ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

少女は小さな夢を見た

原作: その他 (原作:銀魂) 作者: 澪音(れいん)
目次

27話 「クリスマス企画 ver.2019」



クリスマス企画 2019!

※まだ関りのないキャラクターも登場します。
※オリキャラの名前(あだ名?)なし


今日は待ちに待ったクリスマス。

子供たちは嬉しそうにサンタさんへの手紙を大事そうに靴下へしまい、大人たちは忙しなく雪降る街を小走りに行く。恋人たちは幸せそうに手と手を取り合いイルミネーションを見上げながら「また来年も来ようね」なんて小さな約束をした。そんな聖なる夜に、赤い服を身にまとい、白い袋を肩に掛けてせっせと走り回る小さな人影があった。

子供たちはそんな後ろ姿を見て嬉しそうに指差してはしゃいでいる。
何とも微笑ましい気持ちにもなる光景が、ここ、歌舞伎町にも広がっていた。



「ホッホッホー、メリークリスマス」

「そんな棒読みのサンタっている?」

万事屋のチャイムが鳴り響き、一瞬静まり返った室内であったが、インターフォンごしに聞こえてきたのはここ数か月で新たに知り合った人物で。彼女が訪ねてくるなんて珍しいと玄関を開けてみれば、サンタのコスチュームを着こんだ、彼女が袋を下ろしながら感情が一欠けらも感じる事のできない声で片腕を上げた。

「なに?サンタのバイトでも始めたの?」

「いえ、クリスマス限定で和菓子屋さんとコラボしているのです。それと常連さんへご挨拶も兼ねて」

「普通そういうのって年始にやるもんじゃね?」

「年始は何かと忙しいのでお店を開けることが出来ないのです。なので早めに挨拶回りを」

袋から取り出したのは色とりどりの和菓子の入ったクリスマス仕様の箱で、中には体に良さそうな薬煎茶が入っていた。それを銀時に手渡した彼女は早々に袋を担ぎ上げ「それじゃ」と言って立ち去っていく。階段をテンポよく駆け下り雪の上を再びザクザクと音を鳴らしながら走っていく後ろ姿をぼんやり眺めていると、途中で小さい子供に話しかけられた彼女が立ち止まり、一瞬固まると、袋から取り出した子供用であろうカラフルな袋を手渡していた。子供はそれを貰って嬉しそうに笑うとサンタに手を振り、お母さんのいる方へと走っていってしまった。

それを見送るように見つめ、お母さんに嬉しそうにお菓子を見せている子供を見届けると、サンタはくるりと方向転換をしてそのまま走っていってしまった。

そんなサンタを見つめていた銀時は、手元にあった箱をじっと見つめると、自分を呼ぶ子供たちの声に玄関の中へと戻っていった。



「ホッホッホー、メリークリスマス」

「…なぜ窓からやってくる?」

「玄関がどこなのかわからなかったので」

いつぞやお店にやってきた片目に包帯を巻いたお侍さんのところへもクリスマスプレゼントを持ってきたサンタ。
玄関が分からず困り果てていると、開いている窓から三味線の音と彼のトレードマークである紫色のド派手な気持ちが見え、船をよじ登ってやってきた。彼を慕う人間が見れば一瞬で蜂の巣にされるだろうが、幸運なことに彼はひとりでいた。

「いつも御贔屓にしてくださっているお客様に新年のご挨拶を。前倒しでしております」

「くくっ…まだ年も明けてねぇのにか。」

要らないと突っぱねられると思っていた箱を意外にも受け取られたことに若干驚きながら、船の外を見つめ、この距離なら飛べそうだと考えていると、後ろから声が掛けられ振り向くと不意に何かが投げ渡され、顔面で何かをキャッチする羽目になった。若干よろけて、海に落ちてしまいそうになったが「気をつけろ」と腕を引っ張られ、大惨事にならずに済んだ。

「以後気を付けます。…それで、これはいったい」

「京の土産だ。俺からのクリスマスプレゼントってことでくれてやる」

相変わらず凶悪そうな笑顔を向けられるけれど、貰ったのは黒色のマフラーである。
包装されている訳でもないそれは、多分自分用にと購入したものだとわかる。
けれど彼とはプレゼントを交換し合う仲でもないはず、と返そうとしたけれど、三味線を置いた彼がいつの間にか近くに立っていて、手に乗ったままだったマフラーを強引に取って、素肌が見えていた首にぐるぐる巻きにしてしまう。返そうとしても睨まれるばかりか「いらねぇ」とまで言われ、温かい部屋に置いてあったからか、外を走り回って冷えていた首元がじんわりと温かくなっていくのを感じた。

「とっとと帰れ。見つかったら面倒だ」

しっし、と動物を払うように手を動かした彼にお礼を伝えると、素っ気ない返事が返ってきた。
マフラーをきゅ、っと口元まで持ち上げると、向こうの廊下から何人かの話声が聞こえ慌てて窓のふちから飛び降りると、口笛が聞こえ、先程までいた窓を見上げるといつのもあの怪しさ溢れる笑顔ではなく、少し優し気な笑顔に、驚いた。あんな顔も出来るんだ。

廊下から聞こえていた声の主が部屋に入って来たらしい、窓のふちに座り込んでいた姿が部屋の中に引っ込んだのが見え、自分もまだ配り終えていない後ろの荷物を抱え直すと、港を出て街の中へと戻っていった。

目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。