのままドアを閉めた。
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