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仲間・親友・それから…

原作: その他 (原作:ハイキュー) 作者: 久宮
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第3話

次の日の放課後の部活が終了し、全員であいさつをするために整列したときに、及川から来月の合宿について話があった。
「…という事で、来月の4連休に合宿をすることになった。細かいことは、後日プリントで配るからね」
「っす」
及川の話に、部員たちが返事をする。ただ、だれが言ったのかは分からなかったが、小声で「急だな…」との声も聞こえてきた。それに対して、岩泉が
「今回は急な決定だったから、強制はしない。どうしても無理なやつは、後で俺か及川まで言いに来てくれ」
と大きな声で言った。
「そうだね。ただ、レギュラーはできるだけ参加の方向で調整してみてね」
と及川が付け足した。
部員たちはその話にも返事をすると、今日の部活の終了のあいさつをした。
今日は4人とも当番ではなかったので、後の事を任せて先に部室に戻る。4人で歩きながら、花巻が
「合宿の出欠の件、岩泉にしては寛容じゃん」
と、先程の事を聞いてみる。
「俺も思った」
及川も同じことを思っていたことを話す。
「まぁ、急に決まったのは確かだったし。合宿まで1ヶ月もないんだ。予定を入れてるやつもいるだろ」
部室のドアを開けながら岩泉は言った。
「まぁ、そーかもしれないけど」
いまいち納得してないような声で、花巻は返事をする。
「さっきごにょごにょ言ってたの、2年の長谷川たちだったんだよ」
岩泉には誰が言っていたのか分かっていた。
「多分アイツら、予備校とかあんじゃーねの」
それを聞いて、花巻も理解した。2年の長谷川と沢口は学年でもトップクラスの成績を誇っている。もちろん、バレーボールが嫌なのではなくて、勉強も両立してやっているのだ。
「あの2人、土曜の練習のあとにも予備校行ってるんだよね。えらいわー」
及川が遠くを見ながら言う。そして
「岩ちゃんも見習ったほう…」
と余計なことを言い始めると、すかさず岩泉からケリが入った。
「それはお前も同じだろが」
岩泉が及川に言い返す。それを見ながら
「相変わらず、お前らって距離が近いよね…今更だけど」
と花巻が言う。及川たちは意味が分からず「?」という顔をする。
「改めて聞いておきたいんだけど、お前らって付き合ってんの?」
今度はストレートに花巻が質問する。
その質問に、及川の動きが止まり、岩泉の目が泳ぐ。
「やっぱそうなんだ」
ロッカーから新しいタオルを取り出した松川が言う。
「何も言ってないけど」
と及川が反論するが、もう遅い。
「よくそれで隠してるつもりになれるね」
と松川の言葉が続く。
「…なんで分かったの」
及川はタオルで顔を隠しながら、それこそごにょごにょ言う。
「いや、分かんなかったから聞いたの」
花巻が及川に近づきながら、ニヤニヤしながら言ってくる。
「え、いつからいつから?」
「ちょっとマッキー、食いつきすぎ」
及川と花巻が2人でギャーギャーやっているのを、岩泉は見ないようにして帰りの準備を進めていく。松川は、2人のやりとりを見ないようにしていると岩泉を見ながら、帰り支度をしていく。ずっと見続けられてるのに耐えられなくなった岩泉が、無言で松川を見返す。
「…なんだよ」
しばらく見合っていたが、岩泉が口を開いた。
「いや…今日、俺と帰らない?」
岩泉は思ってもみなかった返答に、一瞬首を傾げそうになったが、「別に構わない」と言い、及川に先に帰る帰ることを告げると、バッグを肩にかけた。
「ちょっと、岩ちゃん。なんで、一緒に帰ろうよ」
花巻に絡まれている及川は声をかけるが、
「今日は花巻と帰れよ」
とだけ言うと、ドアノブに手をかけた。
「じゃ、岩泉借りるね。お先-」
岩泉に続いて、松川も部室を出て行った。
その様子を黙ってみていた花巻だったが、及川は
「もう、マッキーのせいで置いてかれちゃったじゃん」
と、口をとがらせている。
「大男が口をとがらせても、かわいくねーから」
と笑いながら、及川に絡ませていた手をほどき、着替えを始めた。
まだ、ぶつぶつ言っている及川に向かって、
「じゃ、帰りながらじっくり質問させてもらうわ」
と笑いかけた。

松川はしばらく無言のまま歩いていた。何を言われるのか気が気じゃない様子で、松川の隣を同じく無言の岩泉が歩く。
「コンビニ寄ってい?」
松川が岩泉に声をかける。
「おう」
岩泉が短い返事をすると、松川はコンビニに入っていく。特に用事のない岩泉は、店内には入らずに外で待つ事にした。しばらくすると、松川が店内から出てきた。それを確認すると、岩泉は帰る方向へ歩き始めようとする。
「はい」
そも声に岩泉が振り返ると、半分に分けたパピコがさしだされている。
「サンキュ」
お礼を言いながら素直に受け取り、食べ口を開ける。
そして、アイスを咥えながらまた歩き始める。今度こそ何か話があるんだろうと思ったが、まだ何も言ってこない松川に耐えなれなくなり、岩泉から話を始めた。
「…なんか悪かったな」
急に謝り出した事に「何の事だか分からない」といった顔で松川が岩泉の顔を見る。
「気持ちわりーかもだけど、ちゃんと部活は今まで通りやるから…」
「そんな事思ってないけど」
話をしている岩泉の言葉を遮るように、松川が言う。
「いや、男同士なんだぞ。しかも、ガキの頃からずっと一緒だった奴にだぞ」
それでも岩泉は話し続ける。
「うん。今までずっと一緒に育ってきた上に、一緒に戦ってきた奴だもんね」
パピコを咥えたまま、松川が話す。
「まぁ、男同士とか、あの及川だろうとか、いろいろあるけど、俺はちっとも気持ち悪く思ったりしてないよ」
今度は、しっかりと岩泉の顔を見ながら言った。
「…おう」
松川のその言葉に、岩泉は短い返事を返した。
「じゃ、何で俺だけを帰りに誘ったんだ?」
なにかを言われると思っていた岩泉は、思っていた疑問を口にする。その疑問に、松川はしばらく考えているように前を見ながら黙り始めた。それを急かすわけでもなく、松川が話し始めるのを岩泉はじっと待つ。
「正直、こんな話をするのとかどうかと思ってたんだけどさ…」
松川は前を向いたまま話し始めた。
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