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仲間・親友・それから…

原作: その他 (原作:ハイキュー) 作者: 久宮
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第4話

「まっつんに岩ちゃんとられたー」
先に帰った岩泉と一緒に帰るつもりだった及川は、帰り支度しながら、まだブツブツ言っている。
「そんなチンタラやってないで、さっさとやっちゃえば追いつくんじゃねーの」
着替えが終わり、荷物をバッグに詰めながら花巻は言った。
「それはそうなんだけどさぁ」
わざとらしく頬を膨らませたままの及川が話を続ける。
「あの感じで2人で帰ったって事は、何かサシで話があるんじゃないのかな…って。俺はいない方がいいんじゃないのかなぁとも思うわけよ」
「ふーん。そういうもんかね」
及川の返事に、大して興味なさげに言葉を返す。
「じゃさ、なんか食って帰らね?こっちも、たまにはサシでさ」
花巻は、急にガシッと及川の肩を組んで話しかける。
「ラーメン?」
花巻の方に顔を向けながら、及川が聞くと、
「マック」
と、花巻が答える。
「それ、マッキーがシェイク飲みたいだけでしょ」
「まぁ、そうとも言うな」
そう言いながら、及川にかけていた腕を話しバッグを肩にかける。
「腹減ったから、早く行こうぜ」
そのまま花巻は部室のドアを開ける。
「ちょっ、今行くって」
及川も急いでドアのほうへ向かった。

二人とも注文を済ませ、テーブルに着く。部活終わりなだけあって、バーガーはさっさと食べ終わっている。クラスであった話をしながらポテトをつまむ。
「そろそろ聞いてもいい?」
花巻がポテトで及川の方を指しながら言う。
「やっぱり聞いてくるよね」
及川もポテトで花巻の方を指しながら答える。
「いつから付き合ってるの?」
「…多分、3か月前くらい前から」
「そんなに経ってるの!…全然気づかなかったわ」
聞きたいと思ったことを、つらつらと聞いていく花巻に、聞かれたことに素直に答えていく及川。及川が何かを答えるたびに、少しずつ顔がニヤニヤしてくる花巻に、若干うっとおしさを感じながらも、特にはぐらかす様子もなく答えていく。
「ってか、及川って彼女いたよね、何人も」
「何人もは余計。でも、いたね、彼女」
「じゃ、どっちもイケるん?」
「違うよ!岩ちゃん以外は嫌!」
ジュースのカップの中の氷をガチャガチャ混ぜながら話していた及川だったが、その質問にはびっくりしたような顔で答えた。
「じゃ、どーやって好きって気づいたの?」
「…マッキー…つっこんでくるね」
「だって気になんじゃん。ちっさいガキの頃から一緒にいて、急に好きってなったの?それとも、実はずっと好きなのに我慢してたん?」
及川はしばらく黙ってカップの氷を混ぜていたが、その手を止めると、いつもより小さい声で話し始めた。
「岩ちゃんのさ、告白されてる現場を見ちゃったんだよね…」
「で?」
及川ほどではないにしても、岩泉もそれなりにモテる。今までも、岩泉に告白した女子の話は、花巻も聞いたことがあった。
「岩泉が告白されんのって、別に珍しくないし、お前だってよくからかってたじゃん」
バレーボール強豪校の副キャプテン。まじめで、漢気も強い。普通に見たら、身長だって大きいほうだ。
「そうなんだけど…。なんか、その時すごく嫌だったんだ」
花巻はその話を黙って聞いている。
「その場で岩ちゃんは断ってたんだけど、その時急に女の子が岩ちゃんに抱き着いてきて…。なんか、とにかくそれが嫌で『岩ちゃんは俺のだ』って叫びそうになちゃった」
少し困ったように笑いながら話す及川をみて、花巻は聞いてみたいことができた。
「でもさ、付き合って何するの?今までも、ずっとふたりでいて、バレーも一緒にやってて、お互いの家にも行き来してて、休みの日も一緒にいるじゃん」
「それな。岩ちゃんにも同じこと言われた」
「エッチな事したいとか?」
ストレートは花巻の言葉に、今度は及川が吹き出して笑い始めてた。
「え、付き合うってそーゆー事じゃないの」
空になったシェイクのカップを指で弄りながら花巻が言うと、
「今は、そーゆー気持ちもあるけど…」
と及川が続けた。
「あるんかい。でも、何かやってても、これからでも、報告はいらないからね」
すかさず花巻がつっこむ。
「あははっ。んーなんて言うかな。岩ちゃんが俺のモンだってゆー、事実っていうのかな。それが欲しくなっちゃったんだよね。まぁ、付き合ってるっていっても、男同士だしおおっぴらには言えないから、結局もどかしいのは変わんないんだけど。」
「まぁ、それはお互い様なんじゃないの」
この顔のせいでもあるが、及川はモテる。付き合っている相手が、キャーキャー言われるのは岩泉でも、おそらく面白くないだろう。
「女の子がほっといてくれないからね、このイケメンを」
ドヤ顔でいう及川にはいつもの事なので、あえてつっこまない。
「幼馴染で親友でキャプテンで仲間で恋人。最強じゃない」
花巻の顔の前にピースサインを出しながら言う及川の顔は、ドヤっていたが、すごくいい笑顔に見えた。
すると、急に及川の顔から笑いがきえ、まじめなトーンで花巻に質問をしてきた。
「…ここまで話してて何なんだけどさ、気持ち悪くない」
「は??」
花巻は何のことだか分からないといった風に、言葉がでた。
「いや、だってさ…男同士で付き合ってるのが、同じチームにいるんだよ」
及川が花巻の方を見ないまま答えた。そこで、花巻がやっと意味が分かり、及川の問いに答え始めた。
「そうだな。男同士だもんな。ちっとも何も思わなかった。確かに、俺のまわりにはいなかったけど、別に男同士だからとか関係ねーじゃん」
さらっと答える花巻の言葉に、及川は顔を上げた。
「あ、でも、痴話喧嘩が部活にひびくのは、なしで頼むな!」
笑いながら及川に向けで話す。
「それは任せてよ」
再び及川も笑顔になった。
それからしばらくして、店を出た。途中の分かれ道まで、だらだらと話しながら歩く。
「マッキー」
及川が、花巻の名前を呼ぶ。つられて、花巻も及川の方に顔を向ける。
「ありがとね」
「おお」
及川の短い礼の言葉に、花巻も短い返事で返す。
花巻は、さっき及川にかけた言葉の通り、全く嫌悪感は持っていない。及川も岩泉も、きっといろいろ考えたに違いない。そして、二人で答えを出した。それでいいと思うし、純粋に、二人が仲がいいのが嬉しかった。
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