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白いヴェールを貴方に

原作: その他 (原作:あんさんぶるスターズ!) 作者: 緋
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きらりと光って

*
まず、結果から報告しよう。
結果は大成功。
ずっと泣きっぱなしだった瞳はぴたりと涙を止めて大きく見開かれるとまた大きな涙の粒を浮かべてそれがぽろぽろと零れていく。
時が止まったように感じる瞬間だった。
自分たちの空間だけ切り取られたような。
美しすぎる目の前の彼の手を取り、指輪を手に取りはめてもいいかと口にする。
嵐は首を大きく縦に振る。
泉もまた、それにこたえるように小さくうなずくと細く長い指にシルバーの指輪をはめた。
おめでとう、お姉ちゃん。と花嫁であるあんずが一言呟いたのを引き金に周りからもおめでとういった言葉であふれる。
ありがとう、と嬉しそうに言った嵐と立ち上がった泉はありがとうございます、と言葉をかけると深く礼をした。
嵐の手を強く握った、返ってきた熱が何よりも幸福だった。

「泉ちゃん!泉ちゃん!」

ぱたぱたとスリッパの走る音が泉の耳に届き意識を戻す。

「なあに、なるくん」

あの結婚式から、嵐は泉の家によく通っていた。
いつ鍵を渡そうか、と泉は考えているが今はそれよりも優先すべきことがあるようだ。

「え、っと、えっとね!お洋服なんだけど、どうしようかな…って」
「え?ドレスじゃないの?それとも和服のほうがよかった?」
「え、アタシ、ドレス着れるの・・・?」

驚いたようにしている嵐に泉は当たり前だという風に首を傾げた。

「なるくんが着たい服を着たらいいじゃん。なるくんならなんでも似合うでしょ」
「ん、そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、やっぱり、タキシードというか」

ふうん、と泉は嵐が持っていたパンフレットを取ると華やかな花嫁たちが嬉しそうに笑っている。
着たいんだろうなあ、と思うけど。
誰よりも人の目を気にする人だ。
誰よりもかっこいいにこだわり誰よりも美しくありたく、誰よりもうつくしい。それが、鳴上嵐だ。そして、それを知っているのが、瀬名泉だ。

「じゃあさあ。両方やろうよ」
「は?」

泉は笑う。何よりも嵐の表情が想像出来たのもあるし、実際に嵐の表情を見るとその想像の通りだったからだ。
驚愕に満ちた顔。そんな顔であっても美しいのだから、天性のものというのは羨ましいものだ。

「世間に出すのはタキシードでいいじゃん。お互い。で、そのあとKnightsとか、家族だけでさ。」
「待って、泉ちゃん、世間に出すって」
「駄目なの?いいじゃん。俺たち結婚しますって言っちゃおうよ」
「…いつからそんなに。」
「自信満々になったのかって?」
「そうね」
「そりゃ、自信も出るでしょ」

そう言って泉は立ち上がり腕を広げた。

「俺は自分に自信を持ってモデルをしてる。自信が持てるぐらいに努力をしてきた。その隣に立つのはなるくんだよ、それは、ずっと、そうだったし。これからもそう。」
でしょ?と泉は嵐を見る。
「…なるくん、よく泣くね」
「泉ちゃんが泣かしてるんでしょォ…」

女の子は泣かしちゃダメって知らないの?という嵐は泉の胸へと飛び込む。

「なるくんは、綺麗だよ。俺が認めてる。それだけで、自信にはならない?」
「なる、なるわよォ。でも、それと世間はまた別じゃない」
「俺さ、ドレスを着たなるくんも、タキシードを着たなるくんも両方見たい。俺のだよ、って言いたい。それじゃダメ?」

きっとそのどちらも美しいから。
そう言葉を付けると涙をうかべた顔は泉を見る。

「いいの?泉ちゃん」
「馬鹿じゃないの。なるくんだからいいんだよ、俺は」

優しく鼻先に触れるだけのキスを落とす。
ナルシストであるはずなのに何処か自信が持てない彼に届けばいい。いや、届かなくては困るのだ。
好きだ、という言葉も綺麗だ、という言葉も。
昔は恥ずかしくて言えなかった言葉も。
今であればはっきりと伝えることが出来る。

「俺の隣で世界一綺麗な花嫁になってよ、なるくん」

何回プロポーズさせるつもり?と思わず泉は笑う。

「もちろん、もちろんよ泉ちゃん」

返事はそれでいい。十分すぎるくらいだ。
そこで泉の携帯が通知を知らせる。
開くとあの時のように泉先輩、という言葉から始まるあんずからのものだった。

ーーーお二人の結婚式プロデュースさせて貰えませんか

「だって、なるくん。どうする?あんずに任せたら間違いは無いと思うけど」
「あら、素敵!あんずちゃんの時の結婚式も素敵だったものね…」

思い出すようにうっとりとした表情を見せる嵐に泉はわかってる?と指先を鼻先に当てる。

「俺たちはあの時より最高の式にするんだからね」
「泉ちゃんらしいわァ、いいわね。あんずちゃんにも協力してもらいましょ!」

やっと、いつもの嵐の調子に戻ったらしい。
少しほっとしながら泉は嵐の腰を抱えソファに座り直す。

「さあ、なるくんはどうしたいの。」

どんな衣装が着たい?どんなサプライズを魅せたい?きっとKnightsの連中も静かにしている訳では無いだろう。

「泉ちゃんこそ、どんなアタシがみたいの?」

二人は顔を見合わせ笑う。美しいものが目の前で揺れている。宝石のような瞳は目の前で輝いている。
互いの薬指に光る指輪が2人の未来を明るく照らすようにきらりと光ってみせた。
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