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少女は小さな夢を見た

原作: その他 (原作:銀魂) 作者: 澪音(れいん)
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21話


「すみません、お嬢。ほんとすみません。若最近近眼で…いやホントすみません。睨まないでください」

「通常装備です。それより絶賛家を破壊活動中のあのお2人を止めるのを手伝ってください」

「大体天パの分際で何で毎日毎日ここにきてんだ貴様ぁ!?

「んだとコラァ!天パの分際っててめぇ世の中の天パに謝れこらァァァ!天パで何が悪いんですかぁ!?天パがお宅らになにか迷惑かけましたかぁ?!サラサラヘアだからってなめてんじゃねぇぞコラァ!」

「ホントすみません、お嬢…」

兄には藤吾さんが、万事屋さんには私が拳を落とし頭から煙を出しながら地に伏したお2人を呆れながら見つめた。
万事屋さんを初めて見た時から、初めてじゃない気がしたのはなんだ、兄と似ていたからかもしれない。
性格や雰囲気は全く別だと思っていたからすぐに結びつきはしなかったけど、こうしてみると似ているのかもしれない。
ただ、兄は私の前ではいつでも冷淡であったし、一度もおちゃらけるどころか笑いもしなかったから、変な違和感が残るけれど。こうしてみると髪が銀色か黒かの違いくらいじゃないだろうか。

「銀髪の旦那、何だか若にそっくりですね。生き別れの兄でしょうか」

「私もそう感じていましたが、うちの両親は比較的厳格な家庭だというのに。特殊変異でしょうか」

「お嬢や旦那様方の前ではあのようにしていましたが…お嬢が家を飛び出して行かれてからは色々お考えになられたようです。押さえつけられ続けたバネははじけ飛びますからね。もう戻れません」

「なるほど、それでああなっちゃったのですね」

「ああなっちゃったってなに!?」

正直驚きで頭が回らない。
お家の中ではずば抜けて秀才だった兄上はお家始まって以来の「天才児」として生きてきた。
その重圧は計り知れないものであっただろうし、兄上はその枠からはみ出さないようにと努力を積み重ねて生きてきた人だった。家にいる時はもちろん、外でだって人を寄せ付けない、そんな空気を放ち、いつでも冷たい目で世の中を見つめている人、それが私の中にあった兄上だった。

だというのに今は万事屋さんとお互いに頬を引っ張り合い殴り合い床にゴロゴロ転がりながらケンカしている。私の中の恐ろしいまでの兄上像がブルドーザーで破壊されていくようだった。跡形もないくらいに、木っ端みじんだ。

でもなぜだろう、すごく安堵した。
こう思っちゃいけないはずなのに、すごくすごくうれしいと思った。

あの家はいつだって冷たかった。
厳格な父と母はお互いに政略結婚だったせいで冷え切っていた。
食事中はおろか家にいる間は誰一人言葉を交わさない。
そんな中で兄上はそんな2人の期待という名の「重圧」を一身に受け止めてきたんだ。
兄上が変われたのはきっと、兄上が変わった後でもああして傍にいてくれる藤吾さんという存在があったからなんだ。「兄上」を「兄上」として見てくれる存在があったから。

「お嬢?どうされました?」

「いえ。…兄上のこと、これからもよろしくお願いします。」

「?…はい、任されました。」

私の気持ちを汲み取ってくれたらしい藤吾さんは、ずっと変わらないみたいだ。
2人して目を合わせ、自然と笑顔になると未だにケンカしている2人を見つめた。

「お嬢」

「なんでしょう、藤吾さん」

「時々は若がお痛した時くらいは叩いても許されますかね」

「ええ。そのくらい許されるでしょう。思いっきりやっていいと思います」

「そうですか?ならば失敬して」

向こうでケンカをしている兄上と万事屋さんのほうへ歩み寄っていった藤吾さんは2人の襟を鷲掴み、その勢いで正座させると文句を言う2人を同時に黙殺した。そこから始まる藤吾さんのお説教に時折2人から助けを求める視線が向くけれど、ちょっとくらいのお灸は必要だろう。



この大惨事を引き起こしたのだから。
棚はひっくり返りテレビは壁の方に倒れていて幸い液晶に影響はなかったけれどまるで台風でも家の中に発生したような状態だ。藤吾さんが2人にそれを直すように笑顔でいうと、2人は藤吾さんのご機嫌を取るようにテレビを直し、せっせと動いている。もしかしてこの中で一番強いのは藤吾さんじゃないだろうか。あっという間に綺麗になった室内に兄上と万事屋さんは肩で息をしながらお互いを睨み続けている。そんな2人に釘を刺した藤吾さんは「お台所お借りしますね」と言って部屋を出ていってしまう。

「オイオイ勘弁してくれや。シスコンはうちの眼鏡坊主で事足りてんだよ。何増えてんだ?コラ。」

「何の話をしてるんだ。姉然り妹然り。どちらを持っていようと男は全員シスコンだ」

「わーホントだ。そういや公務員にも姉貴持ったシスコンがいたや。3つ揃ったらぷよ〇よ式に消えたりしねぇの?お宅ら」

「ぷ〇ぷよが消えるのは4つ以上だ。にわかめ」

「まじか。だからお宅ら生き残ってんのね。そーかいそーかい。誰か4人目のシスコン連れてこいやァァ!」

仲がいいんだか悪いんだか。

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