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仲間・親友・それから…

原作: その他 (原作:ハイキュー) 作者: 久宮
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第5話

岩泉と及川の話を聞いてからも、花巻の中で特に何かが変わったことはなかった。部活もいつも通り、昼休みや休み時間も前と何も変わっていなかった。せっかくだし、二人きりにさせてあげようなんて思わなくても、始めから二人は一緒に行動していたし、かといって、別の友達と一緒にいないのかと言ったらそんなこともない。
(こんな恋人関係もあるんだな…)
二人を見ていると、花巻はそんな事を思うようになった。

何かが変わることもなく、部活の合宿が始まった。
青葉城西は、さすが強豪校だけあって、合宿を休むものはいなかった。勉強と両立している二人は、塾に時間は中抜けしながら、部活に参加している。レギュラーではないため、無理をしなくても大丈夫だと伝えたが、二人とも部活も大事だと言って、中抜けを希望した。
朝9時に始まった部活は、昼の休憩をはさんで、19時まで続いた。
夕食も終わり、大部屋で部員がゆっくりしているところに、ジャージ姿の岩泉が通りがかった。
「金田一、1年に早めに風呂入れって伝えておけ」
その声に、金田一は岩泉の方に駆け寄る。
「分かりました。岩泉さん、練習っすか。俺も行きます」
返事と一緒に、練習を申し出た。
「無理すんな。まだ初日なんだから、今日くらいはゆっくりしてろ」
そう岩泉が言っていると、その後ろから
「そ。明日からはキツいぞー」
と。松川の声がした。
「うげーみたいな顔するんじゃないよ、国見」
その会話をそばで聞いていた国見の表情に、後からきた花巻がつっこむ。
「そーゆー事だ。あと、1年が終わったら、2年も入っとけって矢巾に伝えとけ」
「っす」
岩泉は金田一に伝言を頼み、体育館に向かって歩き始める。その後ろを、松川と花巻も話ながら歩いていく。
金田一はあたりを見回し。矢巾を見つけた。
「矢巾さん。さっき岩泉さんに、俺ら1年に先に風呂に入れって言われたんすけど。先に2年生から…」
金田一は、先輩たちに先を譲ろうを話をし出したが、聞いていた矢巾にさえぎられた。
「あぁ、大丈夫。1年が終わったら2年がはいるから」
「え、でも」
金田一は矢巾にもう一度話をしようとすると、後ろから肩をポンと叩かれた。
「それでいいんだよ」
渡が、笑顔で話しかけた。
「確かに、普通は上級生からって思うよな。でも、1年はまだ合宿に慣れてないから、早めに休めるようにってことみたいだよ」
「そ。去年俺らも及川さんたちに先に入れって言われたから、ちょっとびっくりしたもんな」
渡と矢巾は、笑いながら去年の事を教えてくれた。
「そーゆーわけだから、遠慮しないで先に入って、先に休めよ」
もう一度、肩をポンと叩かれて、金田一は
「っす。ありがとうございます」
と言い、ほかの1年に「風呂、1年が先にいくぞ」と声をかけ始めた。

岩泉たちが体育館に着くと、先に来ていた3年がストレッチをしていた。
「おぅ、これからの練習メニューって決まってんの?」
ストレッチをしながら、温田が岩泉に声をかける。
「及川に確認したら、今日はとりあえず個人練でいいんじゃねーかって」
身体を伸ばしながら、岩泉は答える。その答えに、他の部員たちも「了解」と言いながら、自分の強化したいものの練習を始める。
「松川は何やんの?」
「俺はやっぱブロックだな。ちょうど、スパイク練してるやつもいるし」
花巻と松川もストレッチしながら話をする。
「俺はサーブだな」
普段、大人数のいる体育館だが、今は3年だけという事もあって、各自が自分の強化したものを練習するスペースが十分にある。
遅れてきた3人もストレッチが終わり、練習したいもののところに移動していく。
(俺には及川のような脅威になるサーブは打てない。でも、もう少し、相手を翻弄させられるようなサーブが打てれば…)
花巻は、自分の思うところに落とせるように、一球一球ていねいに修正しながら、練習を続けて行く。隣では、岩泉が強打で押せるようなサーブを、打ち続けている。
青葉城西は強豪だと言われているが、及川が入学してから全国制覇どころか、宮城県でも優勝していない。『白鳥沢を倒して、オレンジコートへ立つ』誰も口にはしないが、それは部員全員が思っていることだ。
お互いが気づいた事を声がけしながら練習を続けていると、監督やコーチを話していた及川が、遅れて練習に来た。
「遅くなってごめん。軽くアップしたら、俺も混ざるね」
そう言いながら、及川は体を動かし始めた。

1時間くらいの練習のつもりだったが、気が付いたら23時が近くなっていた。
「もうこんな時間だよ。今日はこれくらいで終わりにしよう」
及川の声に、全員が時計を見る。
「げ、明日って何時からだっけ?」
花巻が口を開くと
「6時だな」
と岩泉が返事をした。
「やべー、起きれる自信がねぇよ」
後片付けをしながら、花巻が泣き言を言う。すると、あちこちから、「同じく」と声が上がった。
部屋に戻ると、布団の誘惑に負けそうになる。
「お前ら寝るなよ。ちゃんと風呂で温まってからにしろよ」
と、岩泉から声が飛ぶ。
「そうだよ。汗流さないで寝ようとするから、モテないんだよ」
と、及川も岩泉に続いて声をかける。
「わーってるよ」
「いってくるよー」
と、タオルなど必要なものを持った部員たちが、部屋を出ていく。
「あれ、及川はまだ行かないの」
部屋を出ようとした松川が、及川に声をかける。
「うん。これ書いてからにする。じゃないと、風呂で温まったら、すぐ寝ちゃいそうで」
と言いながら、部誌を軽く上げる。
「そっか。じゃ、お先」
そう言うと、部屋を出ていく。その時に、及川の後ろで座ってスマホを弄っている岩泉と目が合った。及川の仕事が終わるまで岩泉が待っていて、一緒に風呂に行くという事なんだろうが、それは当たり前のように思えて、特に何も言わなかった。
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